この記事の要点
- 2025年4月から、伝えた社員に制度を説明することが会社の義務になった
- 逆に言えば、伝えるまで会社は動けない。黙っていると何も始まらない
- 家庭の事情を細かく話す必要はない。「介護に直面した」と伝えるだけでいい
- 申し出たことを理由に不利益な扱いをすることは、法律で禁止されている
- 伝えるのは要介護認定を申請した頃が目安。限界が来てからでは遅い
親の介護が始まったとき、会社に言うかどうかで迷う人はとても多いようです。
「評価に響くのでは」「気を使わせたくない」「まだ大丈夫かもしれない」。そう考えているうちに、状況が進んでいきます。
ただ、制度の作りを知ると、判断が変わります。 この記事では、よくある相談の形に沿って書きます。
「そもそも、言ったほうがいいんでしょうか」
言ったほうがいいです。 理由は、制度の仕組みにあります。
2025年4月に育児・介護休業法が改正され、介護に直面したことを申し出た従業員に対して、会社が制度を個別に説明し、利用の意向を確認することが義務になりました。
つまり、あなたが伝えた時点で、会社側には次の対応義務が発生します。
- 介護休業や両立支援制度の内容を説明する
- 制度を使う意向があるか確認する
- 制度の利用を控えさせるような説明は認められない
申し出が、すべての起点になっています。
裏を返せば、黙っていれば会社は何もできません。 制度があっても、動き出しません。
「いつ伝えるのがいいですか」
目安は、要介護認定を申請したころです。
「もう限界です」と伝える段階では、選べる手が減っています。まだ余裕があるうちに伝えるほうが、調整の幅が広い。
早く伝えることの利点
- 業務の引き継ぎを、時間をかけて準備できる
- 制度の説明を受け、使えるものを把握できる
- 急な休みが出たときに、周囲が事情を理解している
逆に、遅れると
- 突然の欠勤が続き、信頼を損なう
- 制度を知らないまま、退職を選んでしまう
介護離職の多くは、制度を知らないまま起きています。 会社が説明する義務を負っている以上、伝えないのは損です。
「誰に言えばいいですか」
直属の上司が基本です。ただ、言いにくい場合は、人事や総務に直接相談しても構いません。
2025年4月の改正では、会社に相談体制の整備も義務づけられました。 具体的には、次のいずれかを実施することになっています。
- 介護休業や両立支援制度に関する研修の実施
- 相談窓口の設置
- 制度を利用した社員の事例収集・提供
- 制度利用を促す方針の周知
あなたの会社にも、窓口があるかもしれません。 就業規則や社内ポータルを確認するか、人事に「介護の相談窓口はありますか」と聞いてみてください。
「どこまで話す必要がありますか」
細かい家庭の事情を話す義務はありません。
伝えるべきことは、実質的にこの2つです。
- 介護に直面していること
- 仕事にどんな影響が出そうか(急な早退の可能性、通院の付き添いなど)
親の病名、家族関係、経済状況などを説明する必要はありません。話したくないことは話さなくていいと考えて構いません。
ただし、業務調整のために「いつ、どのくらい抜ける可能性があるか」は、できるだけ具体的に伝えたほうがお互いに楽です。
「評価が下がるのが怖いのですが」
その不安はもっともですが、法律上、不利益な取扱いは禁止されています。
介護休業や介護休暇の申し出・取得を理由に、解雇、降格、減給、不利益な配置転換などを行うことは認められていません。
改正法でも、制度の利用を控えさせるような個別周知・意向確認は認められないと明記されています。「使わないほうがいいよ」という言い方自体が問題になります。
現実的な話
とはいえ、法律があっても、職場の空気は別だという声もあると思います。
そのときは、社外の窓口を使うという選択肢があります。都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)では、こうした相談を無料で受け付けています。
「何と言えばいいか分かりません」
そのまま使える形で書きます。
上司に切り出すとき
「母の介護が始まりそうで、今後の働き方についてご相談したいのですが、少しお時間いただけますか」
最初は「相談」の形で構いません。 いきなり休業を申し出る必要はありません。
具体的に伝えるとき
「先週、要介護認定を申請しました。認定が下りるまで1か月ほどかかります。その間、平日に手続きで抜ける日が出るかもしれません」
「今のところ通常勤務は可能ですが、急な呼び出しがある可能性があります。その場合の対応を相談させてください」
制度について聞くとき
「介護休業や介護休暇について、うちの規定を教えていただけますか」
この一言で、会社側の説明義務が動き出します。 詳しく知らない上司なら、人事に確認してくれるはずです。
「まだ介護は始まっていませんが、備えられますか」
できます。しかも、会社側にも動きがあります。
改正法では、40歳になった従業員に対して、介護休業制度などの情報を早期に提供することも義務づけられました。
40歳は介護保険の被保険者になる年齢です。まだ介護に直面していない段階から、制度を知らせる仕組みが作られています。
まだ案内を受けていない場合でも、就業規則の育児・介護休業規程を読んでおくと、いざというときに慌てません。
「伝えたあと、何をすればいいですか」
会社から制度の説明があるはずです。そのうえで、次の3点を確認しておいてください。
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| 介護休業・介護休暇の日数と申請方法 | 使えるものを把握する |
| 短時間勤務、時差出勤、在宅勤務の可否 | 休むより続けやすい形を探す |
| 急な休みが出たときの連絡先と手順 | 当日の混乱を防ぐ |
「休む」以外の選択肢を先に確認してください。 制度の使い方を知らないまま「もう辞めるしかない」と判断してしまうのが、いちばん避けたい流れです。
迷っている方へ
伝えることで、状況が悪くなることは制度上ありません。むしろ、伝えなければ会社は何もできない作りになっています。
まずは「相談したいことがあります」と言うだけで十分です。そこから先は、会社側が説明する義務を負っています。
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出典・参考
- 厚生労働省「令和6年 育児・介護休業法改正の概要」(2025年4月1日施行)
- 厚生労働省 両立支援等助成金ポータル「事業主の方々へのお役立ち情報」
- 育児・介護休業法 第21条、第25条ほか
この記事の情報は2026年8月時点のものです。社内の制度や運用は会社により異なります。実際の手続きは、勤務先の就業規則または人事担当にご確認ください。

