訪問看護とは|調べて驚いた4つのこと

この記事の要点

  • 訪問介護と訪問看護は、まったく別のサービスです
  • 保険が2つあります。原則は介護保険ですが、医療保険になるケースもあります
  • 医療保険で使う分は、区分支給限度額に算入されません
  • だからデイサービスなど他のサービスの枠を残せる場合があります
  • 「別表7」の疾病に該当すると、通常より頻回な訪問が可能になります

ケアマネジャーから「訪問看護を入れましょうか」と言われた。あるいは退院時に「訪問看護を使ってください」と勧められた。

訪問介護と何が違うのか。 名前が似ているので、同じようなものだと思っている方が多いと思います。

調べてみると、制度としてはまったく別物でした。 そして、費用の扱いに大きな違いがありました。驚いた点を4つ書きます。

目次

驚いた事① 訪問介護とは別のサービス

名前は似ていますが、来る人も、できることも違います。

訪問介護訪問看護
来る人ホームヘルパー
(介護福祉士など)
看護師、保健師、准看護師
理学療法士なども
目的生活の支援、身体介助健康状態の管理、診療の補助
医師の指示不要必要(訪問看護指示書)
保険介護保険介護保険または医療保険

いちばん大きな違いは、医師の指示書が要ることです。

訪問看護は医療の一部として提供されます。だから主治医が「訪問看護指示書」を出さないと始まりません。

訪問看護でできること

  • 血圧、体温、脈拍などの測定と健康状態の観察
  • 服薬の管理
  • 床ずれの処置と予防
  • たんの吸引、経管栄養、点滴
  • カテーテルの管理
  • 入浴や排せつの介助
  • リハビリテーション
  • 家族への介護方法の助言
  • 看取りの支援

医師の指示のもとで診療の補助や医療的ケアを担えるのが、訪問介護との決定的な違いです。

訪問介護でできること・できないことは、こちらの記事にまとめました。同居家族がいると生活援助が使えないなど、制約が多いサービスです。

驚いた事② 保険が2つある

ここから複雑になります。

訪問看護は、介護保険でも医療保険でも使えます。 どちらになるかは、状態によって決まります。

原則は介護保険

要支援・要介護の認定を受けている方は、介護保険が優先されます。

これが基本のルールです。ただし、医療保険が使われる主なケースがあります。

医療保険になる主なケース

ケース内容
① 別表7の疾病に該当厚生労働大臣が定める疾病等。末期の悪性腫瘍、ALS、多発性硬化症、パーキンソン病関連疾患(一定の重症度)など
② 特別訪問看護指示書が出た急性増悪、終末期、退院直後など。主治医が交付。原則14日間
③ 精神科訪問看護精神疾患を対象とする訪問看護

そして、要介護認定を受けていない方は、医療保険で訪問看護を使います。 年齢や認定の有無に関係なく、医師が必要と認めれば利用できます。

保険が途中で切り替わることがあります

介護保険で訪問看護を使っていた方が、状態が急に悪化して特別訪問看護指示書が出ると、その期間だけ医療保険に切り替わります。

制度が固定ではなく、そのときの状態に応じて変わるのが訪問看護の特徴です。

どちらの保険になるかは、主治医とケアマネジャーが判断します。 家族が決めることではありません。

驚いた事③ 限度額を使わない場合がある

ここが、この記事でいちばん実務的に重要な部分です。

介護保険には区分支給限度基準額があります。要介護度ごとに、1ヶ月に使えるサービスの上限が決まっている仕組みです。

介護保険で使う場合医療保険で使う場合
区分支給限度額消費する消費しない
他のサービスへの影響デイやショートの枠が減る影響なし
自己負担原則1割(所得により2〜3割)年齢・所得等により1〜3割
高額な負担への対応高額介護サービス費高額療養費

訪問看護を介護保険で使うと、デイサービスやショートステイの枠を食います。

一方、医療保険で使う場合は、その分が区分支給限度額に算入されません。 同じ訪問看護でも、他のサービスの枠への影響が変わります。

ただし、こちらで選べるものではありません

「医療保険のほうが得だから、そちらにしたい」と希望することはできません。

どちらの保険を使うかは、病名と状態によって制度上決まります。 主治医の判断が起点です。

ただ、この仕組みを知っていれば、限度額が足りないときに相談できます。

「限度額がいっぱいで、デイサービスを増やせません。訪問看護が医療保険の対象になる可能性はありますか?」

主治医やケアマネジャーに、この形で聞いてみてください。

驚いた事④ 別表7に該当すると頻回な訪問ができる

もう1つ、大きな違いがあります。

医療保険の訪問看護は、原則として週3日まで、1日1回までという制限があります。

ところが、「別表7」の疾病に該当すると、通常より頻回な訪問が可能になります。

原則別表7に該当する場合
訪問の回数週3日まで週4日以上も可能
1日の回数1日1回1日複数回も可能

※長時間の訪問については、別途の要件を満たした場合に加算の対象となります。別表7への該当だけで自動的に認められるわけではありません。

別表7に含まれる主な疾病

  • 末期の悪性腫瘍
  • 多発性硬化症
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • 重症筋無力症
  • 脊髄小脳変性症
  • パーキンソン病関連疾患(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上で、生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のもの)
  • 多系統萎縮症
  • 後天性免疫不全症候群
  • 人工呼吸器を使用している状態

※これは一部です。ほかにも複数の疾病が定められています。

「別表8」という区分もあります

別表7が病名に着目するのに対し、別表8は「状態」に着目した区分です。

在宅酸素療法、中心静脈栄養、気管カニューレの使用、じょくそうの処置などが該当します。

別表8だけに該当する場合は、原則として介護保険が優先されます。 ただし、訪問回数の制限が緩和されるなど、介護保険の枠内でも手厚いケアを受けやすくなります。

費用の目安

介護保険で使う場合の、訪問看護ステーションからの訪問の目安です。

訪問時間1回あたりの自己負担(1割)
20分未満約314円
30分未満約471円
30分以上1時間未満約823円
1時間以上1時間30分未満約1,128円

※1単位10円で計算した目安です。地域区分により10〜11.40円の幅があります。 各種の加算により実際の金額は変わります。2割・3割負担の方は、その分高くなります。

週2回、30分以上1時間未満で利用すると、月に約6,600円という計算になります。

医療保険で使う場合の自己負担は、年齢と所得によって1〜3割です。加入している医療保険の負担割合と同じになります。高額療養費の対象です。

20分未満の訪問には条件があります

短時間の訪問は、たんの吸引や導尿など、短時間で頻回な医療的処置が必要な方が対象とされています。

また、週1回以上、20分以上の訪問看護を受けていることが条件です。20分未満だけで計画を組むことは適切でないとされています。

使い始めるまでの流れ

  1. 主治医かケアマネジャーに相談する

    訪問看護は、医師の指示書がないと始まりません。 まず相談してください。

    「訪問看護を使いたいのですが、指示書を出していただけますか?」

  2. 訪問看護ステーションを選ぶ

    ケアマネジャーが候補を出してくれます。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」でも検索できます。

  3. 医師が訪問看護指示書を出す

    主治医からステーションへ交付されます。家族が受け取って運ぶわけではありません。

  4. 訪問看護計画を立てる

    看護師が自宅を訪問し、状態を確認して計画を作ります。

  5. 利用開始

    介護保険の場合、ケアプランに位置づけられている必要があります。

選ぶときに聞くこと

訪問看護ステーションによって、対応できる範囲が違います。

  • 24時間の連絡体制があるか(緊急時訪問看護加算の届出をしているか)
  • 夜間や休日に対応してもらえるか
  • 看取りの対応をしているか
  • 理学療法士や作業療法士がいるか(リハビリが必要な場合)
  • 実家の住所が対応エリアに入っているか

1つ目がとくに重要です。 夜中に容態が変わったとき、電話で相談できる先があるかどうかで、家族の負担が大きく変わります。

「夜間に連絡できる体制はありますか? その場合、追加の費用はかかりますか?」

訪問看護が向いている場面

  • 退院直後で、状態が安定していない
  • 医療的なケアが必要(たん吸引、経管栄養、点滴、褥瘡の処置など)
  • 薬の管理ができなくなっている
  • 状態の変化に気づける人がいない
  • 在宅で最期まで過ごしたい
  • 家族が介護のやり方を教わりたい

最後の項目は見落とされがちです。 看護師から直接、体位の変え方やおむつの当て方を教われます。それだけでも負担が変わります。

退院時の動き方は親が入院したときに、在宅が難しくなったときの選択肢は在宅の限界を感じたときの選択肢にまとめました。

まとめ|保険の扱いを確認する

整理します。

  • 訪問介護とは別のサービス。看護師が来て、医療的ケアを担える
  • 医師の訪問看護指示書が必要
  • 保険は原則介護保険。医療保険になるケースもある
  • 医療保険で使う分は、区分支給限度額に算入されない
  • 別表7に該当すると、週4日以上・1日複数回の訪問が可能になる

家族が判断できることではありませんが、知っていれば聞けます。

限度額が足りない。もっと頻繁に来てほしい。そういうとき、保険の扱いを確認する価値があります。

まずは主治医かケアマネジャーに相談してください。地域包括支援センターでも無料で相談できます。

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出典・参考

  • 健康保険法/介護保険法(訪問看護の給付。要介護認定を受けている場合は介護保険が優先)
  • 診療報酬の算定方法 別表第七(厚生労働大臣が定める疾病等)/別表第八(特別な管理を必要とする状態等)
  • 厚生労働省「訪問看護のしくみ」(訪問看護指示書、特別訪問看護指示書、保険の適用関係)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」訪問看護費(指定訪問看護ステーションの場合:20分未満314単位、30分未満471単位、30分以上1時間未満823単位、1時間以上1時間30分未満1,128単位)
  • 厚生労働省「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A」問20(2時間ルールの取扱い)

この記事の情報は2026年9月時点のものです。どちらの保険が適用されるかは、病名・状態・要介護認定の有無によって制度上決まるもので、利用者が選べるものではありません。単位数は事業所の種類、地域区分、加算の有無によって変わります。実際の適用と費用については、主治医、担当のケアマネジャー、または訪問看護ステーションにご確認ください。

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