最終更新:2026年9月25日
この記事の要点
- 一次判定は、主に基本調査74項目の結果をもとにコンピュータで行われます
- 選択項目だけでは表しきれない、その人固有の状況は「特記事項」に記録されます
- 厚労省のテキストにこうあります。「申請者固有の手間が特記事項から具体的に認められる場合は、一次判定に縛られずに変更できる」
- 家族が伝えたいのは、普段の生活で必要な介助や見守りの具体的な状況です
- 「大変です」では書けません。いつ、何が、どれくらいの頻度でを伝えてください
要介護認定を申請すると、市区町村から調査員が自宅に来ます。認定調査です。
ここでよく聞くのが、「実際より軽く出てしまった」という話です。本人が調査員の前で普段よりしっかり受け答えして、できないことを「できます」と答えてしまう。
調べてみると、この問題には制度上の受け皿がありました。 それを知っているかどうかで、伝え方が変わります。
手順を6つに分けて書きます。
先にお断りしておきます
この記事は「実態を正確に伝えるための準備」について書いたものです。実際より重く見せる方法ではありません。
実態と違う認定を受けても、必要なサービスは組み立てられません。正確であることが、いちばん役に立ちます。
認定調査は3つの部分でできている
まず構造を押さえてください。ここが分かると、伝え方の設計ができます。
| 部分 | 内容 | 使われ方 |
|---|---|---|
| 概況調査 | 家族構成、住環境、現在のサービス利用状況など | 全体の把握 |
| 基本調査(74項目) | 全国共通の選択式。心身の状態 | 一次判定(コンピュータ) |
| 特記事項 | 選択肢で表しきれないことの自由記述 | 二次判定(介護認定審査会) |
基本調査の74項目は、6つの分野に分かれています。
- 身体機能・起居動作
- 生活機能
- 認知機能
- 精神・行動障害
- 社会生活への適応
- 特別な医療
一次判定は「時間」に換算される
74項目の回答から、コンピュータが要介護認定等基準時間を算出します。
| 要介護認定等基準時間 | 区分 |
|---|---|
| 25分未満 | 非該当 |
| 25分以上32分未満 | 要支援1 |
| 32分以上50分未満 | 要支援2 または 要介護1 |
| 50分以上70分未満 | 要介護2 |
| 70分以上90分未満 | 要介護3 |
| 90分以上110分未満 | 要介護4 |
| 110分以上 | 要介護5 |
これは「1分間タイムスタディ」という方法で算出した時間です。 厚生労働省も、実際に家庭で行われる介護時間とは異なると明記しています。あくまで介護の必要性を量るものさしです。
なお、運動機能が低下していない認知症の方には認知症加算として基準時間が積み上げられます。
一次判定に入らないもの
ここが、この記事でいちばん重要な部分です。
厚生労働省の認定調査員テキストに、こう書かれています。
一次判定は、統計的な手法を用い、申請者の状態に関する情報を用いて、同様の特徴を持った高齢者グループに提供された介護の手間から、申請者の介護量を推定するという構造となっている
つまり一次判定は、「似た状態の人には、だいたいこれくらいの手間がかかる」という推定です。その人固有の事情は反映されにくい構造になっています。
そして、続けてこうあります。
このため、統計的な推定になじまない、申請者固有の手間が特記事項や主治医意見書の記載内容から具体的に認められる場合は、必ずしも一次判定の結果に縛られずに要介護度の変更を認めることができる
つまり、こういうことです
選択項目だけでは表しきれない、その人固有の手間を記録する場所が「特記事項」です。
特記事項や主治医意見書から具体的な手間が認められれば、介護認定審査会の判断で、一次判定と異なる要介護度になることがあります。 制度としてそう設計されています。
だから家族が伝えたいのは、普段の状態を具体的に示す事実です。大げさに伝えることではありません。
手順① 調査の日程を決めるときに伝えること
日程調整の電話がかかってきます。ここが最初の分岐点です。
- 家族が同席できる日にする
- 本人の状態が「普通の日」を選ぶ(デイサービスの直後など、疲れている日は避ける)
- 認知症がある場合、調子の良い時間帯・悪い時間帯を伝えておく
家族は、できるだけ同席してください。 普段の様子を補足できる人がいるかどうかで、伝わる内容が変わります。介護休暇は時間単位で取得できる場合もあります。
難しい場合は、この時点で伝えてください。
「私が同席できるのは平日の夕方以降か、土曜です。調整できますか?」
手順② 1週間分の記録をつける
調査までに、紙に書き出してください。 その場で思い出して話すより、正確に伝わります。
記録するのは3つです。
| 要素 | 例 |
|---|---|
| いつ | 8月3日、8月7日の夜中 |
| 何があったか | 薬を飲み忘れた/夜中に起きて玄関を開けようとした |
| どれくらいの手間か | 飲むまで3回声をかけた/30分かけて落ち着かせた |
3つ目がとくに大切です。 選択項目だけでは表しきれないのが、この部分だからです。
書き方の例
悪い例と良い例を並べます。
| 伝わらない書き方 | 特記事項に書ける書き方 |
|---|---|
| もの忘れがあります | 8月5日、朝食を食べたことを覚えておらず、もう一度作った |
| 歩くのが不安定です | 8月2日と9日に廊下で転倒。7月から週1回は支えが必要 |
| トイレが大変です | 夜間に2〜3回起き、そのたびに付き添いが必要。7月から続いている |
| お風呂を嫌がります | 週2回の入浴を促すのに、毎回30分ほど説得している |
「大変です」は、特記事項に書けません。 調査員は事実を書く必要があるためです。
手順③ 当日は本人の前で否定しない
調査が始まると、本人が「できます」と答える場面が出てきます。実際にはできていなくても、です。
これは取り繕おうとしているわけではなく、本人にとってはそう認識されていることが多い。認知症がある場合は特にそうです。
その場で「できてないでしょ」と言わないでください
本人の自尊心を傷つけます。そして、そのあとの受け答えがかたくなになり、調査全体が正確でなくなります。
代わりに、こう補足してください。
「本人はそう思っていますが、実際は週に2回ほど私が手伝っています」
「できる日もありますが、月の半分くらいは難しいです」
本人を否定せず、事実を足す形にします。 調査員はこうしたやりとりに慣れています。
手順④ 「できる」の中身を具体的に伝える
74項目の多くは「自立・見守り・一部介助・全介助」といった選択肢です。その境目にいる場合、普段の状態を具体的に伝えることで、実態に近い記録につながります。
次の点を補ってください。
- 時間がかかる(着替えに30分かかる)
- 見守りが要る(一人でできるが、目を離すと危ない)
- できる日とできない日がある(週の半分は介助が必要)
- 促さないとやらない(声をかけないと入浴しない)
- 失敗することがある(月に数回、失禁がある)
「できる/できない」の二択では表せない部分が、介護の手間そのものです。
手順⑤ 言いにくいことは別の方法で
本人の前では言いにくいことがあります。失禁、暴言、金銭管理の問題など。
方法は3つです。
メモを渡す
手順②で作った記録を、そのまま渡してください。「本人の前では話しにくいので」と一言添えれば通じます。
別室で話す
「少しだけ、別に伝えたいことがあります」と言えば、時間を作ってもらえます。
伝えきれなかったときの扱いを確認する
調査の最後に、伝えきれなかったことがある場合にどうすればよいかを、調査員に確認しておくと安心です。対応は自治体によって異なります。
いずれの方法でも、普段の生活でどのような介助や見守りが必要なのかを、具体的に伝えることが目的です。
手順⑥ 結果に納得できないときの手段
結果が届いて、実態と違うと感じた場合。方法が2つあります。
| 区分変更申請 | 審査請求 | |
|---|---|---|
| 内容 | 状態が変化した場合に、改めて認定を受ける | 都道府県の介護保険審査会に、前の認定処分が適切だったかを審査してもらう |
| 申請の時期 | 状態が変化した場合は、有効期間中でも申請可能 | 処分を知った日の翌日から3ヶ月以内 |
| 結果が出るまで | 原則30日以内(延期される場合あり) | 数ヶ月かかることがある |
2つは目的が違います。 どちらを選ぶかは状況によって変わるので、詳しくは要介護認定に納得できないときにまとめました。
ただし、下がる可能性もあります
区分変更申請は「重くしてもらう手続き」ではありません。改めて判定し直すので、下がることもあります。
申請する前に、ケアマネジャーに相談してください。前回の調査で何が伝わっていなかったかを整理してから出すほうが確実です。
認定の流れと日数については、要介護認定の申請から結果が出るまでにまとめました。
あわせて知っておきたいこと
主治医意見書も判定に使われます
二次判定では、特記事項と主治医意見書の両方が材料になります。
意見書は市区町村が主治医に直接依頼するので、家族が動く必要はありません。ただ、受診時に「認定を申請しました」と伝えておくと、医師が状態を把握したうえで書けます。
調査員は誰か
新規申請の場合、原則として市区町村の職員か、指定を受けた事業者です。更新申請では、ケアマネジャーなどに委託されることもあります。
調査票は厚生労働省が全国統一で定めています。 自治体によって要介護度がばらつかないよう設計されています。
まとめ|普段の状態を正確に伝える
整理します。
日程は家族が同席できる日に
本人の状態が普通の日を選ぶ。
1週間分の記録をつける
いつ・何が・どれくらいの手間か。3つ目がとくに大切。
本人の前で否定しない
「本人はそう思っていますが、実際は」と事実を足す。
「できる」の中身を伝える
時間がかかる/見守りが要る/日によって違う。
言いにくいことはメモか別室で
伝えきれなかったときの扱いは、調査員に確認しておく。
納得できなければ理由を確かめる
審査請求と区分変更は目的が違う。区分変更は下がる可能性もある。ケアマネジャーに相談を。
認定調査は、試験ではありません。本人と家族の状態を、正確に伝える場です。
そして、伝える相手は調査員というより、その先にいる介護認定審査会です。 特記事項を通して伝わります。
だから「大変です」ではなく、「いつ、何が、どれくらい」で話してください。それが制度に届く形です。
認定が出た後の流れは、ケアマネジャーとの初回面談に書きました。そこでも聞かれることが23項目と決まっています。
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出典・参考
- 厚生労働省「認定調査員テキスト2009(改訂版)」(二次判定による変更が認められる理由/「統計的な推定になじまない、申請者固有の手間が特記事項や主治医意見書の記載内容から具体的に認められる場合は、必ずしも一次判定の結果に縛られずに要介護度の変更を認めることができる」)
- 厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」(要介護認定等基準時間、1分間タイムスタディ、認知症加算)
- 介護保険法 第27条(要介護認定の手続き)
- 基本調査74項目・概況調査・特記事項の構成は、厚生労働省が定める全国共通の調査票による
この記事の情報は2026年8月時点のものです。調査の進め方や調査員の所属は市区町村によって異なります。実際の申請や区分変更については、担当のケアマネジャーまたはお住まいの市区町村の介護保険担当課にご相談ください。

