介護で休むときの使い分け|有給を減らさない4つの選択

この記事の要点

  • 介護のために休む手段は4種類あります。使い分けると有給が減りません
  • 介護休暇は当日の申し出も可能です。口頭でも認められています
  • 時間単位年休と、介護休暇の時間単位取得は「別の制度」です
  • だから両方を請求できます。会社はどちらも認める必要があります
  • 介護休暇は無給の会社が多い。そこだけ確認してください

親の通院に付き添う。ケアマネジャーとの面談に立ち会う。認定調査の日に家にいる。

介護で休むのは、1日単位ではないことが多い。 午前だけ、2時間だけ、という休み方が必要になります。

ところが多くの方が、そのたびに有給を1日使っています。そして年度の途中で有給が尽きます。

調べてみると、使い分けられる制度が4つありました。 よくある疑問の形で書きます。

目次

介護で休む手段は4種類

まず全体像を並べます。

制度日数単位給与
年次有給休暇勤続年数による1日/半日有給
時間単位年休年5日まで
(有給のうちから)
1時間有給
介護休暇年5日
(対象家族2人以上で10日)
1日/時間単位
※労使協定により時間単位取得の対象外となる場合あり
会社の規定による
介護休業通算93日
(3回まで分割)
まとまった期間給付金67%

4つ目の介護休業は、性質が違います。 短時間の用事ではなく、介護の体制を整えるためのまとまった休みです。

介護休暇と介護休業の違いは、こちらの記事に詳しくまとめました。

介護休暇は当日の申し出もできる

ここは、有給休暇と扱いが違います。

年次有給休暇介護休暇
申し出の方法就業規則の定めによる口頭でも可
タイミング事前が原則当日の申し出も可能
会社が日を変更できるかできる(時季変更権)時季変更権の規定はない

厚生労働省は、介護休暇の申し出について口頭でも差し支えないとしています。当日の申し出も想定されています。

「今日、母の体調が悪いので介護休暇を取ります」

この一言で伝わります。

ただし、会社の手続きは確認してください

厚生労働省は、会社に所定の様式がある場合は、それを使うことも案内しています。

口頭で申し出たあと、書面の提出を求められることがあります。事前に就業規則を見ておくと、当日あわてません。

時季変更権との関係

年次有給休暇には、会社が取得日を変更できる時季変更権があります(労働基準法39条5項)。事業の正常な運営を妨げる場合に限られますが、制度としては存在します。

介護休暇には、この規定がありません。

介護休暇は育児・介護休業法で認められた制度で、有給休暇のように会社が取得日を変更させる仕組みにはなっていません。

もし「その日は忙しいから」と言われた場合、制度が違うことを伝えたうえで、人事や総務に確認してみてください。

時間単位年休と介護休暇は別の制度

ここが、この記事でいちばん重要な部分です。

どちらも「1時間単位で休める」のですが、根拠になる法律が違います。

時間単位年休介護休暇の時間単位取得
根拠労働基準法39条4項育児・介護休業法
上限年5日まで年5日(家族2人以上で10日)
給与有給会社の規定による
導入労使協定が必要法律上の義務。どの会社にもある
使える理由何でもよい介護に関する用事

両方を請求できます

厚生労働省は、介護休暇は年次有給休暇とは別に取得させなければならないとしています。

時間単位についても同じです。「時間単位年休」と「介護休暇の時間単位取得」は根拠となる法律が異なるため、どちらも対象となる労働者がそれぞれを請求した場合、会社は両方の取得を認める必要があります。

つまり、有給を使い切った=介護のための時間休も全部なくなった、ではありません。

会社の担当者もここを混同していることがあります。「別の制度です」と伝えてみてください。

時間単位年休は、会社にない場合があります

時間単位年休は労使協定を結んだ会社でしか使えません。 法律上の義務ではないためです。

厚生労働省の調査では、導入している企業は限られています。従業員99人以下の中小企業で22.9%、300〜999人規模で17.0%といった水準です。

一方、介護休暇は法律上の制度です。 企業規模を問わず、どの会社にも定めがあります。

ただし、対象外にできる労働者がいます

労使協定によって、次の方は介護休暇の対象から除外できるとされています。

  • 週の所定労働日数が2日以下の方
  • 時間単位での取得が困難な業務に従事する方(時間単位のみ対象外。1日単位では取得できます)

なお、2025年4月の改正で「継続雇用6ヶ月未満」を除外する規定は撤廃されました。 入社直後でも取得できます。

自分が対象になるかは、就業規則か人事に確認してください。

それでも、「時間単位で休みたい」という場面では、介護休暇の時間単位取得のほうが確実な場合が多い。 時間単位年休は労使協定がなければ使えないためです。

どう使い分けるか

場面ごとに整理します。

場面向いている制度
通院の付き添い(半日)介護休暇(時間単位)
ケアマネジャーとの面談(2時間)介護休暇(時間単位)
認定調査の立ち会い(1〜2時間)介護休暇(時間単位)
役所や銀行の手続き(午前だけ)時間単位年休、または介護休暇
入院の付き添い(1日)介護休暇(1日)
施設の見学(1日)介護休暇、または有給
退院後の体制づくり(数週間)介護休業
自分の休養有給

考え方は単純です。介護の用事は介護休暇、自分のための休みは有給。

これを分けるだけで、有給が減りません。そして有給を残しておくと、いざ倒れたときに使えます。

介護休暇は無給の会社が多い

ここは正直に書きます。

介護休暇を有給とする義務は、法律上ありません。 会社の規定によります。そして、無給としている会社が多い。

まず就業規則を確認してください

無給なら、その分の給与が減ります。年5日すべて使うと、月給30万円の方なら1日あたり約1万4,000円×5日=約7万円の差になります。

ただし、時間単位で使えば影響は小さくなります。 2時間だけなら、減るのは2時間分です。

そして有給を1日使うより、介護休暇を2時間使うほうが、有給を守れます。 どちらが得かは、その年の有給の残りで変わります。

確認する順番

  • 介護休暇は有給か無給か(就業規則、または人事に確認)
  • 時間単位年休の制度があるか(労使協定があるかどうか)
  • 介護休暇の申請方法(口頭でよいか、様式があるか)
  • いまの有給の残日数

この4つが分かれば、その年の使い方が決まります。

会社に制度がないと言われたら

介護休暇は法律で定められた制度です。 就業規則に書かれていなくても、対象であれば取得できます。

対象になるのは、次の条件を満たす方です。

  • 要介護状態の対象家族がいる
  • 週の所定労働日数が3日以上(労使協定で除外できるのは週2日以下の方)

先ほど触れたとおり、2025年4月の改正で「継続雇用6ヶ月未満」を除外する規定は撤廃されました。 入社直後でも取得できます。

2025年4月から、会社に義務が加わりました

改正育児・介護休業法により、労働者が介護に直面した旨を申し出た場合、会社は制度を個別に知らせ、取得の意向を確認する義務を負っています。

さらに40歳時点での早期の情報提供も義務になりました。

相談したのに何の案内もない場合、この点を伝えてみてください。

「2025年4月の法改正で、介護に直面した社員への個別周知が義務になったと聞きました。使える制度を教えていただけますか?」

会社への伝え方は、会社に介護を伝えるタイミングと伝え方にまとめました。

要介護認定がなくても使える

これも誤解の多い点です。

介護休暇・介護休業の条件は「常時介護を必要とする状態」であることで、要介護認定を受けていることではありません。

厚生労働省が判断基準を示しており、要介護2以上ならおおむね該当しますが、それ未満でも状態によっては認められます。

認定結果が出るまで平均39日かかります。待たずに申し出てください。

対象になる家族の範囲

意外に広いです。

  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母、子
  • 配偶者の父母
  • 祖父母、兄弟姉妹、孫

同居・扶養の要件は2017年に撤廃されました。 別居の親も、配偶者の父母も対象です。

そして「対象家族1人につき」なので、父と母それぞれに介護休業93日を使えます。介護休暇も、対象家族が2人以上なら年10日になります。

5日を使い切ったら

年5日では足りない、という状況が出てきます。そのときの選択肢です。

働き方を変える制度

制度内容
所定外労働の制限残業免除。介護が終わるまで期間の制限なし。基本給は減らない
時間外労働の制限月24時間・年150時間まで
深夜業の制限1回1ヶ月以上6ヶ月以内
所定労働時間の短縮等4つのうち会社が選んだものを使える

いちばん強いのが「所定外労働の制限」です。

  • 期間の制限がない(育児の制度は小学校入学までですが、介護は終わるまで)
  • 回数制限なし
  • 会社は「事業の正常な運営を妨げる場合」を除き拒否できない
  • 基本給が減りません(減るのは残業代だけ)

詳しくは介護と仕事を辞めずに続けるにまとめました。

介護サービスを増やす

休みを増やすより、そもそも休まなくて済む形を作るほうが続きます。

通院の付き添いが負担なら、訪問介護や介護タクシーを使う方法があります。日中の見守りが必要ならデイサービスを増やす。

ケアマネジャーに、勤務時間と休日を正確に伝えてください。 それがケアプランの前提になります。

アセスメントの23項目には「家族等の状況」が含まれています。伝えるのは制度上の前提です。詳しくはケアマネジャーとの初回面談をご覧ください。

時間単位年休は見直しが議論されている

この上限について、動きがあります。

2024年12月の規制改革推進会議の中間答申で、時間単位年休の上限を「年次有給休暇の付与日数の50%程度」に緩和することを含めて検討する方針が示されました。

これを受けて、厚生労働省の労働政策審議会(労働条件分科会)で審議が続いています。

2026年9月時点では、まだ決まっていません

労働基準法の改正案に盛り込む方向で議論されていますが、法案の成立にも施行時期にも至っていません。

「上限が広がる」という記事を見かけることがありますが、現時点ではまだ年5日が上限です。 現行制度を前提に考えてください。

議論の背景には、通院や育児・介護をしながら働く人のニーズが挙げられています。動きがあれば、この記事も更新します。

まとめ|介護の用事は介護休暇で

整理します。

  • 介護で休む手段は4種類
  • 介護休暇は当日の申し出も可能。口頭でも認められる
  • 時間単位年休と介護休暇の時間単位取得は別制度。両方使える
  • 介護休暇は無給の会社が多い。就業規則を確認
  • 要介護認定を待たずに使える
  • 5日で足りなければ所定外労働の制限を検討

いちばん大事なのは、介護の用事と自分の休みを分けることです。

すべて有給で処理していると、年度の途中で尽きます。そして自分が倒れたときに休めなくなります。

まずは就業規則を開いて、介護休暇が有給か無給か、時間単位年休の制度があるかを確認してください。それだけで、次から選べるようになります。

関連記事

出典・参考

  • 労働基準法 第39条第4項(時間単位年休。労使協定により年5日以内)
  • 育児・介護休業法/同法施行規則(介護休暇:年5日、対象家族2人以上で10日。2021年1月1日から1時間単位での取得が可能)
  • 厚生労働省「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」
  • 厚生労働省「年次有給休暇の現状について」(時間単位年休の導入率:従業員99人以下22.9%、300〜999人規模17.0%)
  • 内閣府 規制改革推進会議「規制改革推進に関する中間答申」(2024年12月25日/時間単位年休の上限を付与日数の50%程度に緩和することを含む見直しの検討)/厚生労働省 労働政策審議会 労働条件分科会での審議(2026年9月時点で法改正に至っていない)
  • 厚生労働省「介護休暇について」(口頭での申し出も差し支えないこと、会社所定の様式がある場合の取扱い、労使協定により除外できる労働者の範囲)
  • 改正育児・介護休業法(2025年4月施行/介護に直面した労働者への個別周知・意向確認の義務化、40歳時点での情報提供、入社6ヶ月未満の除外規定の撤廃)

この記事の情報は2026年9月時点のものです。介護休暇の有給・無給の扱い、時間単位年休の有無、申請の方法は会社によって異なります。実際の取得については、勤務先の就業規則または人事・総務にご確認ください。

目次