ヒートショック対策|調べて驚いた4つのこと

この記事の要点

  • 2023年、65歳以上の浴槽での事故による死亡者数は6,541人。65歳以上の交通事故死亡者数の約3倍でした
  • 事故は11月〜4月の冬季を中心に発生しています
  • 要因は寒暖差による血圧の変動だけでなく、熱いお湯に長くつかることによる体温の上昇や意識障害も挙げられています
  • 消費者庁は湯温41度以下、つかる時間は10分までを目安として示しています
  • 寒くなる前のいまが、準備の時期です

冬になると、「ヒートショック」という言葉をよく聞きます。

ただ、自分の親のこととして考えたことはあるでしょうか。 毎日入っているお風呂は、本人にとっても家族にとっても、危ない場所という意識が薄い場所です。

調べてみると、思っていたのと違う点が4つありました。どれも、寒くなる前に準備できることにつながっています。

目次

驚いた事① 交通事故の約3倍

消費者庁が、厚生労働省の人口動態統計をもとに整理しています。

65歳以上の死亡者数(2023年)人数
不慮の溺死及び溺水8,270人
 うち浴槽での事故6,541人
  うち家や居住施設の浴槽6,073人
交通事故2,116人

2023年の65歳以上では、浴槽での事故による死亡者数が6,541人で、65歳以上の交通事故死亡者数2,116人の約3倍でした。

また、2023年に「不慮の溺死及び溺水」で亡くなった65歳以上の人のうち、約8割が浴槽での事故でした。

そして事故は、11月から4月の冬季を中心に発生しています。東京都23区の調査では、入浴中の事故死の約半数が12月〜2月に集中していたという報告もあります。

数字を知る意味

この数字は、怖がらせるためのものではありません。

交通事故には信号や横断歩道があるのに、お風呂の事故への備えは、各家庭に任されています。 だからこそ、家族が知っておく価値があります。

そして、入浴環境や入浴方法を見直すことが、事故の予防につながります。

驚いた事② 原因は寒暖差だけではない

「ヒートショック」は、寒暖差による急激な血圧の変動を指す言葉として使われています。ただ、入浴中の事故には、ほかにも要因があります。

消費者庁は、冬に入浴中の事故が増える原因として、次の2つを挙げています。

原因起きること
寒暖差による血圧の変動暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室に入って血圧が上がり、温かいお湯で下がる。脳の血流が減って意識を失うことがある
熱いお湯に長くつかること体温が上がり、意識がもうろうとすることがある

入浴中の事故には、寒暖差による血圧変動だけでなく、熱い湯に長くつかることによる体温上昇や意識障害など、複数の要因があります。 つまり、脱衣所や浴室を暖めるだけでなく、お湯の温度や入浴時間にも気をつける必要があります。

消費者庁は、湯温41度以下、湯につかる時間10分までを目安として示しています。

「見える化」が勧められています

消費者庁は、温度計やタイマーを使って、湯温や入浴時間を見える化することを勧めています。

長年の習慣は、感覚ではなかなか変わりません。給湯器の設定温度を41度にしておく、浴室にタイマーを置く、といった仕組みにしておくと続けやすくなります。

驚いた事③ 寒い家では熱め入浴が増える

これは意外でした。

国土交通省の事業にもとづく研究で、居間や脱衣所の室温が18度未満の住宅では、42度以上の「熱め入浴」が増えることが報告されています。

寒い住宅では、熱めの入浴につながる可能性があります。室温と湯温の両方を見直すことが大切です。

家全体を暖かくする

消費者庁は、居室だけでなく家全体を暖かくすることが重要だとしています。二重サッシにするなどの断熱化も有効とされています。

すぐに工事ができなくても、入浴の前にできることがあります。

  • 入浴前に脱衣所と浴室を暖める(方法は家庭の設備に応じて選ぶ)
  • 湯につかる前に、かけ湯を十分にする

暖房器具を使用する場合は、製品の使用方法や設置場所に従い、火災ややけどにも注意してください。

浴室暖房は、介護保険の住宅改修の対象外です

介護保険の住宅改修(上限20万円)の対象は、手すりの取り付けや段差の解消など6種類に限られています。浴室暖房や住宅全体の断熱工事は、介護保険の住宅改修の対象種目には含まれていません。

自治体によっては、断熱改修や高齢者の住宅改修に独自の補助を設けていることがあります。市区町村の窓口で確認してください。

介護保険の住宅改修は、住宅改修20万円の使い方にまとめています。原則として着工前に市区町村への申請が必要です。

驚いた事④ 準備はいまがいい

事故が増えるのは11月から。寒くなってから準備すると、慌ただしくなります。

暖房器具を用意する、給湯温度を見直す、手すりをつける。気温がまだ穏やかなうちなら、本人とも落ち着いて話せます。

日本気象協会は、気温をもとに家の中でのリスクの目安を示す「ヒートショック予報」を公開しています。寒くなってきたら、家族で確認する習慣にしてもいいかもしれません。

入浴前後の習慣チェックリスト

消費者庁の注意点をもとに、本人と家族で確認できる形にまとめました。

入浴前

  • 脱衣所と浴室を暖めたか
  • 食後すぐ、飲酒後、医薬品を服用した直後ではないか(持病や薬については主治医・薬剤師に相談)
  • 体調はいつもどおりか
  • 家族に「いまから入る」と伝えたか

入浴中

  • 湯温は41度以下か
  • つかる時間は10分以内か
  • 浴槽から急に立ち上がっていないか
  • 意識がもうろうとしたら、気を失う前にお湯を抜く

同居している家族

  • 入浴中は、こまめに声をかける
  • いつもより長いと感じたら、様子を見に行く

「お風呂入るときは、ひと声かけてね。10分たったら声かけるから」

本人が嫌がる場合は、安全のために必要な理由を説明し、できることから取り入れていってください。

一人暮らしの親の場合

声をかける人がいないのが、一人暮らしの難しさです。

方法内容
入浴の時間を決めて、電話をかける「お風呂から出たら連絡してね」と約束しておく
デイサービスでの入浴職員のいる場で入浴する。ケアプランへの組み込みが必要
訪問介護の入浴介助ヘルパーが、自宅の浴室での入浴を介助する
訪問入浴介護専用の浴槽を自宅に持ち込み、看護職員と介護職員が入浴を支援する(訪問介護とは別のサービス)
見守りの仕組み安否確認の方法をこちらにまとめています

要介護認定を受けている場合、ケアマネジャーに相談して、デイサービスでの入浴をケアプランに組み込む方法もあります。利用できるかどうかは、ケアプランや事業所のサービス内容によります。

また、浴槽のまたぎや立ち上がりが不安な場合は、入浴用いすや浴槽用手すりなど、介護保険の特定福祉用具販売の対象となる製品があります。詳しくは福祉用具のレンタルと購入をご覧ください。

本人が嫌がるときは

「熱いお風呂が好き」「長湯が楽しみ」という方にとって、41度・10分は物足りないことがあります。

いきなり全部を変えようとせず、できるところから始めてください。

  • まず脱衣所と浴室を暖めることから始める
  • 湯温を見直し、41度以下を目安にする
  • タイマーなどを使って、入浴時間を見える化する

入浴そのものを嫌がる場合は、認知症の暴言と介護拒否も参考にしてください。寒さや痛みが理由のこともあります。

まとめ|寒くなる前に準備する

  • 65歳以上の浴槽での事故による死亡者数は6,541人(2023年)。65歳以上の交通事故死亡者数の約3倍
  • 事故は11月〜4月の冬季を中心に発生している
  • 要因は寒暖差と、熱いお湯に長くつかることなど複数ある
  • 消費者庁の目安は41度以下・10分まで。温度計とタイマーで見える化
  • 室温18度未満の住宅では熱め入浴が増えるという報告。室温と湯温の両方を見直す
  • 一人暮らしなら入浴時間の連絡や、ケアマネジャーへの相談も選択肢

お風呂は、本人にとって毎日の楽しみでもあります。取り上げるのではなく、安全に続けられる形に整えることが目的です。

次に実家へ行ったとき、脱衣所の寒さと、給湯器の設定温度を見てみてください。それだけでも、準備の一歩になります。

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出典・参考

  • 消費者庁「コラムVol.12 高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―」(2024年12月/令和5年の65歳以上の「不慮の溺死及び溺水」8,270人、うち浴槽での事故6,541人、家や居住施設の浴槽6,073人。原因として寒暖差による血圧の変動と熱い湯に長くつかることによる体温上昇での意識障害。湯温41度以下・10分まで、温度計やタイマーでの見える化、同居者の声かけ、意識がもうろうとしたら湯を抜く)
  • 政府広報オンライン「交通事故死の約3倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」(令和5年の交通事故死亡者数2,116人)
  • 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」(11月〜4月の冬季を中心に発生、脱衣所・浴室を暖める、家全体の断熱化)
  • 国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業にもとづく研究(居間や脱衣所が18度未満の住宅で湯温42度以上の熱め入浴が増加)
  • 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「高齢者の入浴事故 ヒートショック対策と予防」(東京都23区で12月〜2月に入浴中の事故死の約半数)
  • 一般財団法人日本気象協会 tenki.jp「ヒートショック予報」

この記事の情報は2026年9月時点のものです。当サイトは医療機関ではなく、記載内容は診断や治療の判断に用いることを目的としていません。持病がある方や服薬中の方は、入浴の方法について主治医にご相談ください。住宅改修や断熱改修の補助の有無は、市区町村によって異なります。

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