この記事の要点
- 介護保険は住民票のある市区町村の制度です。引っ越すと手続きが必要になります
- 要介護認定は、転入から14日以内に手続きすれば、原則として引き継げます。過ぎると新たな申請が必要になることが一般的です
- 特養や有料老人ホームなどに入る場合は、「住所地特例」で元の市区町村の介護保険が続きます
- ただしグループホームなどの地域密着型サービスは、住所地特例の対象外です
- 同居すると、使えるサービスや負担が変わる場合があります
遠方で一人暮らしをしている親が心配。近くに呼び寄せたほうがいいのではないか。
そう考えたとき、住まいの問題と同時に出てくるのが介護保険の手続きです。介護保険は、住民票のある市区町村が運営しているため、引っ越すと手続きが変わります。
調べてみると、期限を過ぎると認定をやり直しになる手続きや、施設の種類によって扱いが変わる制度がありました。順番に整理します。
手順① 呼び寄せ方を決める
まず、どの形で呼び寄せるかで、手続きが変わります。
| 形 | 住まい | 介護保険の扱い |
|---|---|---|
| 同居 | 子の家で一緒に暮らす | 転入先の市区町村に移る |
| 近居 | 子の家の近くに住まいを借りる | 転入先の市区町村に移る |
| 施設入所 | 子の近くの施設に入る | 施設の種類によっては、元の市区町村のまま(住所地特例) |
本人の意思を先に聞く
呼び寄せは、親にとって住み慣れた家、友人、かかりつけ医、通い慣れた店を離れることでもあります。
環境の変化が、本人の心身の負担になることがあります。「心配だから」だけで決めず、本人がどう暮らしたいかを先に聞いてください。
「こっちに来てもらうのと、いまの家で使えるサービスを増やすのと、どっちがいいと思う?」
いまの家で暮らし続ける方法もあります。親の一人暮らしはいつまで続くかと離れて暮らす親が心配なときも参考にしてください。
手順② 転居前に元の市区町村で手続きする
要介護・要支援の認定を受けている場合、引っ越す前に、いまの市区町村で手続きをします。
- 転出届を出す
- 介護保険被保険者証を返却する(負担割合証、負担限度額認定証なども)
- 「介護保険受給資格証明書」の交付を受ける
受給資格証明書には、いまの要介護度や認定の有効期間などが記載されています。転入先の市区町村で認定を引き継ぐための書類です。
なお、マイナンバーによる情報連携で、証明書がなくても手続きできる市区町村もあります。転出前に確認しておくと確実です。
本人が窓口に行けない場合は、委任状と代理人の本人確認書類があれば、家族が手続きできる市区町村が多いです。
転出の前にやっておきたいこと
- いまのケアマネジャーに、転居の予定と時期を伝える
- ケアプランや、利用しているサービスの内容を控えておく
- かかりつけ医に紹介状(診療情報提供書)を書いてもらう
- お薬手帳をまとめておく
転入先で新しいケアマネジャーや医師に引き継ぐときに、そのまま使えます。
手順③ 転入から14日以内に認定を引き継ぐ
ここが、この記事でいちばん大切な期限です。
転入先の市区町村で、転入した日から14日以内に、受給資格証明書を出して認定を引き継ぐ手続きをします。
期限を過ぎると、新たな申請が必要になることが一般的です
転入日から14日以内に手続きをすると、原則として前の要介護認定を引き継げます。 期限を過ぎた場合は、新たな認定申請が必要になることが一般的です。
新規申請では、認定調査や主治医意見書の手続きをやり直すため、結果が出るまで時間がかかります。 その間のサービスの利用や費用の扱いに影響する場合があります。
起点は、転入の届出をした日ではなく、実際に住み始めた日(住民票に記載される転入日)とされています。届出が遅れると、そのぶん残りの日数が減ります。家族の間で共有しておいてください。
住民票の手続きをすると、そのまま介護保険や健康保険の窓口に案内されることが多いです。同じ日に済ませるのがいちばん確実です。
引き継いだ認定の有効期間
要介護度は引き継がれますが、有効期間の扱いは市区町村によって異なります。 たとえば千葉市は、有効期間を転入日から6ヶ月としています。
元の有効期間がまだ残っていても、転入先で短くなる場合があります。転入時に、いつまで有効か、更新の申請はいつからかを確認してください。
「引き継いだ認定は、いつまで有効ですか? 更新の手続きはいつからできますか?」
負担限度額認定証は申請し直し
施設やショートステイの食費・居住費を軽減する負担限度額認定証は、引き継がれません。転入先で改めて申請が必要です。
申請した月の初日から適用され、さかのぼれない扱いの市区町村もあります。転入の手続きと同じ日に申請するのが確実です。
手順④ 施設に入るなら住所地特例を確認する
子の近くの施設に入る場合は、「住所地特例」という仕組みが関わります。
住所地特例とは
施設に入るために住民票を施設のある市区町村に移しても、元の市区町村の介護保険が続く仕組みです。
施設が多い市区町村に、介護保険の負担が集中しないようにするためのものです。
| 住所地特例の対象になる主な施設 | 対象外の主な施設 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 認知症高齢者グループホーム |
| 介護老人保健施設、介護医療院 | 定員29人以下の地域密着型特養 |
| 有料老人ホーム | そのほかの地域密着型サービス |
| 養護老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス) | |
| 有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅 |
サービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームに該当するサービスを提供しているものが対象です(2015年4月1日以降の入居者)。すべてのサ高住が対象になるわけではありません。
住所地特例の対象施設に入る場合は、元の市区町村に「住所地特例適用届」を出します。 期限は市区町村によって定められていて、住所を移した日から14日以内としているところがあります。
住所地特例が適用されると
- 介護保険料は、元の市区町村に払う
- 要介護認定の更新も、元の市区町村が行う
- 介護保険の手続きの窓口は、元の市区町村
住民票は子の近くでも、介護保険の手続きは元の市区町村、という状態になります。更新の通知がどこから届くかを、家族で把握しておいてください。
グループホームは、住民票のある市区町村の住民が原則です
認知症高齢者グループホームは地域密着型サービスなので、住所地特例の対象外です。
認知症高齢者グループホームは地域密着型サービスのため、原則として住民票のある市区町村の住民が対象です。 市区町村によっては、一定期間の居住要件を設けている場合があります。
子の住む市区町村のグループホームを考えている場合は、転居の前に、その市区町村の条件を確認してください。詳しくはグループホームの入居条件と費用にまとめました。
手順⑤ 同居なら変わる点を確認する
子の家で同居する場合、介護保険の手続きとは別に、変わることがあります。
訪問介護の生活援助
訪問介護の生活援助(掃除、洗濯、調理など)は、同居する家族がいると利用が制限される場合があります。
ただし、同居家族がいる場合でも、家族が日中不在、病気、介護が困難などの事情があれば、生活援助が認められることがあります。 「同居したら使えない」と決めつけず、ケアマネジャーに相談してください。詳しくは訪問介護でできること・できないことをご覧ください。
世帯の扱いと負担
負担の判定方法は、制度によって異なります。 介護保険の自己負担割合(1〜3割)は本人の所得が中心で決まりますが、次のような制度は世帯の課税状況が影響する場合があります。
- 高額介護サービス費の上限額
- 施設やショートステイの食費・居住費の軽減(補足給付)
- 介護保険料の段階(本人の所得と世帯の課税状況による)
同居しても、住民票の世帯をどう扱うかで判定が変わることがあります。転入の手続きの際に、窓口で確認してください。
それぞれの制度は、高額介護サービス費と補足給付にまとめています。
家族の負担が集中しやすい
同居すると、「家にいるから」と家族がすべてを担う形になりやすいです。仕事をしながらの介護なら、なおさらです。
同居しても、デイサービスやショートステイは使えます。 最初から、家族だけで回さない前提で計画してください。
手順⑥ 転入先で相談先とケアマネジャーを決める
引っ越したあと、ケアマネジャーや介護サービスの事業所は、転入先で選び直します。
転入先の地域包括支援センターに相談する
住所を管轄する地域包括支援センターで、ケアマネジャーの探し方や地域のサービスを教えてもらえます。転居前から電話で相談できる場合もあります。
ケアマネジャーと初回面談をする
前の市区町村のケアプランや、かかりつけ医の紹介状を持っていくと、引き継ぎがしやすくなります。初回面談で伝えることもご覧ください。
かかりつけ医を決める
次の認定の更新で、主治医意見書を書いてもらう医師が必要になります。早めに決めておくと安心です。
サービスの空きは早めに確認
転入先で使いたいデイサービスや訪問介護に、すぐに空きがあるとは限りません。
転居の日程が決まった段階で、転入先の地域包括支援センターに相談し、認定の引き継ぎと並行してサービスの準備を進めると、空白の期間を短くできます。
介護保険以外の支援も確認する
介護保険の手続きだけでなく、高齢者向け住宅、見守りサービス、配食サービス、地域包括支援センターの相談支援など、地域の支援も合わせて確認すると安心です。
市区町村独自の支援は、地域によって内容が違います。転入先の地域包括支援センターで聞いてみてください。
そのほかの手続き
介護保険以外にも、住所の変更に伴う手続きがあります。
- 国民健康保険または後期高齢者医療制度の資格の手続き
- 年金の住所変更(マイナンバーと住民票が連携していれば不要な場合もあります)
- 郵便の転送届
- 銀行や保険の住所変更
- 空き家になる実家の扱い
実家をどうするかは、親が施設に入ったら実家はどうするにまとめました。貸すと税の特例が使えなくなる場合があるなど、先に確認しておきたい点があります。
まとめ|住み始める日から14日を逆算する
呼び寄せ方を決める
同居・近居・施設。本人の意思を先に聞く。
転居前に元の市区町村で手続きする
受給資格証明書の交付を受ける。
転入から14日以内に認定を引き継ぐ
過ぎると新たな申請が必要になることが一般的。起点は実際に住み始めた日。
施設なら住所地特例を確認する
グループホームなど地域密着型は対象外。
同居なら変わる点を確認する
生活援助の制限、世帯の扱いで負担が変わる場合がある。
転入先で相談先を決める
地域包括支援センターに、転居前から相談できる場合もある。
呼び寄せは、住まいと介護保険と医療の手続きが、短い期間に重なります。
転居日が決まったら、住み始める日から14日という期限を逆算して、何をいつやるかを家族で共有してください。認定のやり直しという事態を避けやすくなります。
関連記事
出典・参考
- 介護保険法 第13条(住所地特例)/第36条(他の市町村で受けた要介護認定の取扱い)
- 新宿区「転出・転入するときは(介護保険)」(転入した日から14日以内に認定を引き継ぐ手続き、介護保険受給資格証明書、住所地特例適用届)
- 目黒区「介護保険の資格に関する特例(住所地特例制度)」(有料老人ホームに該当するサ高住は2015年4月1日以降の入所者から対象、グループホームなどの地域密着型施設は対象外)
- 吹田市「引っ越しするときの手続き(介護保険)」(認知症高齢者グループホームなどの地域密着型サービスは住所地特例の対象外)
- 大田区「大田区へ転入された方へ(介護保険 要介護・要支援認定について)」(実際に住み始めた日から14日以内、受給資格証明書がなくても手続き可)
- 千葉市「転入・転出の手続き」(介護度は前市町村からの引き継ぎ、有効期間は転入日から6か月)
- 杉並区「転入・転出時の手続きについて」(負担限度額認定証は新住所地で再度申請、遡及不可)
- 厚生労働省「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」(同居家族等がいる場合の生活援助)
この記事の情報は2026年9月時点のものです。手続きの期限、必要な書類、引き継いだ認定の有効期間、住所地特例適用届の提出期限、世帯の扱いによる負担の判定は、市区町村によって異なる場合があります。実際の手続きは、転出元・転入先それぞれの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。

