この記事の要点
- 中抜けの処理方法は、法律で一律に定められていません。会社が就業規則等で定めます
- 厚労省の調査では、テレワーク中に中抜けをしている人が半数以上でした
- 在宅勤務は「介護をするための時間」ではありません
- テレワークだけでは両立できません。介護保険サービスとの組み合わせが要ります
- まず就業規則で、中抜けの扱いを確認してください
「在宅勤務にすれば、介護と両立できるのでは」
そう考える方は多いと思います。通勤時間がなくなり、家にいられる。デイサービスの送り出しも、宅配の受け取りもできます。
ただ、調べてみると思っていたのと違う点が4つありました。順に書きます。
驚いた事① 中抜けの処理方法は会社ごとに違う
在宅勤務で介護をしていると、業務時間中に席を離れる場面が必ず出てきます。
- デイサービスの送り出しと出迎え
- 昼食の準備
- トイレの介助
- 訪問介護のヘルパーへの対応
- 転倒したときの対応
これを中抜けといいます。
そして、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」に、こう書かれています。
中抜け時間については、労働基準法上、使用者は把握することとしても、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握することとしても、いずれでもよい
法律で一律の処理方法が定められているわけではなく、会社が就業規則等で取扱いを定めます。
| 会社の対応 | 扱い |
|---|---|
| 中抜け時間を把握する | その時間は「働いていない」時間として扱われる |
| 始業・終業時刻のみを把握する | 中抜け時間を含めて、始業から終業までを労働時間として扱う |
この違いは大きい。
中抜け時間を把握する場合、その時間を休憩や時間単位の年次有給休暇として扱うなど、会社が定めた方法で処理します。
一方、始業・終業時刻のみを把握する方法を採る場合は、中抜け時間を含めて労働時間として扱われます。
就業規則を先に確認してください
「在宅なら少しくらい抜けても大丈夫だろう」と自己判断で始めると、あとで問題になることがあります。
会社がどちらのルールを採っているかを、先に確認してください。
「在宅勤務中に中抜けが発生した場合、どのように処理すればよいですか?」
会社の就業規則や在宅勤務規程などで確認できる場合があります。
驚いた事② 半数以上が中抜けしている
厚生労働省が2024年9月から10月にかけて行った「労働時間制度等に関する実態調査」があります。
| 調査対象 | 結果 |
|---|---|
| 労働者5,505名 | テレワーク中に中抜けをしている人が半数以上(2時間以上の中抜けも) |
| 事業所4,921か所 | 通常の労働時間制度を適用している事業所の16.9%が中抜け時間を管理していない |
自己申告による管理まで含めると、8割を超える事業所が、客観的な記録以外の方法で管理しているとされています。
中抜けは、珍しいことではありません。
そして、この調査からは中抜け時間の管理方法が会社によって異なることが分かります。
ただし、黙って抜けるのとは違います
会社が中抜けを管理していないとしても、業務に支障が出れば問題になります。
大事なのは、あらかじめ伝えておくことです。
「火曜と木曜の9時前後、デイサービスの送り出しで15分ほど席を外します」
予定が分かっている中抜けは、先に共有しておく。それだけで、信頼の問題にはなりません。
驚いた事③ 在宅勤務は「介護の時間」ではない
ここが、いちばん見落とされやすい点です。
在宅勤務中の業務時間は、業務時間です。 介護をするための時間ではありません。
ところが、家にいると次のことが起きます。
- 親が何度も声をかけてくる
- 「家にいるんだから」と用事を頼まれる
- 訪問介護を頼んでいたことを、自分でやってしまう
- デイサービスの回数を減らしてしまう
結果として、仕事にも介護にも集中できなくなります。
サービスを減らす前に確認してください
在宅勤務になったからといって、すぐに介護サービスを減らすのではなく、仕事中に必要な支援が確保できているかを確認してください。
「家にいるから自分でできる」と考えると、仕事の生産性が落ち、その分を夜や休日に取り戻すことになりかねません。
サービスの内容を見直す場合も、まずケアマネジャーに相談してください。 勤務時間帯と、その間に必要な支援を整理してから判断できます。
親に伝えておくこと
家にいると、親は「仕事中」だと認識しにくくなります。
- 仕事の時間を具体的に伝える(9時から18時は仕事、など)
- ドアを閉める、部屋を分ける
- 「この時間は声をかけないで」を、紙に書いて貼る
- 休憩時間を決めて、そこで対応する
認知機能の低下がある場合には、口頭だけでなく、目に入る場所に予定を書いておくことが役立つ場合があります。
意思疎通が難しくなっている場合の対応は、こちらの記事にまとめました。
驚いた事④ テレワークだけでは両立できない
これは、複数の解説で共通して指摘されている点です。
テレワークにしただけでは、介護と仕事の両立が難しい場合があります。 両立支援制度や介護保険制度と組み合わせることで、はじめて成り立つとされています。
組み合わせる制度
| 制度 | 効くところ |
|---|---|
| 所定外労働の制限 | 残業免除。介護が終わるまで期間の制限なし |
| フレックスタイム制 | 始業・終業を自分で決められる |
| 時差出勤 | 朝の送り出しや夕方の出迎えに合わせられる |
| 短時間勤務 | 所定労働時間を短くする(給与は減る) |
| 介護休暇 | 時間単位で取得できる。年5日 |
所定外労働の制限は、介護と仕事を両立するうえで確認しておきたい制度の一つです。 残業が免除され、介護が終わるまで期間の制限がありません。
この制度を使うこと自体によって基本給が減ることはありません。ただし、残業代は発生しなくなります。 また、短時間勤務など他の制度を併用する場合は、その内容によって給与が変わることがあります。
詳しくは介護と仕事を辞めずに続けるにまとめました。
介護保険サービスとの組み合わせ
在宅勤務で効くのは、時間帯が決まっているサービスです。
- デイサービス(日中の時間が空く)
- 訪問介護(昼食、入浴、掃除)
- 配食サービス(昼食の準備が不要になる)
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(短時間の訪問を複数回)
ケアマネジャーに「在宅勤務をしている」と伝えてください。 その前提でプランを組んでもらえます。
「在宅勤務ですが、9時から18時は仕事に集中する必要があります。その時間帯をカバーできるサービスを組めますか?」
アセスメントでは家族等の状況も確認されます。 在宅勤務によって日中の介護が難しくなることを、ケアマネジャーに伝えておいてください。
2025年の法改正でテレワークが位置づけられた
制度の側でも動きがあります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年4月 | 3歳未満の子を養育する労働者、および介護を行う労働者について、テレワーク等を選択できるよう措置を講じることが努力義務に |
| 2025年10月 | 3歳以上から小学校就学前の子を養育する労働者について、5つの選択肢から2つ以上を措置する義務(テレワークは選択肢の1つ) |
介護については、努力義務です。 会社に整備の義務はなく、必ず利用できるわけではありません。
それでも、制度として位置づけられたことで、相談の根拠になります。
「2025年4月から、介護を行う労働者へのテレワーク等の措置が努力義務になったと聞きました。週1回でも在宅にできないでしょうか?」
育児と介護が重なっている場合は、ダブルケアで使える制度もご覧ください。
会社に確認する4つのこと
在宅勤務を始める前、または始めた直後に確認してください。
- 中抜けの扱い(把握するか、しないか。する場合はどう処理するか)
- 始業・終業時刻を変更できるか(フレックス、時差出勤の有無)
- 在宅勤務の頻度に上限があるか
- 介護を理由とする場合の申請方法
1つ目がいちばん重要です。 ここが曖昧なまま始めると、あとで揉めます。
在宅勤務が向かない場合
正直に書きます。在宅勤務が、かえってつらくなる場合があります。
- 親の状態が不安定で、常に呼ばれる
- 夜間の介護があり、日中に集中できない
- 仕事と介護の切り替えができず、休まる時間がない
- 家に仕事ができる環境がない
出社が「休み」になることもあります
ずっと家にいると、介護から離れる時間がゼロになります。
通勤時間や職場での時間が、結果的に息抜きになっていた。そういう方は少なくありません。
全部を在宅にするのではなく、週に何日かは出社するという組み方もあります。
消耗が続いている場合は、介護でイライラしてしまうときもご覧ください。変えるべきは感情ではなく、条件のほうです。
まとめ|先にルールを確認する
整理します。
- 中抜けの扱いは法律で決まっていない。会社が決める
- 中抜けをしている人は半数以上。珍しいことではない
- 在宅勤務は「介護をするための時間」ではない
- サービスを減らさない。在宅になっても同じかそれ以上に使う
- テレワーク単体では両立できない。制度との組み合わせが要る
在宅勤務によって通勤時間がなくなり、介護と仕事の両立に使える時間が増える場合があります。
ただ、「家にいれば介護ができる」という前提で始めると、うまくいきません。 仕事は仕事の時間として確保する必要があります。
まず就業規則を開いて、中抜けの扱いを確認してください。 そこから設計できます。
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出典・参考
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(中抜け時間について「使用者は把握することとしても、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握することとしても、いずれでもよい」)
- 厚生労働省「労働時間制度等に関する実態調査」(調査期間:2024年9月21日〜10月21日/労働者5,505名、事業所4,921か所が回答。テレワーク中に中抜けをしている人が半数以上、通常の労働時間制度を適用している事業所の16.9%が中抜け時間を管理していない)
- 育児・介護休業法(2025年4月1日施行/3歳未満の子を養育する労働者および介護を行う労働者についてテレワーク等の措置を講じる努力義務。2025年10月1日施行/柔軟な働き方を実現するための措置)
- 東京都「家庭と仕事の両立支援ポータルサイト」(テレワークと介護の両立、中抜け時間の取扱いのルール化)
この記事の情報は2026年9月時点のものです。中抜け時間の取扱い、在宅勤務の頻度や申請方法は会社によって異なります。介護を理由とするテレワークは努力義務であり、必ず利用できるものではありません。実際の運用については、勤務先の就業規則または人事・総務にご確認ください。

