この記事にはプロモーション(広告)を含みます。公的な制度と無料でできる方法を先に紹介し、民間サービスの注意点も併せて記載しています。
この記事の要点
- 厚生労働省は「身元保証人がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない」としています
- 介護保険施設には、身元保証人を求める法令上の規定がありません
- ただし有料老人ホームやサ高住は民間契約。実務では求められます
- 施設が求めているのは「連絡先」「支払い」「退所後の対応」の3つです
- 民間の身元保証サービスは、過去に破産の事例があります。慎重に選んでください
施設の申し込みをしようとしたら、「身元保証人はどなたですか」と聞かれた。
きょうだいはいない。子どもは自分だけで、遠方に住んでいる。頼める親族が見つからない。これでは入れないのだろうか。
調べてみると、制度の建前と、実務の運用が食い違っている領域でした。順に整理します。
手順① 施設の種類を確認する
まず、ここで扱いが変わります。
| 施設 | 身元保証人の扱い |
|---|---|
| 介護保険施設 (特養・老健・介護医療院) | 法令上の規定なし。いないことを理由に断れない |
| 有料老人ホーム | 民間契約。実務ではほぼ求められる |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 民間契約。実務ではほぼ求められる |
| グループホーム | 施設による |
公的な施設と民間の施設では、立場がまったく違います。
施設の種類と費用は、老人ホームの費用相場にまとめました。
手順② 厚労省の通知を知っておく
ここが、この記事でいちばん重要な部分です。
2018年3月の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議の資料に、こう書かれています。
介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はない。また、各施設の基準省令において、正当な理由なくサービスの提供を拒否することはできないこととされており、入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない
さらに、都道府県に対してこう求めています。
管内の介護保険施設が、身元保証人がいないことのみを理由に入所を拒むことや退所を求めるといった不適切な取扱を行うことのないよう、適切に指導・監督を行っていただきたい
「不適切な取扱」と明記されています。 施設側にも、都道府県の指導対象になるという認識があります。
病院も同じです
2018年4月、厚生労働省医政局が通知を出しています。身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒否することは、医師法第19条の応召義務に照らして問題があるという内容です。
あわせて「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」も公表されています。
入院時の動き方は、親が入院したときにまとめました。
伝え方
断られたとき、こう聞いてみてください。
「厚生労働省の通知で、身元保証人がいないことは入所を断る正当な理由に該当しないとされていると聞きました。代わりにどのような形であれば対応できますか?」
争う姿勢ではなく、「代わりに何ができるか」を聞く形がいい。 施設側も困っていることが多いためです。
手順③ 施設が求めている3つを分解する
「身元保証人」という言葉は、実は複数の役割をまとめた呼び方です。
施設が求めているのは、主にこの3つです。
| 役割 | 具体的に何を求めているか |
|---|---|
| ① 緊急時の連絡先 | 夜間・休日を含めて連絡がつく相手 |
| ② 支払いの保証 | 利用料が滞ったときの担保 |
| ③ 退所後の対応 | 退所時の身柄の引き取り、亡くなった場合の遺体・遺品の引き取り |
「保証人」という肩書きがなくても、この3つに答えられれば話は進みます。
だから、こう伝えるほうが建設的です。
「連絡先は私です。支払いはこの口座から自動で引き落とします。退所後のことはこう考えています」
「保証人がいません」で止まらず、3つそれぞれについて答えを用意する。 これが実務上、最も効きます。
手順④ 公的な仕組みから確認する
民間サービスを探す前に、使える制度があります。
成年後見制度
判断能力が低下している場合、家庭裁判所が選んだ後見人が財産管理や契約を行います。
後見人は「身元保証人」にはなれません
ここは誤解されやすい点です。
成年後見人は、本人の財産から利用料を支払うことはできますが、保証人として自分の財産で債務を負うことはできません。
ただし、後見人がついていることで施設が受け入れるケースは多くあります。支払いが確実になり、契約の相手方がはっきりするためです。
成年後見については認知症で親の口座は凍結されるのかに書きました。親族が後見人に選ばれる割合は約2割という点も含めて整理しています。
日常生活自立支援事業
社会福祉協議会が行う事業です。判断能力が不十分でも、契約内容を理解できれば利用できます。
- 通帳や印鑑の預かり
- 日常的な支払いの代行
- 福祉サービスの利用援助
費用は1回数百円から1,500円程度。 成年後見より軽い仕組みです。
自治体の事業
一部の市区町村が、身寄りのない高齢者向けの支援事業を始めています。名称や内容は自治体によって違います。
国民生活センターも、「自治体が高齢者を支援するサービスを実施している場合もあるため、まずはお住まいの地域のサービスについて調べてみましょう」と案内しています。
「身寄りがない場合の支援について、市の制度はありますか?」
窓口は地域包括支援センターか、市区町村の高齢者福祉担当課です。
手順⑤ 民間サービスを検討する前に知っておくこと
公的な仕組みで足りない場合、民間の身元保証サービスが選択肢になります。
ただし、この業界には過去にトラブルがあります。 先にそこを書きます。
2016年に、大手事業者が破産しています
2016年4月、公益財団法人日本ライフ協会が破産手続開始の決定を受けました。 契約していた高齢者が、サービスの提供も預託金の返還も受けられない被害が発生しました。
国民生活センターには、次のような相談が寄せられています。
- 解約時の預託金の返金をめぐるトラブル
- 法外な違約金を請求された
- 預託金が事業者の運営費に流用されている疑い
- 数百万円の預託金の管理体制について説明がない
こうした経緯から、2024年6月に国が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しました。(内閣官房・内閣府・金融庁・消費者庁・総務省などが連携)
確認すべき5つのこと
ガイドラインを踏まえると、次の点が判断材料になります。
- 預託金が事業者の資産と分けて管理されているか(信託銀行での分別管理など)
- サービス内容と支払総額が、書面で明確になっているか
- 解約の条件と、返金の計算方法が示されているか
- サービスが実施されたことを確認する方法があるか
- ガイドラインを遵守していると明示しているか
1つ目が最も重要です。 預託金が事業者のお金と混ざっていると、経営が傾いたときに戻りません。
消費者庁も「「身元保証」や「お亡くなりになられた後」を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ(ポイント集)」を公表しています。契約前に目を通す価値があります。
民間サービスを使う場合
おひさぽ(身元保証・終活サポート)
身元保証から死後の事務手続きまでを引き受けるサービスです。主な内容は次のとおりです。
- 入院・施設入所時の身元保証
- 緊急時の対応(土日祝を含む24時間)
- 財産管理の支援
- 死後の事務手続き(葬儀、納骨、各種の解約)
事業者側は、信託銀行での預託金の分別管理と、国のガイドラインを踏まえた運営体制を説明しています。全国15拠点で対応しているとのことです。
※申し込み後、担当者から電話で確認の連絡があります。連絡が取れる時間帯を想定して申し込んでください。
※契約は長期にわたり、金額も小さくありません。資料を取り寄せたうえで、上の「確認すべき5つのこと」に照らして検討してください。他社と比較することも勧めます。
※まず自治体の制度と、施設への直接の相談を済ませてからで十分です。公的な仕組みで足りる場合があります。
※契約内容に不安があるときは、消費者ホットライン188または地域包括支援センターにご相談ください。
手順⑥ それでも断られたときの相談先
通知を示しても受け入れられない場合があります。
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 市区町村の介護保険担当課 | 介護保険施設への指導・監督の窓口 |
| 都道府県の介護保険担当課 | 特養・老健・介護医療院の指定権者 |
| 地域包括支援センター | 無料。ほかの施設の紹介も含めて相談できる |
| ケアマネジャー | 施設との調整 |
| 消費者ホットライン188 | 民間サービスの契約トラブル |
介護保険施設への指導・監督の権限は、都道府県と市区町村にあります。 通知でも、そこに指導を求めています。
ただ、最初から行政に持ち込むより、まず施設と話すほうが早いことが多い。 施設側も断りたくて断っているわけではなく、支払いや退所後の対応に不安があるだけ、という場合が大半です。
いま準備しておけること
親がまだ元気なら、先に整えておける部分があります。
- 緊急時の連絡先を決めておく(子が遠方でも、連絡がつけば足りることが多い)
- 利用料の引き落とし口座を決めておく
- 任意後見契約を検討する(判断能力があるうちにしかできません)
- 葬儀や納骨の希望を聞いておく
- 親族の連絡先を一覧にしておく
話の切り出し方は、介護の話をどう切り出すかに書きました。手続きの情報から聞き、意思の話は後回しにするのが順番です。
まとめ|まず施設に聞くこと
整理します。
施設の種類を確認する
介護保険施設なら、いないことを理由に断れません。
厚労省の通知を知っておく
「拒否する正当な理由には該当しない」。ただし争わず、代替案を聞く。
3つの役割に分解する
連絡先・支払い・退所後の対応。それぞれに答えを用意する。
公的な仕組みを確認する
成年後見、日常生活自立支援事業、自治体の事業。
民間サービスは慎重に
預託金の分別管理を確認。過去に破産の事例があります。
断られたら行政に相談
指導・監督の権限は都道府県と市区町村にあります。
「身元保証人がいないから入れない」は、制度上は正しくありません。
ただ、実務では求められます。だからこそ、「保証人はいないが、この3つには答えられる」という形を作ることが、いちばん現実的な解決になります。
まず施設に、こう聞いてください。
「身元保証人を立てられないのですが、どのような形であれば対応していただけますか?」
この一言で、話が進むことがあります。 施設が求めている中身を教えてもらえるからです。
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出典・参考
- 厚生労働省「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料」(平成30年3月6日/「介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はない」「入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない」)
- 厚生労働省医政局医事課長通知「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(平成30年4月27日)
- 厚生労働省老健局高齢者支援課・振興課通知「市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応について」(平成30年8月30日/2025年7月30日に一部改正。「高齢者等終身サポート事業」へ名称変更)
- 厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」
- 内閣官房・内閣府・金融庁・消費者庁・総務省ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)
- 独立行政法人国民生活センター 報道発表資料(令和元年5月30日/日本ライフ協会の破産による消費者被害、預託金をめぐるトラブル)
- 消費者庁「いわゆる「高齢者等終身サポート事業」の利用に関する注意点」
この記事の情報は2026年9月時点のものです。当サイトは法律事務所ではなく、記載内容は個別の法的判断を目的としたものではありません。施設ごとの運用や自治体の支援制度は異なります。民間サービスの内容・料金・預託金の管理方法は事業者によって異なるため、契約前に必ず書面でご確認ください。契約に不安がある場合は、消費者ホットライン188または地域包括支援センターにご相談ください。

