親が入院したとき|退院までにやることの順番

この記事の要点

  • 病院の平均在院日数は29.3日。動ける時間は、思っているより短いです
  • 病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)がいます。相談は無料です
  • 入院から7日以内に、病院側が家族と話し合いを始めることが診療報酬の要件になっています
  • 1週間たっても何も言われないなら、こちらから相談室へ行って構いません
  • 要介護認定の申請は、入院中でもできます。退院を待つ必要はありません

親が倒れて入院した。手術は無事に終わった。ひとまず落ち着いた、と思っていたら、看護師から「そろそろ退院後のことを考えてください」と言われる。

まだ点滴もつながっているのに、退院の話。早すぎるのではないか、と感じると思います。

ただ、これは病院が冷たいわけではありません。入院した時点で、退院までのカウントダウンは始まっています。 そして、その間にやることが想像以上に多い。

この記事では、入院から退院までにやることを、順番に並べました。いま病室の外で、これを読んでいる方に向けて書いています。

目次

動ける時間は、1か月もない

厚生労働省の調査によると、病院を退院した患者の平均在院日数は29.3日です。1か月弱。

ただし、これは全体の平均です。一般病床(急性期の治療をする病棟)はもっと短く、2週間程度で退院や転院を求められることも珍しくありません。

病院には、入院期間が長くなるほど収入が減る仕組みがあります。だから追い出される、という単純な話ではありませんが、「治療が終わったら退院」という前提で動いていることは、知っておいたほうがいいです。

その1か月弱の間に、次のことを決めることになります。

  • 家に帰るのか、別の病院に移るのか、施設に入るのか
  • 家に帰るなら、介護サービスをどう入れるか
  • 誰がケアマネジャーになるのか
  • 手すりの設置やベッドの手配
  • お金をどうするか

一人で全部やるのは無理です。そのための窓口が、病院の中にあります。

病院の中に、無料の相談窓口がある

医療ソーシャルワーカー(MSW)という職種があります。社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持つ、福祉の専門職です。

医師でも看護師でもありません。病気そのものではなく、病気によって起きる生活の問題を担当します。

相談できるのは、こういうことです。

相談できること具体例
退院後の生活家に帰れるか、施設が必要か
転院リハビリ病院や療養病床の紹介・調整
介護保険要介護認定の申請、ケアマネジャーの紹介
お金医療費が払えない、高額療養費、障害年金
施設探し条件に合う施設の情報、空き状況の確認

相談は無料です。 病院の「地域連携室」「医療相談室」「患者支援センター」などの名前で設置されています。名称は病院によって違うので、看護師に「医療相談室はどこですか」と聞けば案内してもらえます。

小さい病院にはいないこともあります

MSWの配置は義務ではありません。いない場合は、看護師長か、退院支援を担当する看護師が窓口になります。「退院後のことを相談したいのですが、どなたに話せばいいですか」と聞いてください。

病院側は、7日以内に動くことになっている

ここは、あまり知られていないと思います。

病院が入退院支援加算という診療報酬を算定する場合、次のことが要件になっています。

  • 入院後3日以内(または7日以内)に、退院が難しくなりそうな患者を抽出する
  • 入院後7日以内に、患者・家族と、退院後の生活を含めた話し合いを行う
  • 入院後7日以内に、看護師・社会福祉士などが共同でカンファレンスを行う

つまり、病院側には、入院して1週間以内に家族と話を始める仕組みがあります。 こちらが「まだ早いのでは」と遠慮する必要はありません。

逆に言えば、1週間たっても誰からも声がかからないなら、こちらから相談室に行って構いません。 むしろそのほうが早く進みます。

「退院後のことで相談したいのですが、医療ソーシャルワーカーの方はいらっしゃいますか」

この一言で足ります。予約が必要な病院もあるので、看護師経由で聞くのが確実です。

入院中にやることの順番

  1. 医療相談室に行く(入院から1週間以内)

    最初にここです。何を相談すればいいか分からなくても構いません。「親が入院しました。この先どうなるか分からないので相談したい」で通じます。

    このとき、親の普段の生活を伝えられると話が早く進みます。一人暮らしか、家族と同居か。入院前は自分で歩けていたか。持ち家か賃貸か。

  2. 要介護認定を申請する(入院中に可能)

    退院を待つ必要はありません。 入院中でも、市区町村の窓口に申請できます。

    認定には平均39日かかります。退院してから申請すると、サービスが使えるようになるまで1か月以上あくことになります。入院中に出しておくと、退院と同時にサービスを始められる可能性があります。

    申請はMSWが代行してくれることもあります。まず相談してください。

  3. 医師に「今後どうなるか」を聞く

    治療の見通しだけでなく、生活がどう変わるかを聞いてください。

    「歩けるようになりますか」「食事は自分で摂れますか」「トイレはどうなりますか」。ここが分からないと、家に帰れるかどうかの判断ができません。

    説明の場に同席できないときは、看護師に伝えておくと日程を調整してもらえることがあります。

  4. 行き先を決める

    選択肢は大きく3つです。自宅、転院(リハビリ病院・療養病床)、施設。

    この判断は、家族だけで抱えないでください。 MSWは、本人の状態と地域の受け入れ状況の両方を知っています。「うちの状況だと、どの選択肢が現実的ですか」と直接聞いていいです。

  5. ケアマネジャーを決める(自宅に帰る場合)

    自宅なら、ケアマネジャーがその後の窓口になります。MSWが候補を紹介してくれることが多いです。

    紹介されたケアマネジャーが合わない場合、あとから変更できます。最初の1人で決まりではありません。

  6. 退院前カンファレンスに参加する

    退院が近づくと、病院の担当者とケアマネジャー、家族が集まって話す場が設けられることがあります。

    ここは必ず参加してください。 医療側と介護側が一度に揃う、唯一の機会です。仕事の都合がつかない場合も、日程調整を頼む価値があります。

お金の話は、早めにしていい

言い出しにくいと感じるかもしれませんが、MSWにとっては日常的な相談です。 遠慮せずに聞いてください。

入院中に確認しておくとよいのは、次のあたりです。

  • 高額療養費制度。自己負担が上限を超えた分が戻ります。「限度額適用認定証」を事前に取得すれば、窓口での支払い自体が上限までになります
  • 医療費が払えない場合の制度。分割払いや、自治体の貸付制度があります
  • 入院時の食費の減額。住民税非課税世帯なら対象になります

退院後にかかるお金については、介護にかかるお金の総額で、在宅と施設それぞれの目安をまとめています。

保証人欄や預り金は、確認する余地があります

入院時の書類に、身元保証人や連帯保証人の欄があることがあります。病院によっては、事情を説明すれば代替の方法を用意してくれる場合があります。書けないと感じたら、そのままにせずMSWに相談してください。

平日の日中に呼ばれることばかり

入院中の付き添い、医師の説明、退院前カンファレンス。平日の日中に呼ばれることばかりです。

ここで有給休暇を使い切ってしまう方が多いのですが、介護休暇という制度があります。 年5日、時間単位でも取れて、当日の朝に口頭で申し出ることも可能です。

まとまった対応が必要なら介護休業(通算93日)もあります。この93日は、まさにこういう時期のために設計された制度です。 詳しくは介護休暇と介護休業の違いにまとめました。

会社への伝え方はこちらの記事で書いています。2025年4月から、介護に直面したと申し出た社員に、会社が制度を説明する義務が生まれています。

まとめ|いま、何から始めるか

いちばん大事なことを1つだけ挙げるなら、医療相談室に行くことです。

そこから先は、専門職が一緒に考えてくれます。ケアマネジャーの紹介も、施設の情報も、お金の制度も、そこを起点に動きます。自分ひとりで調べて決める必要はありません。

順番をもう一度並べます。

  • 入院から1週間以内に医療相談室へ
  • 要介護認定は入院中に申請(退院を待たない)
  • 医師には生活がどう変わるかを聞く
  • 行き先の判断はMSWに相談しながら
  • 退院前カンファレンスには必ず参加

病室にいると、時間の感覚が曖昧になります。それでも、退院の日は必ず来ます。 早めに動いたぶんだけ、選べる選択肢が増えます。

いま不安の中にいる方へ。この状況で調べものをしている時点で、すでに必要なことをしています。まず、明日にでも相談室のドアを叩いてください。

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出典・参考

  • 厚生労働省「令和5年 患者調査」退院患者の平均在院日数(病院29.3日、一般診療所14.2日)
  • 厚生労働省 診療報酬 A246「入退院支援加算」算定要件(スクリーニング3日以内/7日以内、患者・家族との話し合いおよび多職種カンファレンス7日以内)
  • 厚生労働省「医療ソーシャルワーカー業務指針」
  • 介護保険法(要介護認定の申請)/高額療養費制度(健康保険法)

この記事の情報は2026年8月時点のものです。入院期間や退院支援の体制は、病院の機能や本人の状態によって大きく異なります。個別の判断は、必ず主治医および病院の相談窓口にご確認ください。

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