介護と仕事を辞めずに続ける|働き方を変える5つの制度

この記事の要点

  • 休まずに働き方を変える制度は5つあります。介護休業だけではありません
  • いちばん使いやすいのは残業免除(所定外労働の制限)。介護が終わるまで期間の制限がありません
  • 会社は原則として断れません。断られたら労働局が指導します
  • 短時間勤務は4つの選択肢のうち、会社が選んだものだけが使えます
  • 介護のための在宅勤務は努力義務。育児と違い、義務ではありません

介護と仕事の両立というと、介護休業(93日)の話になりがちです。ただ、実際に必要なのは、まとまった休みよりも「働きながら続けられる形」だと思います。

週に何度か通院に付き添う。夕方には様子を見に行く。夜中に電話がかかってくるかもしれない。この状態で、これまでと同じ働き方は難しい。

制度を調べていくと、休まずに働き方を変える仕組みが5つありました。 そして、その中に「これは強い」と感じたものが1つあります。よくある疑問の形で、順に書いていきます。

目次

時短勤務は会社が選んだ措置だけ

「介護のために時短で働きたい」と考えたとき、最初に知っておくべきことがあります。「短時間勤務が使える」とは限りません。

法律が会社に義務づけているのは、所定労働時間の短縮等の措置です。次の4つのうち、少なくとも1つを用意することが求められています。

措置内容
短時間勤務制度1日の所定労働時間を短くする
フレックスタイム制度始業・終業の時刻を自分で決める
時差出勤始業・終業の時刻を前後にずらす
介護費用の助成介護サービスの費用を会社が補助する

どれを用意するかは、会社が決めます。 労働者が4つの中から選べるわけではありません。

つまり、勤務先がフレックスタイムだけを導入している場合、「短時間勤務にしたい」と申し出ても、制度としては存在しないことになります。

まず、就業規則を確認してください

育児・介護休業規程に、どの措置が書かれているか。ここを見れば、自分の会社で何が使えるかが分かります。社内ポータルか、人事に「介護のための勤務時間の措置は何がありますか」と聞くのが早いです。

期間は連続3年以上で2回以上

法律上の最低ラインは、連続する3年以上の期間で、2回以上利用できることです。

介護休業の93日と比べると、かなり長い。そして分割して使えます。

たとえば、要介護認定を受けた直後の半年と、状態が悪化した2年後の1年。このように、必要な時期に分けて使えます。

会社によっては3年より長く設定していることもあります。これも就業規則で確認してください。

減った賃金の補填は介護にはない

賃金については、正直に書きます。減ります。

短時間勤務にすれば、その分だけ賃金は下がります。そして、介護休業給付金のような公的な補填はありません。

育児の場合は、時短勤務で賃金が下がった際に「育児時短就業給付」がありますが、介護には対応する制度がありません。

収入が減ることを前提に、家計を組み立てる必要があります。介護そのものにかかる費用は、介護にかかるお金の総額にまとめました。

社会保険料は、すぐには下がりません

標準報酬月額は原則として年1回の定時決定で見直されます。賃金が下がっても、保険料が下がるのは数か月後です。

ただし、大きく下がった場合は「随時改定」の対象になることがあります。人事に確認してください。

介護のテレワークは努力義務どまり

在宅勤務については、調べていて意外だった点があります。

2025年4月の法改正で、介護のためのテレワーク導入が事業主の努力義務になりました。 ただし、努力義務です。義務ではありません。

育児のほうは扱いが違います。3歳未満の子を養育する労働者への措置としてテレワークが明記され、2025年10月からは3歳〜就学前の子について「柔軟な働き方の措置を2つ以上」講じることが義務化されました。

育児介護
テレワーク措置の選択肢として義務の枠内努力義務
時短で減った賃金の補填育児時短就業給付ありなし

介護は、育児より制度が薄いのが現状です。 テレワーク制度がすでにある会社なら使える可能性が高いですが、ない会社に「法律で決まっている」と主張することはできません。

その場合は、次に説明する残業免除のほうが確実です。

残業免除に期間の制限はない

これが、5つの中でいちばん強い制度です。

所定外労働の制限(残業免除)といいます。要介護状態の家族を介護している労働者が請求した場合、会社は所定労働時間を超える労働をさせてはならないと定められています。

この制度が強いのは、次の3点です。

内容
期間介護が終わるまで、制限なし(育児は小学校入学まで)
回数1回につき1か月以上1年以内。回数制限なし
会社の対応「事業の正常な運営を妨げる場合」を除き、拒否できない

介護休業の93日と違い、期間の上限がありません。 要介護状態の家族がいる限り、何度でも請求できます。

手続きは、制限開始予定日の1か月前までに書面で請求します。社内様式がなければ、厚生労働省が様式例を公開しています。

対象になるのは、日々雇用を除くすべての労働者です。パート・アルバイト・契約社員も含みます。労使協定で除外できるのは、勤続1年未満の人と、週の所定労働日数が2日以下の人だけです。

この制度を先に検討する理由

短時間勤務は賃金が下がります。残業免除は、所定労働時間はそのまま働くので、基本給は変わりません。 減るのは残業代だけです。

「毎日6時に帰れる」だけで回る状況なら、短時間勤務より先にこちらを検討する価値があります。

夜勤と深夜業にも制限をかけられる

夜間の勤務についても、2つの制度があります。

時間外労働の制限

請求すれば、1か月24時間、1年150時間を超える法定時間外労働をさせてはならないことになっています。

残業免除(所定外労働の制限)が「残業ゼロ」なのに対し、こちらは「上限を設ける」制度です。まったく残業できないと業務が回らない場合の選択肢になります。

深夜業の制限

午後10時から午前5時までの労働を制限できます。1回につき1か月以上6か月以内、回数制限はありません。

夜勤のある職場で、夜間に介護が必要な家族がいる場合に使えます。

断られたときの相談先は労働局

前提として、制度の利用を理由とする不利益な取扱いは法律で禁止されています。 解雇、降格、減給、不利益な配置転換。いずれも認められません。

それでも断られた場合の相談先は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。無料で相談でき、会社への指導も行われます。

指導に従わない場合、企業名が公表されることがあります。虚偽の報告などには20万円以下の過料が定められています。

ただ、いきなり労働局に行く前に、社内の窓口を試してください。 2025年4月から、介護に直面したと申し出た社員に対して、会社が制度を説明し意向を確認することが義務になっています。担当者が制度を知らないだけ、というケースも少なくありません。

切り出し方は会社に介護を伝えるタイミングと伝え方にまとめています。

検討する順番はこの5つ

状況によりますが、優先度をつけるとこうなると思います。

  1. 残業免除(所定外労働の制限)

    基本給が減らず、期間の制限もありません。 定時で帰れれば回る状況なら、まずここから。1か月前までに書面で請求します。

  2. 時差出勤・フレックスタイム

    会社が導入していれば、賃金を減らさずに時間帯をずらせます。朝の送り出しや、夕方のデイサービスのお迎えに合わせられます。

  3. 短時間勤務

    賃金は減りますが、確実に時間が作れます。連続3年以上の期間で2回以上使えます。 通院の付き添いが多い時期などに。

  4. 介護休暇(年5日)

    単発の用事に。当日の朝でも、口頭で申し出られます。介護休暇と介護休業の違いで詳しく書きました。

  5. 介護休業(93日)

    体制を作るためのまとまった時間が必要なとき。給付金は賃金の67%ですが、社会保険料は免除されません。

まとめ|辞める前に確認したいこと

介護を理由に仕事を辞める方は、年間で10万人前後いるとされています。その多くは、制度を知らないまま判断しています。

整理します。

  • 残業免除は、介護が終わるまで無期限で請求できる
  • 会社は原則として断れない。断られたら労働局へ
  • 短時間勤務は、会社が用意した措置しか使えない
  • 介護のテレワークは努力義務。育児より制度が薄い
  • 時短で減った賃金の補填は、介護にはない

すべてを使う必要はありません。いま足りないのが「時間」なのか「収入」なのか「体力」なのかで、選ぶ制度が変わります。

まず就業規則の育児・介護休業規程を開いて、自分の会社に何があるかを見てください。そこにない制度は使えませんが、法律で決まっているものは、書かれていなくても請求できます。 残業免除がその代表です。

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出典・参考

  • 育児・介護休業法 第16条の8(所定外労働の制限)、第18条(時間外労働の制限)、第20条(深夜業の制限)、第23条第3項(所定労働時間の短縮等の措置)
  • 厚生労働省 介護休業制度特設サイト「所定外労働の制限(残業免除)」(1回につき1か月以上1年以内、回数制限なし、1か月前までに書面で請求)
  • 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(2025年4月・10月施行分/介護のためのテレワーク等の導入の努力義務化、介護休暇の要件緩和、個別周知・意向確認の義務化)

この記事の情報は2026年8月時点のものです。社内の制度や運用は会社によって異なります。実際の手続きは、勤務先の就業規則または人事担当にご確認ください。制度の利用について会社と折り合いがつかない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にご相談ください。

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