親同士の老老介護|見るべきは介護している側

この記事の要点

  • 同居して介護している世帯のうち、65歳以上同士が63.5%を占めます
  • 子が見るべきは、介護されている親より「介護している側の親」です
  • 介護保険サービスの中心は介護を受ける本人です
  • だから介護している側の状態が見えにくくなります
  • 両方が認知症になると、家族や第三者が異変を把握しにくくなります

実家で、父が母を介護している。あるいは母が父を。

電話をすると「大丈夫、なんとかやってる」と言う。でも、本当に大丈夫なのか分からない。

調べてみると、この状況は例外ではなく、いまや多数派でした。そして、子が見るべきポイントがはっきりしました。よくある疑問の形で書きます。

目次

老老介護はすでに多数派

厚生労働省の2022年国民生活基礎調査に、数字があります。

「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢の組み合わせを見たものです。

年齢の組み合わせ2001年2022年
60歳以上同士54.4%77.1%
65歳以上同士40.6%63.5%
75歳以上同士18.7%35.7%

65歳以上同士は、2022年に初めて6割を超えました。 過去最高です。

そして75歳以上同士も35.7%。 同調査の対象では、3組に1組以上が75歳以上同士という結果でした。

この数字は、調査対象となった同居介護者の年齢構成を示したものです。

同じ調査では、40歳未満の介護者は1.5%にすぎません。

「うちは特殊」ではありません

老老介護という言葉には、「かわいそうな例外」という響きがあります。

ところが数字を見ると、在宅で介護している世帯の6割以上がこの形です。

だから、恥ずかしいことでも、隠すことでもありません。制度も、この前提で作られています。

子が見るべきは「介護している側」

ここが、この記事でいちばん重要な部分です。

多くの子は、介護されている親を心配します。母の体調はどうか、認知症は進んでいないか。

ところが、見落とされやすいのが介護している側です。

介護者自身も高齢の場合、体力や持病などの問題を抱えていることがあります。そして介護を続けることで、介護者自身の受診や休養が後回しになります。

なぜ見えにくいのか

介護されている側介護している側
介護保険サービス利用者本人利用者ではない
要介護認定受けている受けていないことが多い
健康状態の確認継続的に確認される同じ形では確認されない

介護保険サービスの中心は、介護を受ける本人です。

一方で、家族介護者についても相談支援や介護負担の把握は行われています。 ケアマネジャーの支援の中心は要介護者ですが、家族の状況や介護負担も、ケアプランを考えるうえで重要な情報とされています。

ただし、家族介護者自身の健康問題について、要介護者本人への支援と同じ形で継続的に確認されるとは限りません。

そして本人は「自分が倒れたら終わり」と思っているので、不調を言いません。 病院にも行かなくなります。

介護している側が倒れると、一気に詰みます

介護者が入院すれば、要介護の親はその日から一人になります。

急いでショートステイを探す必要が生じますが、希望する日程や施設の空き状況によっては、すぐに利用できない場合があります。

そして、そのとき動くのは子です。仕事を止めて、遠方から駆けつけることになります。

「大丈夫」と言われたら何を見るか

電話では「大丈夫」としか返ってきません。帰省したときに、介護している側を見てください。

  • 体重が減っていないか(自分の食事を後回しにしている)
  • 眠れているか(夜に何度も起こされていないか)
  • 持病の受診に行けているか
  • 薬をきちんと飲めているか(自分の分を忘れている)
  • 外出しているか、人と会っているか
  • 表情が乏しくなっていないか
  • 家が以前より散らかっていないか

3つ目と4つ目が重要です。 介護している側は、自分の通院を後回しにします。持病が悪化しても気づきません。

「お父さんの血圧の薬、まだあった? 次の受診はいつ?」

要介護の親の話ではなく、介護している親の話として聞いてください。

介護している側の受診に付き添う

帰省の予定を立てるとき、介護している側の受診日に合わせる方法があります。

その間、要介護の親をデイサービスかショートステイに預ければ、介護者が自分の体のことに集中できます。

「心配だから」ではなく「ついでに行こう」という形なら、受け入れられやすい。

認認介護は異変を把握しにくい

老老介護が進むと、介護している側にも認知症の症状が出てくることがあります。

これを認認介護といいます。

実態の把握が難しい状態です

認認介護の正確な人数は分かっていません。理由があります。

  • 認知症の自覚がないまま介護を続けている
  • 日常生活に大きな支障がないため、要介護申請をしていない
  • 介護する側・される側の双方に認知機能の低下があるため、異変を把握しにくい

本人だけでは問題を把握したり、支援につながったりすることが難しい場合もあります。

気づくためのサイン

  • 同じ食材が冷蔵庫に大量にある(買ったことを忘れて何度も買う)
  • 薬が飲めていない(飲んだか分からなくなっている)
  • 約束や予定を覚えていない
  • 電話で同じ話を繰り返す
  • 家の中が以前と違う(物の場所が変わる、片づかない)
  • お金の管理が怪しい(同じものを何度も注文している)
  • 公共料金の支払いが滞っている

本人の了承を得たうえで、薬の残りや郵便物、支払い状況などに変化がないか確認してみてください。

認知症の受診については、認知症の初期サイン|受診までの5つの手順にまとめました。本人が受診を嫌がっていても、家族だけで相談できる公的な窓口があります。

子としてまず何をすればいいか

順番があります。

  1. 介護している側にも支援が必要なら、認定を検討する

    「介護しているから認定を受ける」のではありません。 本人自身の日常生活に、どの程度の支援が必要なのかが判断されます。

    体力が落ちていたり、日常生活に支障が出ていたりするなら、要支援・要介護に該当する可能性があります。 認定を受ければ、その人もサービスを使えます。

    申請は市区町村の窓口か地域包括支援センターです。結果まで平均39日かかります。

  2. 地域包括支援センターに状況を伝える

    「老老介護で心配している」と伝えてください。 よくある相談です。

    遠方に住んでいる場合でも、電話で相談できます。 必要なら訪問してもらえます。

    「実家で父が母を介護しています。父も80歳で、心配です。一度様子を見ていただけませんか?」

  3. ケアマネジャーに介護者の状態を伝える

    アセスメントの項目には「家族等の状況」が含まれています。伝えるのは制度上の前提です。

    介護者が高齢であることを前提に、ケアプランを組み直してもらえます。

  4. 介護者が休める仕組みを入れる

    次の項目にまとめます。

使えるサービス

老老介護で効くのは、介護者の負担を直接減らすものです。

サービス効くところ
デイサービス日中、介護者が一人になれる時間ができる
ショートステイ介護者の受診や休養のために使える
訪問介護入浴介助など、体力の要る部分を任せられる
定期巡回・随時対応型訪問介護看護夜間の不安が減る。24時間の通報体制
訪問看護本人の健康状態や医療面を専門職に確認してもらえる
配食サービス調理の負担が減る。安否確認も兼ねる

訪問看護は、老老介護に向いています。 看護師が定期的に訪問するため、本人の状態だけでなく、家族から介護上の困りごとを聞き取るきっかけにもなります。

ただし、介護している側自身の健康問題については、必要に応じて医療機関や地域包括支援センターなどに相談してください。

そしてショートステイは、介護者の身体的・精神的な負担を軽減する目的でも利用できます。 介護者の受診や休養のために使うことも、選択肢の一つです。

本人が断る場合

ここは難しい部分です。

「他人を家に入れたくない」「自分でできる」と言われることがあります。

特に、長年連れ添った配偶者を介護している場合、「自分がやるべきだ」という気持ちが強い。 サービスを使うことを、手抜きだと感じてしまいます。

切り出し方を変える

「お父さんが大変だから」と言うと、否定されたように受け取られます。

主語を要介護の親か、自分にしてください。

「お母さん、お風呂は専門の人に頼んだほうが安全だよ」
「私が心配で落ち着かないから、週1回だけでも試してみて」

そして、まず週1回から。 一気に増やすと抵抗が大きくなります。

施設を考えるタイミング

在宅が難しくなる場面があります。

  • 介護している側が入院した
  • 夜間の対応で、介護者が眠れていない
  • 介護者にも認知症の症状が出てきた
  • 転倒や火の不始末が繰り返されている
  • 2人とも要介護状態になった

「どちらか一方が施設に入る」だけでなく、「2人とも入る」という選択肢もあります。

同じ施設に入れるかどうかは、それぞれの要介護度と施設の受け入れ体制によります。夫婦で同室にできる施設もあります。

施設の種類と費用は老人ホームの費用相場に、判断の目安は在宅の限界を感じたときの選択肢にまとめました。

まとめ|介護している側を見る

整理します。

  • 65歳以上同士は63.5%。すでに多数派
  • 子が見るべきは、介護している側の親
  • 介護保険サービスの中心は介護を受ける本人。介護者の状態は見えにくい
  • 体重、睡眠、自分の受診と薬を確認する
  • 認認介護は、本人だけでは支援につながりにくい
  • 介護している側にも支援が必要なら認定を検討する

電話で「大丈夫」と言われても、それは「心配をかけたくない」という意味であることが多い。

次に帰省したときは、介護している側の体調や体重、睡眠、受診状況、薬の管理などにも目を向けてみてください。

そして、気になったら地域包括支援センターに電話してください。 遠方からでも相談できます。無料です。

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出典・参考

  • 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」表18(「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢階級別構成割合/60歳以上同士77.1%、65歳以上同士63.5%、75歳以上同士35.7%。2001年はそれぞれ54.4%、40.6%、18.7%)
  • 同調査(40歳未満の介護者は1.5%)
  • 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「老老介護・認認介護とは」
  • 厚生労働省「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(老企第29号/「家族等の状況」を含む23項目)

この記事の情報は2026年9月時点のものです。当サイトは医療機関ではなく、記載内容は診断の判断に用いることを目的としていません。認認介護の実態については統計的な把握が難しいとされており、記載しているサインは一般的に挙げられているものです。心配な状態があれば、地域包括支援センターまたは医療機関にご相談ください。

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