認知症の徘徊対策|8割が5km圏内で見つかっている

この記事の要点

  • 2024年、認知症に関連する行方不明者は18,121人。うち491人が亡くなっています
  • 亡くなった方の77.8%は、いなくなった場所から5km圏内で見つかっています
  • 当日に見つかれば死亡率0.8%。4〜7日かかると41.0%です
  • 時間が生死を分けます。 だから、いなくなる前の備えが要ります
  • 全市町村にSOSネットワークがあります。事前登録は無料です

「ちょっとそこまで」と言って出ていったきり、帰ってこない。

近所を探しても見つからない。時間が経つほど焦りが強くなる。この状況は、備えていないと何もできません。

調べていて、はっきりした数字がありました。時間が生死を分けます。 そして、備えの多くは無料でできます。

チェックリストの形で書きます。印刷するか、スクリーンショットを撮ってお使いください。

目次

遠くへは行っていない

警察庁が毎年公表しているデータがあります。

項目2024年
認知症に関連する行方不明者18,121人
うち亡くなった方491人
亡くなった場所が5km圏内だった割合77.8%(382人)

亡くなった方の8割近くが、いなくなった場所から5km以内で見つかっています。

遠くへ行ってしまうわけではありません。近くにいるのに、見つけられない。 それが実態です。

発見までの日数で、死亡率が変わります

同じ調査に、発見までの期間別のデータがあります。

発見までの期間発見された人数うち死亡死亡率
受理当日12,476人99人0.8%
2〜3日4,156人175人4.2%
4〜7日195人80人41.0%

当日なら0.8%。4日を過ぎると41.0%。 50倍以上の差があります。

警察庁の担当者も、こう述べています。

速やかな対応が生死を分ける。機器を無償貸与する自治体もあるので活用してほしい

備えの目的は「出ていかないようにすること」ではなく、「早く見つけること」です。 ここを間違えると、対策の方向がずれます。

「徘徊」には本人なりの理由がある

用語について、先に触れておきます。

「徘徊」は「目的なく歩き回ること」を意味する言葉ですが、本人には理由があります。

  • 昔の家に帰ろうとしている
  • 仕事に行こうとしている
  • 買い物に出たが、道が分からなくなった
  • 不安で、落ち着ける場所を探している

本人にとっては目的のある外出です。近年、自治体では「徘徊」という言葉を避け、「ひとり歩き」「行方不明」と表現するところが増えています。

理由が分かると、対策が変わります

「夕方になると出ていく」なら、その時間帯に何をしていた人なのか。仕事帰りの時間かもしれません。

行動を止めることより、その時間に別の予定を入れるほうが有効なことがあります。 デイサービスの利用時間を調整する、散歩に付き合うなど。

ケアマネジャーに相談すると、ケアプランの組み替えで対応できる場合があります。

今日できること|事前登録

いなくなる前にやっておくことが、いちばん効きます。 しかも無料です。

  • 市区町村のSOSネットワークに事前登録する
  • 登録に必要なもの(名前、連絡先、身体的特徴、写真)を用意する
  • ヘルプカードを本人に持ってもらう
  • 近所の方に一言伝えておく

SOSネットワークとは

認知症の方が行方不明になったとき、地域の協力機関に一斉に情報が流れる仕組みです。

家族が警察署や市区町村に届け出ると、協力する機関にFAXやメールで情報が伝わります。

協力する機関の例
金融機関、コンビニ、スーパー
交通機関(バス、タクシー、鉄道)
薬局、医療機関
介護サービス事業者
学校、郵便局、新聞販売店

大阪府の資料によると、府内すべての市町村でネットワークが構築されています。 神奈川県も県単位で運用しています。

事前に登録しておくことで、発見が早くなります。 名前・連絡先・身体的特徴などを登録しておくと、行方不明になったときにすぐ情報を流せるからです。

「認知症のSOSネットワークに事前登録をしたいのですが、どこで手続きできますか?」

窓口は市区町村の高齢者福祉担当課か、地域包括支援センターです。

二次元コードシールを配る自治体もあります

市町村によっては、二次元コードのシールを配布しています。衣類や持ち物、爪などに貼っておく形です。

保護した人がスマートフォンで読み取ると、家族の連絡先に通報される仕組みです。本人の名前や住所が表示されるわけではないので、個人情報の心配も抑えられます。

あわせて確認してください。

持ち物と服装の備え

いなくなったとき、探す側の手がかりになります。

  • 最近の顔写真を用意しておく(届出のときに必要です)
  • いつも着ている服、履いている靴を把握しておく
  • 名前と連絡先を書いたものを持ち物に(靴の中敷き、上着の内側、財布)
  • 本人が嫌がらない形で、身につけられるものを用意する

靴に入れるのが定番です

名札を服につけると嫌がる方がいます。靴の中敷きの裏や、履き口の内側に書いておく方法があります。

本人の目に触れず、保護した人からは見つけやすい。持ち物のなかで、靴は必ず身につけているものです。

自治体のGPS貸与を確認する

警察庁の担当者が「機器を無償貸与する自治体もある」と述べていたのは、この制度です。

  • 市区町村にGPS端末の貸与制度があるか確認する
  • 無料か、低額か
  • 対象になる条件(要介護度、認定の有無など)
  • 月々の通信費が別途かかるか

自治体によって、無償貸与・低額貸与・購入費の助成など形が違います。 まず問い合わせてください。

「認知症の親のGPS端末について、市の貸与制度はありますか?」

また、介護保険の福祉用具貸与に「認知症老人徘徊感知機器」という種目があります。 玄関のセンサーなどが該当します。

ただし、要支援1・2と要介護1の方は原則として対象外です。 例外的に認められる場合もあるので、ケアマネジャーに相談してください。福祉用具についてはこちらの記事にまとめています。

家の中でできること

出ていくこと自体を減らす工夫です。ただし、閉じ込めることが目的ではありません。

  • 玄関にセンサーやチャイムを付ける(開いたら音が鳴る)
  • 本人の生活リズムを整える(日中の活動を増やす)
  • 夜間の照明を工夫する(トイレまでの導線を明るく)
  • 玄関に本人が落ち着ける物を置く(写真、なじみのある品)

鍵を二重にかけて閉じ込めるのは避けてください

気持ちは分かりますが、火事などの緊急時に逃げられません。 そして、閉じ込められた不安が症状を強めることがあります。

行動を止めるより、出ていったことにすぐ気づける仕組みを作るほうが安全です。

一人にする時間をどうするか

日中、家族が仕事に出ている時間。夜間。この時間帯が、いちばん危険です。

公的なサービスから考える

サービスできること
デイサービス日中を施設で過ごす。生活リズムが整う
定期巡回・随時対応型訪問介護看護1日に何回でも訪問。24時間の通報体制
小規模多機能型居宅介護通い・訪問・泊まりを月額定額で
グループホーム認知症の方が5〜9人で共同生活

日中の活動量を増やすことが、夜間の落ち着きにつながることがあります。 デイサービスの利用を増やすだけで改善する場合もあります。

民間の見守りサービスも選択肢に

公的制度で足りない部分は、民間のサービスで補うことになります。

センサー型・カメラ型・駆けつけ型の3種類があり、費用も対応も違います。一人暮らしの親の安否確認で、自治体の緊急通報装置を含めて整理しました。

選ぶときの分かれ目は「異常があったとき、誰が現場に行くか」です。 遠距離なら、通知を受けるだけでは足りません。

いなくなったときの行動

備えていても、起きるときは起きます。そのときの手順を決めておいてください。

  1. すぐに110番する

    「少し様子を見よう」は危険です。 当日発見なら死亡率0.8%、4日を過ぎると41.0%。時間が全てです。

    警察は認知症の行方不明者を優先的に扱います。遠慮する必要はありません。

  2. 市区町村にも連絡する

    SOSネットワークを動かしてもらいます。事前登録していれば、情報がすぐ流れます。

  3. 近所と自宅の周辺から探す

    亡くなった方の77.8%が5km圏内です。 遠くを探す前に、近くを丁寧に見てください。

    用水路、川べり、草むら、駐車場の陰。座り込んでいると、外から見えないことがあります。

  4. 本人の行きそうな場所を伝える

    昔住んでいた家、勤めていた場所、よく行っていた店。これを事前に書き出しておくと、当日あわてません。

まとめ|今日やる3つ

いろいろ書きましたが、今日できることは3つです。

  • 市区町村に電話して、SOSネットワークの事前登録を申し込む(無料)
  • 最近の顔写真を1枚、スマホに保存しておく
  • 本人が行きそうな場所を、紙に書き出す(昔の家、職場、よく行った店)

この3つは、今日中に終わります。そして、いざというとき最も効きます。

行動を止めることはできません。止めようとするほど、本人は不安になります。 できるのは、いなくなったときに早く見つけられる状態を作っておくことです。

認知症の受診がまだの場合は、認知症の初期サイン|受診までの5つの手順をご覧ください。本人が受診を嫌がっていても、家族だけで相談できる公的な窓口があります。

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出典・参考

  • 警察庁「令和6年における行方不明者届受理等の状況」(2025年6月公表/認知症に関連する行方不明者18,121人、死亡491人、うち5km圏内382人=77.8%、発見までの期間別の内訳)
  • 大阪府「行方不明時の早期発見・保護のために」(府内すべての市町村で見守りSOSネットワークを構築)
  • 神奈川県「神奈川県認知症等行方不明SOSネットワーク」(事前登録、二次元コードシールの配布)
  • 厚生労働省「地域包括ケアシステム構築に向けた取組事例」(千葉県銚子市の認知症高齢者見守りSOSネットワーク/協定締結57団体)
  • 介護保険法/厚生労働省告示(福祉用具貸与:認知症老人徘徊感知機器)

この記事の情報は2026年9月時点のものです。SOSネットワークの名称・登録方法・GPS端末の貸与制度は、市区町村によって大きく異なります。実際の手続きは、お住まいの市区町村の高齢者福祉担当課または地域包括支援センターにご確認ください。

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