この記事の要点
- 認知症かどうかを家族が判断することはできません。この記事は受診までの手順です
- 治療で改善する可能性のある病気もあります。受診しなければ、その見分けもつきません
- 受診前にやることは「記録」。いつ、何があったかをメモしておくと診察が変わります
- 本人が受診を嫌がっても、家族だけで相談できる公的な窓口があります
- 認知症初期集中支援チームは全市町村に設置。訪問してくれて、無料です
同じ話を何度も聞かれる。約束を忘れている。買ってきたばかりの物をまた買ってくる。
年のせいだと思おうとするけれど、以前とは何かが違う気がする。かといって「病院へ行こう」とは言い出しにくい。本人は元気なつもりでいるし、言えば怒るかもしれない。
この記事では、認知症かどうかの判定はしません。それは医師にしかできません。 代わりに、気づいてから受診にたどり着くまでの手順を、5つに分けて書きます。
先に、いちばん伝えたいことを書いておきます。本人が嫌がっていても、家族だけで相談できる公的な窓口があります。 しかも訪問してくれて、無料です。手順④で説明します。
治療で改善する可能性のある病気もある
「行っても治らないなら、受診しても仕方ない」と考える方がいます。ただ、それは正確ではありません。
認知症のような症状が出る病気の中には、治療によって改善する可能性のあるものがあります。
| 病気 | 特徴として挙げられるもの |
|---|---|
| 特発性正常圧水頭症 | 歩行の異常(小刻み・すり足)、もの忘れ、尿失禁の3つが揃うことがある |
| 慢性硬膜下血腫 | 頭を打った数週間〜数か月後に症状が出ることがある |
| 甲状腺機能低下症 | 血液検査で調べられる |
国立長寿医療研究センターも、手術で治療可能な認知症があると説明しています。 正常圧水頭症では、髄液を流すシャント手術によって症状の改善が報告されています。
受診しなければ、この見分けはつきません。 「年のせい」で片づけると、治療の機会を逃す可能性があります。これが、早めに受診する最大の理由だと思います。
また、進行性の認知症であっても、早い段階で分かれば、使える制度や生活の組み立て方が変わります。
手順① 気づいたことを記録する
最初にやることは、病院探しではありません。記録です。
診察では、医師が本人と短時間話します。ただ、その場では普段どおりに振る舞えてしまうことがあります。家族の記録が、判断の材料になります。
書き留めるのは、この3つで足ります。
- 日付
- 具体的に何があったか(「もの忘れ」ではなく「3日前に一緒に行った法事のことを覚えていなかった」)
- いつ頃から気づいたか
「何を」より「どう忘れるか」
一般に、加齢によるもの忘れは体験の一部を忘れる(昼に何を食べたか思い出せない)のに対し、認知症では体験そのものが抜け落ちることがあるとされています(食べたこと自体を覚えていない)。
ただしこの線引きは連続的で、家族が判断できるものではありません。 記録するときは「判定」ではなく「事実」を書いてください。
あわせて、次のような変化も記録の対象です。もの忘れだけが手がかりではありません。
- 今日が何月何日か、ここがどこかが分からなくなる
- 料理や家電の操作など、手順のある作業が難しくなる
- 身だしなみや趣味への関心が薄れる
- 怒りっぽくなるなど、性格が変わったように見える
- 歩き方が変わった(小刻み、すり足)
- 頭を打った出来事があった
下の2つは、先ほどの「治療で改善する可能性のある病気」に関わります。 必ず医師に伝えてください。
手順② かかりつけ医に相談する
いきなり専門の医療機関を探す必要はありません。まずはかかりつけ医です。
理由は2つあります。
1つは、本人が受け入れやすいこと。「いつもの先生のところ」なら、抵抗が小さくなります。 血圧の薬をもらいに行くついでに、という形も取れます。
もう1つは、身体の病気が原因である可能性を調べられることです。血液検査で分かるものもあります。
受診前に、家族から医師に情報を伝えておくと話が早くなります。本人の前では言いにくいことは、事前に手紙やメモで渡す方法があります。多くの医院で対応してくれます。
「最近こういうことがあり、心配しています。本人の前では話しにくいので、先生から話題にしていただけると助かります」
手順③ 専門の窓口につなぐ
かかりつけ医から紹介されることが多いですが、直接行ける窓口もあります。
| 窓口 | 特徴 |
|---|---|
| もの忘れ外来 | 認知症を専門に診る外来。病院により名称が異なる |
| 認知症疾患医療センター | 都道府県・政令市が指定。鑑別診断や専門医療相談を行う |
| 脳神経内科・脳神経外科・精神科 | 症状によって適した科が変わる |
どこへ行けばいいか分からないときは、地域包括支援センターに聞いてください。地域の医療機関の状況を把握しています。相談は無料です。
手順④ 本人が嫌がるときの窓口
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
「病院へ行こう」と言って、素直に応じる人ばかりではありません。怒られた、拒否された。そこで止まってしまう家族は多いと思います。
その状態のための仕組みが、公的に用意されています。認知症初期集中支援チームです。
認知症初期集中支援チームとは
- 医師、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士などの専門職チーム
- 自宅を訪問して、本人と家族の状況を確認する
- 受診の勧め、医療・介護サービスの紹介、生活環境の改善を行う
- 支援期間はおおむね6か月の集中的なもの
- 費用はかかりません
そして、重要な点が2つあります。
1つ目。家族だけの相談で構いません。 本人を連れていく必要はありません。
2つ目。本人が受診を嫌がっている段階から相談できます。 むしろ、そのための仕組みです。「受診を拒否している」「サービスの利用を拒否される」といった状態が、想定されている相談内容に含まれています。
設置は市町村の事業で、全国の市区町村に置かれています。 窓口は地域包括支援センターであることが多く、市役所の高齢者福祉担当課でも案内してもらえます。
「親の様子が気になっていますが、本人が受診を嫌がっています。認知症初期集中支援チームに相談したいのですが」
この一言で通じます。名前を出すと、話が早く進みます。
手順⑤ 受診と並行して進めること
診断を待たずに動けることがあります。
要介護認定を申請する
認定には平均39日かかります。診断を待ってから申請すると、サービスが使えるまでさらに1か月以上かかります。並行して進めてください。
認知症の場合、身体は元気なことが多く、認定調査で実態より軽く判定されることがあります。調査には家族が同席し、記録を見せながら普段の様子を伝えてください。
お金の管理を確認する
通帳や印鑑の場所、加入している保険、年金の受取口座。判断力があるうちにしか確認できないことがあります。
訪問販売や電話勧誘への対策も、早い段階で考えておく価値があります。
会社に伝えるかを考える
通院の付き添いや手続きで、平日に動く場面が増えます。介護休暇は年5日、当日の朝でも取れます。伝え方はこちらの記事に書きました。
まとめ|判定より相談へ
手順を並べます。
- 記録する(日付・具体的な出来事・いつ頃から)
- かかりつけ医に相談する(事前に手紙を渡す方法がある)
- 専門の窓口へ(もの忘れ外来、認知症疾患医療センター)
- 嫌がるなら認知症初期集中支援チーム(家族だけ・訪問・無料)
- 要介護認定は並行して申請
チェックリストで判定しようとすると、当てはまる項目を見つけては不安になり、当てはまらない項目を見つけては安心する、という繰り返しになります。その時間が、いちばんもったいない。
気になっているなら、それが相談の理由として十分です。受診して「加齢によるものです」と言われたなら、それはそれで大きな収穫です。
この記事でできないこと
認知症かどうかの判断は、医師による診察と検査が必要です。この記事の内容で自己判断しないでください。 症状の現れ方は人によって大きく異なり、原因となる病気も複数あります。
気になる変化があるときは、かかりつけ医、地域包括支援センター、または市区町村の高齢者福祉担当課にご相談ください。
関連記事
出典・参考
- 国立長寿医療研究センター「認知症の原因となる正常圧水頭症」(手術で治療可能な認知症、髄液シャント術)
- 厚生労働省「認知症初期集中支援チーム」関連資料/各市町村の案内(専門職による訪問、おおむね6か月の集中支援、費用負担なし、家族のみの相談が可能)
- 公益財団法人長寿科学振興財団「認知症初期集中支援チーム」(実施主体は市町村。地域包括支援センター等に設置)
- 厚生労働省「認知症を理解する」/WHOによる認知症の定義
この記事の情報は2026年8月時点のものです。当サイトは医療機関ではなく、記載内容は診断・治療の判断に用いることを目的としていません。症状や検査・治療の適否については、必ず医師にご相談ください。認知症初期集中支援チームの窓口や運用は市区町村によって異なります。

