この記事の要点
- 法律上は「申請から30日以内」だが、実際の全国平均は39.3日(厚生労働省データ)
- 遅れの最大の原因は主治医意見書の未着。申請から10日たったら医療機関に確認を
- 結果が出る前でもサービスは使える(暫定利用)。待つ必要はない
- 認定は申請日にさかのぼって有効。急ぐなら早く出すことが唯一の対策
介護保険のサービスを使うには、まず要介護認定を受ける必要があります。
多くの解説では「申請から30日以内に結果が出る」と書かれています。これは介護保険法に定められた期間です。
ただし、実際にはそれより時間がかかることのほうが多いというのが現状です。この記事では、公的なデータをもとに実際の日数を示したうえで、待っている間にできることをまとめます。
実際は何日かかるのか
厚生労働省が全国1,559の保険者(市区町村)を集計したデータがあります。
| 区分 | 日数 |
|---|---|
| 最も短い保険者 | 20.3日 |
| 4分の1の保険者 | 35.1日以内 |
| 中央値 | 39.3日 |
| 4分の3の保険者 | 43.5日以内 |
| 最も長い保険者 | 80.6日 |
出典:厚生労働省 社会保障審議会 介護保険部会(第117回)資料/令和5年度 介護保険総合データベース
半分以上の自治体が30日を超えています。 最も長いところでは80日、つまり2か月半かかっています。
法律違反ではないかと思われるかもしれませんが、介護保険法では「処理に時間がかかる場合は、期間を延長する通知を出す」ことが認められています。実務上は、この延長通知が出されるケースが多くなっています。
なぜ遅れるのか
厚生労働省は背景として、認定を受ける高齢者が制度開始時(2000年度)の3.2倍に増えている一方、認定に関わる職員数はそれに見合うほど増えていないことを挙げています。
構造的な問題なので、個々の自治体を責めても解決しません。遅れる前提で動くほうが現実的です。
申請から結果までの6ステップ
申請する
市区町村の介護保険担当窓口に申請書を出します。
必要なもの:
- 介護保険被保険者証(65歳以上の方に交付されているもの)
- 申請書(窓口またはホームページで入手)
- 40〜64歳の方は、加入している医療保険の被保険者証
本人が窓口に行けなくても大丈夫です。 家族が代理で申請できます。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に代行してもらうこともできます。
認定調査
市区町村の調査員が自宅や病院を訪問し、74項目の聞き取り調査を行います。
ここが結果を左右する重要な場面です。詳しくは後述します。
主治医意見書
市区町村から主治医へ、意見書の作成が依頼されます。
ここが最も遅れやすい工程です。 申請者が何もしなくても進みますが、医師が多忙だと後回しにされることがあります。
一次判定
認定調査の結果をコンピュータで分析し、「要介護認定等基準時間」を算出します。機械的な判定です。
二次判定
介護認定審査会が、一次判定の結果、認定調査の特記事項、主治医意見書を総合して最終的な区分を決めます。
審査会は、医師、看護師、保健師、社会福祉士、介護福祉士などの専門家で構成されます。
結果通知
認定結果が郵送で届きます。区分(要支援1〜2、要介護1〜5、非該当)と、認定の有効期間が記載されています。
遅れを防ぐためにできること
申請から10日たったら、主治医に確認する
意見書の遅れが、全体の遅延に直結します。
申請してから10日ほど経ったら、かかりつけの医療機関に「介護保険の意見書の依頼は届いていますか」と確認してください。
届いていない、あるいは手をつけられていない場合は、市区町村の窓口にその旨を伝えます。自治体から改めて催促してもらえます。
ポイント
遠慮する必要はありません。 医療機関側も依頼が埋もれていることに気づいていない場合があります。
申請前に主治医に一声かけておく
これから申請する場合は、受診時に「介護保険を申請するので、意見書をお願いすることになります」と伝えておくと、依頼が届いたときにスムーズです。
主治医がいない場合は、申請の前に受診しておく必要があります。まったく受診歴のない医師には意見書が書けません。
結果を待たずにサービスを使う方法
ここが、多くの人が知らずに損をしている部分です。
認定結果が出る前でも、介護サービスは利用できます。 これを「暫定利用」といいます。
なぜ可能なのか
要介護認定は、申請日にさかのぼって有効になります。
つまり、8月1日に申請して9月10日に「要介護2」と通知が来た場合、8月1日から要介護2だったことになります。その間に使ったサービスも、介護保険の対象です。
手順
- 地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所に相談する
- ケアマネジャーに暫定のケアプランを作ってもらう
- サービスを利用開始する
注意点
注意
想定より軽い区分が出た場合、超過分は全額自己負担になります。
たとえば要介護3を想定してサービスを組んだのに、結果が要介護1だった場合。要介護1の支給限度額を超えた部分は、自費で払うことになります。
そのため、暫定利用では限度額に余裕を持たせた組み方をするのが一般的です。ケアマネジャーはこの調整に慣れているので、率直に相談してください。
認定調査で伝えるべきこと
調査当日の受け答えで、結果が変わることがあります。
できないことを、できると言ってしまう問題
高齢の方は、調査員の前で気を張ります。普段はできないことも「できます」と答えてしまいがちです。
その結果、実際より軽い区分が出ることがあります。
家族が同席する
可能な限り、普段の様子を知っている家族が同席してください。 本人の答えと違う場合、家族から補足できます。
本人の前で言いにくい内容は、調査員に別室で伝えるか、事前にメモを渡す方法もあります。
事前にメモを用意する
以下のような点を書き出しておくと、伝え漏れが減ります。
- できない日があること(「調子のいい日はできるが、週の半分はできない」)
- 時間がかかること(「着替えに30分かかる」)
- 見守りや声かけが必要なこと(「言わないと食事を摂らない」)
- 夜間の状況(「夜中に何度も起きる」「トイレに間に合わないことがある」)
- 家族の負担(「目が離せず、仕事を早退することがある」)
伝え方のコツ
大げさに言う必要はありません。 ただし、いい面だけを見せると実態が伝わりません。困っていることを、事実として伝えてください。
結果に納得できないとき
区分変更申請
心身の状態が変わった場合、有効期間の途中でも区分変更を申請できます。
「結果が軽すぎる」と感じたときにも使われる方法です。認定調査からやり直しになります。
不服申立て
結果通知を受け取った日の翌日から3か月以内に、都道府県の介護保険審査会に審査請求ができます。
ただし、こちらは判断までに時間がかかります。実務上は区分変更申請のほうが早いことが多いため、まず市区町村の窓口かケアマネジャーに相談してください。
40〜64歳でも申請できる場合
介護保険は65歳以上が対象ですが、40〜64歳でも16種類の特定疾病に該当すれば申請できます。
若年性認知症、脳血管疾患、末期がん、パーキンソン病関連疾患、関節リウマチなどが含まれます。
該当するかどうかは主治医に確認してください。この場合、申請には医療保険の被保険者証が必要です。
まとめ:まず申請を出すこと
要介護認定は、申請日にさかのぼって有効になります。
つまり、迷っている期間はそのまま損になります。「まだ必要ないかもしれない」と考えているうちに状態が悪化し、必要になったときには結果が出るまで1か月以上待つ、という事態が起こります。
判断に迷ったら、地域包括支援センターに相談してください。 無料で、申請の代行もしてもらえます。
関連記事
- 地域包括支援センターとは|何を相談できるのか
- 老人ホームの費用相場を、施設タイプ別に比較する
- 高額介護サービス費と補足給付で、いくら戻るか
出典・参考
- 厚生労働省「要介護認定の認定審査期間について」社会保障審議会 介護保険部会(第117回)資料2
- 介護保険法 第27条第11項
- 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
この記事の情報は2026年8月時点のものです。制度の運用は自治体により異なる場合があります。実際の手続きは、お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。

