この記事の要点
- 介護休暇は年5日、当日の朝でも取れます。口頭の申し出で足ります
- 介護休業は通算93日。給付金は67%ですが、社会保険料は免除されません
- そのため、手取りは月給のおよそ5割になります。育児休業とはここが違います
- 93日は「介護に専念する期間」ではなく、体制を整えるための期間として設計されています
- 2025年4月から、入社6か月未満でも介護休暇が取れるようになりました
介護休暇と介護休業。名前が似ているうえに、どちらも「休む制度」なので、違いが分かりにくいと思います。
調べる前は、私も「短いのが休暇、長いのが休業」くらいの理解でした。実際、日数の違いはそのとおりです。ただ、制度を細かく見ていくと、それ以外に大きな違いがありました。
特に、お金の扱いが想像とかなり違います。 順に書いていきます。
まず、違いを1枚で
| 介護休暇 | 介護休業 | |
|---|---|---|
| 日数 | 年5日 (対象家族2人以上なら10日) | 対象家族1人につき 通算93日 |
| 分割 | 1日または時間単位 | 最大3回まで |
| 申請 | 口頭で可。当日でも可 | 原則2週間前までに書面 |
| 賃金 | 原則無給 | 原則無給 |
| 給付金 | なし | 賃金の67% |
| 主な用途 | 通院の付き添い、手続き | 体制づくり、看取り |
ここまでは、多くのサイトに書かれている内容です。ここから先が、調べていて意外だった部分です。
驚いたこと1:介護休業中も、社会保険料を払い続ける
これがいちばん大きな発見でした。
育児休業では、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。 会社を通じて申請すれば、本人負担も会社負担もゼロになります。
介護休業には、この免除がありません。
給付金は賃金の67%です。ところが、そこから社会保険料を払います。月給30万円の方で試算すると、こうなります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月給 | 300,000円 |
| 介護休業給付金(67%) | 201,000円 |
| 健康保険料(本人負担・概算) | −15,000円 |
| 厚生年金保険料(本人負担) | −27,450円 |
| 差引 | 約158,550円 |
月給に対して、およそ53%です。 しかもここに住民税が加わります。住民税は前年の所得で決まるので、休業中でも減りません。
健康保険料率は加入している保険者や都道府県で変わるため、金額は目安です。ただ、「67%もらえる」と「手取りが67%になる」は違うという構造は変わりません。
保険料は、会社経由で請求されます
給与が出ないので天引きできません。会社が立て替えて、後日まとめて請求されるのが一般的です。休業明けの給与から数か月分がまとめて引かれることもあります。 支払い方法は、休業前に人事に確認しておいてください。
驚いたこと2:介護休暇は、当日の朝でも取れる
介護休暇には、事前申請の義務がありません。
法律上は口頭での申し出で足ります。 「今日、母の通院に付き添うので休みます」と朝に連絡することも可能です。
これは有給休暇より柔軟です。有給は時季変更権があり、会社が日程の変更を求められる場合があります。介護休暇に時季変更権はありません。 会社は拒否できません。
ただし、実務上は会社の書式や連絡ルートに従うのが普通です。就業規則で手続きが決められていることが多いので、事前に確認しておいてください。 急に必要になったときに慌てずに済みます。
時間単位でも取れます。午前だけ、2時間だけという使い方ができます。通院の付き添いや、ケアマネジャーとの面談には、この形が合います。
驚いたこと3:93日は「介護する期間」ではない
介護休業の93日を、「介護に専念する期間」だと考えると、判断を誤ります。
介護は平均で4年7か月続きます。93日は、そのうちの3か月です。93日で介護が終わることは、まずありません。
では何のための期間かというと、介護の体制を作るための期間です。厚生労働省の説明でも、この趣旨で整理されています。
- 要介護認定の申請と、結果を待つ期間(平均39日)
- ケアマネジャーを決め、ケアプランを作る
- デイサービスや訪問介護の事業所を選ぶ
- 施設を探す場合は、見学と申し込み
- 親の家の片づけ、手すりの設置など
これらを終えて、自分が働きながら回せる状態を作る。 そこまでが93日の役割です。
だから、3回に分割できる設計になっています。認定の申請時に30日、退院のときに30日、施設入居のときに33日。山場ごとに使うほうが、制度の趣旨に合っています。
最初に全部使わない
状況が変わるたびに手続きが必要になります。最初にまとめて93日を使い切ると、次の山場で休めません。残しておくことに意味があります。
驚いたこと4:別居の親でも使える
対象家族の範囲について、同居や扶養の要件は2017年に撤廃されています。
離れて暮らす親でも、仕送りをしていなくても、対象になります。実家が遠方でも使えます。
対象になるのは次の範囲です。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母、子
- 配偶者の父母
- 祖父母、兄弟姉妹、孫
配偶者の父母が含まれている点は、見落とされやすいところです。 義理の親の介護でも使えます。
ただし、「要介護状態」であることが条件です。これは要介護認定を受けていなくても、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態であれば該当します。認定待ちの期間でも使えるということです。
2025年4月に変わったこと
比較的新しい改正なので、古い情報が残っているサイトもあります。現在の内容を整理します。
- 入社6か月未満でも介護休暇が取れるようになりました。従来は労使協定で除外できましたが、この規定は撤廃されています。現在、除外できるのは「週の所定労働日数が2日以下」の方だけです
- 介護に直面したと申し出た従業員に対し、会社が制度を個別に説明し、利用の意向を確認することが義務になりました
- 40歳になった従業員への情報提供も義務化されました
この改正の意味は大きいと思います。会社側に説明する義務があるということは、こちらから申し出れば話が動くということです。 詳しくは会社に介護を伝えるタイミングと伝え方に書きました。
結局、どう使い分けるか
調べた内容をもとに整理すると、こうなります。
単発の用事には介護休暇
通院の付き添い、ケアマネジャーとの面談、区役所での手続き。年5日を、時間単位で細かく使うのが現実的です。給付金はないので、有給休暇が残っているなら、そちらを先に使う手もあります。
まとまった対応が必要なときは介護休業
入院からの退院調整、施設探し、認定申請から結果までの期間。数週間から1か月単位で必要なときに使います。給付金の申請は会社経由が原則です。
働き方の変更も選択肢に入れる
短時間勤務、時差出勤、在宅勤務。休むより続けやすい形があるなら、そちらが先です。 会社には、これらの措置を講じる義務があります。
給付金の具体的な計算方法と申請手順は、介護休業給付金の申請手順にまとめています。
まとめ|迷っている方へ
調べていて感じたのは、この2つは「休む長さ」で分かれているのではなく、目的で分かれているということでした。
- 介護休暇=その日の用事のため。柔軟で、当日でも取れる
- 介護休業=体制を作るため。給付金はあるが、社会保険料は自己負担
そして、どちらも介護を自分でやり切るための制度ではありません。 仕事を続けながら介護を回せる状態を作る。そこが目的地です。
制度を知らないまま離職を選んでしまうケースが多いと言われています。使える手を確認してから判断してください。
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出典・参考
- 育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)第16条の5以降ほか
- 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(2025年4月1日施行分。介護休暇の除外規定の見直し、個別周知・意向確認の義務化、40歳時の情報提供)
- 厚生労働省「令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について」(介護休業給付金の支給限度額 上限366,222円、賃金月額の上限546,600円・下限96,090円)
- 雇用保険法第61条の4(介護休業給付金)
- 健康保険法・厚生年金保険法(育児休業等期間中の保険料免除。介護休業は対象外)
この記事の情報は2026年8月時点のものです。試算に用いた社会保険料は概算で、健康保険料率は加入する保険者や都道府県によって異なります。社内の制度や運用は会社によって違うため、実際の手続きは勤務先の就業規則または人事担当にご確認ください。

