親が歩けなくなったら|最初の1週間にやること

この記事の要点

  • 「突然」か「徐々に」かで、最初にやることが変わります
  • 突然のときは受診が最優先。制度の話はそのあとです
  • 要介護認定は、入院中でも申請できます。退院を待たないでください
  • 安静にしすぎると、さらに歩けなくなります(廃用症候群)
  • 福祉用具は先に買わないでください。介護保険が使えなくなります

実家に電話したら、母の様子がおかしい。あるいは帰省したら、父が立ち上がるのに苦労している。

昨日まで歩けていた人が、歩けなくなる。 これは、ある日突然起こります。

そのとき、何から手をつければいいのか。手順を6つに分けて書きます。最初の1つを間違えると、あとが全部遅れます。

目次

手順① 緊急性を判断する

まず、制度の話は忘れてください。 受診が先です。

特に、次のような場合は急を要します。

すぐに救急車を呼ぶべき状態

  • 片側の手足に力が入らない
  • 顔の片側が下がっている
  • ろれつが回らない、言葉が出ない
  • 激しい頭痛
  • 意識がはっきりしない
  • ふらついて、まっすぐ歩けない

脳血管の疾患が疑われる状態です。時間との勝負になります。 迷ったら119番に電話してください。判断に迷う場合は#7119(救急安心センター)でも相談できます。

また、足に強い痛みがあり、体重をかけられない場合は骨折の可能性があります。無理に動かさず、整形外科を受診してください。

徐々に歩けなくなった場合

「気づいたら、前より歩けなくなっていた」という場合も、受診は必要です。

原因は複数あり、治療で改善するものも含まれます。

考えられるもの受診先の目安
腰や膝の痛み、骨折整形外科
歩くとしびれ、休むと楽になる整形外科
動きが遅い、手足が震える脳神経内科
歩行障害・もの忘れ・尿失禁が揃う脳神経外科
安静が続いたあとの筋力低下かかりつけ医

手術で改善する場合があります

表の4行目に注目してください。歩行障害・認知機能の低下・尿失禁の3つが揃う場合、特発性正常圧水頭症の可能性があります。

国立長寿医療研究センターは、手術で治療可能な認知症があると説明しています。髄液を流すシャント手術で症状が改善した例が報告されています。

詳しくは認知症の初期サイン|受診までの5つの手順にまとめました。

どこを受診すればよいか分からない場合は、まずかかりつけ医に相談してください。 必要なら専門の医療機関を紹介してもらえます。

手順② 要介護認定を申請する

受診と並行して、すぐに動いてください。

要介護認定の結果が出るまで、平均39日かかります。 法律上は30日以内とされていますが、実際にはそれ以上かかるのが実情です。

入院中でも申請できます

「退院してから」と考える方が多いのですが、入院中でも申請できます。

退院してから申請すると、サービスが使えるようになるまでさらに1ヶ月以上かかります。入院中に出しておけば、退院と同時に使い始められる可能性があります。

入院先に医療ソーシャルワーカーがいれば、申請を代行してくれることもあります。

窓口は市区町村の介護保険担当課、または地域包括支援センターです。相談は無料です。

申請から結果までの流れは、こちらの記事にまとめました。

認定調査では、実態を正確に伝える

調査のとき、本人が普段より元気に受け答えすることがあります。その場では「できます」と答えても、実際にはできていない。

ここで家族が補うことが重要です。ポイントは「いつ、何が、どれくらいの手間か」を伝えること。

一次判定はコンピュータが74項目から算出しますが、個別の手間は「特記事項」にしか入りません。 詳しくは認定調査で家族が伝えることをご覧ください。

手順③ 安静にしすぎない

ここは見落とされやすく、かつ影響が大きい部分です。

動かない時間が続くと、さらに歩けなくなります。 これを廃用症候群といいます。

筋力の低下、関節の動きの悪化、心肺機能の低下。安静そのものが原因で、状態が進みます。

「転ぶと危ないから寝かせておく」は逆効果

心配のあまり、動かさないようにする方がいます。気持ちは分かりますが、結果的に回復を遠ざけます。

どこまで動かしてよいかは、医師やリハビリ職の判断が必要です。 自己判断せず、受診時に必ず聞いてください。

「どこまで動かして大丈夫ですか?」
「してはいけない動きはありますか?」

退院後にリハビリを続けたい場合、デイケア(通所リハビリテーション)という選択肢があります。医師の指示に基づくリハビリを受けられます。

手順④ 福祉用具を手配する

先に買わないでください。 ここが最も多い失敗です。

介護保険を使うには、ケアプランに位置づけられている必要があります。 通販で先に買ってしまうと、保険の対象になりません。

まずケアマネジャーに相談してください。福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、状態と住まいを見て提案してくれます。

用具扱い
車いす、介護ベッドレンタル(要支援1・2と要介護1は原則対象外)
歩行器、杖2024年4月からレンタルか購入を選べます
手すり(床置き型)レンタル
ポータブルトイレ、シャワーチェア購入(年10万円まで)

福祉用具に公定価格はありません。 同じ商品でも事業所によって値段が違います。相談員には全国平均価格を提示する義務があるので、聞いてください。

詳しくは福祉用具のレンタルと購入にまとめました。

手順⑤ 家の環境を整える

歩けなくなると、それまで問題なかった場所が危険になります。

  • 玄関の上がり框(靴を履くときにふらつく)
  • 廊下(つかまるところがない)
  • トイレまでの動線(夜間は特に危険)
  • 浴室(またぐ動作、滑りやすい床)
  • 寝室が2階にある場合の階段

手すりの設置や段差の解消には、介護保険の住宅改修が使えます。上限20万円です。

着工前に申請しないと1円も出ません

親が退院してくる、転倒が続いている。急いでいるときほど、この手順が飛びます。

工事を終えてから制度を知っても、遡って支給されることはありません。「工事の前に、まずケアマネジャーへ」だけ覚えておいてください。

詳しくは住宅改修20万円の使い方をご覧ください。

寝室が2階にある場合、1階に移すことを検討してください。 工事より効果が大きいことがあります。

手順⑥ 一人にできない時間を考える

歩けなくなると、それまで一人で過ごせていた時間が、そうではなくなります。

特に、こういう場面です。

  • 夜間にトイレへ行こうとして転倒する
  • 転んだまま起き上がれず、誰にも気づかれない
  • 日中、家族が仕事に出ている間

まず公的なサービスを確認する

要介護認定が出れば、次のサービスが使えます。

サービスできること
訪問介護身体介助、生活援助(同居家族がいると制限あり)
定期巡回・随時対応型訪問介護看護1日に何回でも短時間の訪問。24時間の通報体制
小規模多機能型居宅介護通い・訪問・泊まりを月額定額で
ショートステイ数日から数週間の宿泊

定期巡回は、夜間の不安に対して有効です。 1日に何回来てもらっても月額定額で、24時間いつでも通報できます。

ただし事業所がない市区町村も多いので、まず確認が必要です。

自治体の緊急通報装置も確認する

多くの市区町村に、緊急通報装置の貸与制度があります。無料または低額です。

ただし、申請に「協力員」を1名以上登録する条件がある自治体が多い。 近所に頼める人がいないと、ここで詰まります。

公的制度が使えない場合の選択肢を含めて、一人暮らしの親の安否確認にまとめました。センサー型・カメラ型・駆けつけ型の違いと、費用の目安も書いています。

仕事との両立を先に考える

ここまでの手続きは、ほとんどが平日の日中に発生します。

  • 医師の説明
  • 認定調査の立ち会い
  • ケアマネジャーとの面談
  • 福祉用具の相談、住宅改修の打ち合わせ

有給休暇を使い切ってしまう方が多いのですが、制度があります。

制度内容
介護休暇年5日。当日の朝でも口頭で申し出られます
介護休業通算93日。3回に分割できる
所定外労働の制限残業免除。介護が終わるまで期間の制限なし

特に3つ目は知られていません。基本給が減らず、会社は原則として断れません。 詳しくは介護と仕事を辞めずに続けるをご覧ください。

辞める前に、使える制度を確認してください。

まとめ|最初の1週間でやること

  1. 受診する

    突然なら救急。制度の話はそのあとです。

  2. 要介護認定を申請する

    入院中でも申請できます。 結果まで平均39日。

  3. 動かしてよい範囲を医師に聞く

    安静にしすぎると、さらに歩けなくなります。

  4. ケアマネジャーに連絡する

    福祉用具は先に買わない。 ケアプランへの位置づけが要ります。

  5. 家の危険な場所を確認する

    住宅改修は着工前に申請。20万円まで。

  6. 一人にできない時間を洗い出す

    夜間か、日中か。それによって使う制度が変わります。

歩けなくなったからといって、そのまま寝たきりになるとは限りません。原因によっては改善します。 そして、改善しない場合でも、支える仕組みはあります。

ただ、制度は申請しないと使えません。 そして結果が出るまでに時間がかかります。

まず受診。そして認定申請。 この2つを、同じ週のうちに済ませてください。

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出典・参考

  • 国立長寿医療研究センター「認知症の原因となる正常圧水頭症」(歩行障害・認知機能低下・尿失禁の3徴候、シャント手術)
  • 厚生労働省「介護保険制度」(要介護認定の申請、住宅改修費20万円、福祉用具貸与・特定福祉用具販売)
  • 育児・介護休業法(介護休暇、介護休業、所定外労働の制限)
  • 総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)」

この記事の情報は2026年8月時点のものです。当サイトは医療機関ではなく、記載内容は診断や治療の判断に用いることを目的としていません。歩行が困難になる原因は多岐にわたり、必要な検査や治療は個別に異なります。症状については必ず医師にご相談ください。

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