この記事の要点
– 「在宅か施設か」の二択ではない。そのあいだにある選択肢が複数ある
– まずやるべきはケアプランの見直し。担当のケアマネジャーに限界を正直に伝える
– ショートステイは、家族が休むために使っていい制度
– 小規模多機能型なら、通い・訪問・泊まりを1つの事業所でまとめられる
– 介護保険で足りない部分は、保険外サービスで埋められる
最終更新:2026年8月6日
限界は、我慢する場所ではありません
夜中に何度も起こされる。目を離すと外に出てしまう。仕事に行けない日が増えてきた。
こうなったとき、多くの人が「まだ施設に入れるのはかわいそうだ」と考えます。同時に「自分が耐えられなくなってきた」とも感じている。この2つの気持ちの間で身動きが取れなくなるのが、介護のいちばんつらい局面です。
はっきり書きます。介護する側が倒れると、介護は続きません。 家族が疲弊して共倒れになるより、支える体制を組み替えるほうが、結果的に本人のためになります。
そして、選択肢は「今のまま続ける」か「施設に入れる」かの二択ではありません。
① まず、ケアプランを見直す
いちばん最初にやることです。そして、いちばん見落とされます。
ケアプランは一度作ったら固定されるものではありません。状況が変われば、何度でも見直せます。
担当のケアマネジャーに、限界が近いことを正直に伝えてください。
遠慮して「なんとかやれています」と答えてしまう方が非常に多いのですが、伝えなければプランは変わりません。ケアマネジャーは家庭の中を24時間見ているわけではないので、こちらから言わない限り、状況は伝わりません。
伝えるときは、具体的に。
- 「夜中に3回起こされて、平日は睡眠が4時間を切っています」
- 「先月、介護のために5日休みました。このままだと仕事を続けられません」
限界の手前で言うのが理想ですが、限界を超えてからでも遅くはありません。
② ショートステイを使う
数日から1週間程度、施設に短期入所するサービスです。
これは、家族が休むために使っていい制度です。 制度上も「介護者の負担軽減(レスパイト)」が目的に含まれています。罪悪感を持つ必要はまったくありません。
定期的に組み込んでおくと、月に数日は確実に眠れる日ができます。それだけで在宅を続けられる期間が大きく変わります。
将来的に施設入居を検討している場合、施設の雰囲気を本人が体験する機会にもなります。 いきなり入居するより、本人の抵抗も少なくなります。
人気の事業所は予約が埋まりやすいので、早めに、定期的に押さえておくのがコツです。
③ 小規模多機能型居宅介護
「通い」「訪問」「泊まり」を、1つの事業所がまとめて提供するサービスです。
普通は、デイサービス、訪問介護、ショートステイをそれぞれ別の事業所と契約します。この場合、状況が変わるたびに調整が必要になり、家族の負担が増えます。
小規模多機能型なら、同じスタッフが状況に応じて柔軟に対応してくれます。「今日は急に泊まりに変えたい」といった調整もしやすくなります。
月額の定額制なので、使うほど費用が増えないのも利点です。
医療的なケアが必要な場合は、看護師の訪問が加わる看護小規模多機能型居宅介護という選択肢もあります。
④ 保険外(自費)サービスで隙間を埋める
介護保険は万能ではありません。保険では対応できないことが、実は多くあります。
- 通院の付き添い(院内での待ち時間の付き添いは保険適用外になることがある)
- 本人以外の家事、庭の手入れ、大掃除
- 長時間の見守り
- 趣味の外出や旅行の同行
- 深夜・早朝の対応
これらは保険外サービス(自費の訪問介護)で対応できます。費用は1時間あたり3,000〜5,000円程度が目安です。
高く感じるかもしれません。ただ、仕事を辞めて収入がゼロになることと比べてください。 月に数回、必要な時間だけ使うことで仕事を続けられるなら、経済的にはそちらのほうが合理的です。
「介護のために有給を使い切る」状態が続いているなら、検討する価値があります。
⑤ 施設という選択肢を、準備だけしておく
すぐに入居しなくても、探し始めておくことには意味があります。
理由は、急に必要になったとき、選ぶ時間がないからです。
親が入院し、退院時に「自宅では難しい」と言われる。そこから施設を探し始めると、選択肢がほとんどありません。空いている施設に入れるしかなくなります。
余裕のあるうちに2〜3件見学しておくと、いざというときに比較ができます。 見学は無料で、入居の義務もありません。
「まだ早い」と感じる時期こそ、動きやすい時期です。
やってはいけないこと
一人で抱え込む。 兄弟に相談していない、会社に伝えていない、ケアマネジャーに本音を言っていない。この3つが揃うと、確実に行き詰まります。
限界まで我慢してから動く。 疲れ切ってからでは、施設を比較する気力も残りません。判断力が落ちた状態で決めた選択は、後悔につながりやすくなります。
自分の生活を全部差し出す。 介護は数か月で終わるとは限りません。10年続くこともあります。長期戦を前提に、自分の生活を残す設計にしてください。
まとめ:次にやること
- ケアマネジャーに、限界が近いことを具体的に伝える
- ショートステイを定期的に組み込む
- 小規模多機能型が使えるか、地域の事業所を調べる
- 保険で埋まらない部分は、保険外サービスを検討する
- 施設は「入る前提」ではなく「準備」として見学しておく
どこから手をつければいいかわからないときは、地域包括支援センターに相談してください。無料で、どの段階からでも相談できます。
介護は、制度を知っている人ほど楽になります。知らないまま耐えるのが、いちばん損をします。
出典
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
- 厚生労働省「小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護について」
※ 本記事は2026年8月6日時点の制度に基づく一般的な解説です。利用できるサービスや費用は、要介護度・地域・事業所によって異なります。実際の利用にあたっては、担当のケアマネジャーまたは地域包括支援センターにご相談ください。

