この記事の要点
- 親の住民票がある市区町村のグループホームしか選べません
- 特養や有料老人ホームと違い、住所地特例の対象外です。呼び寄せて入れることができません
- 条件は要支援2以上・医師の認知症診断・住民票の3つ
- 要支援1では利用できません
- 介護保険の自己負担は要介護3で1日824円。月額の総額は12〜18万円が目安です
親に認知症の診断が出て、施設を考え始めたとき、グループホームが候補に挙がります。少人数で家庭的、認知症のケアに慣れたスタッフがいる。よさそうに思えます。
ただ、この施設には他にはない制約が1つあります。 それを知らないと、探し始めてから行き詰まります。
よくある疑問の形で、順に書いていきます。
認知症の人が5〜9人で暮らす場所
正式名称は認知症対応型共同生活介護といいます。
1つの住居に5〜9人が入居し、スタッフとともに共同生活を送ります。この単位を「ユニット」と呼び、1つの事業所に1〜2ユニットあるのが一般的です。
他の施設と違うのは、入居者が役割を持つことです。
- 食事の準備を手伝う
- 洗濯物をたたむ
- 掃除をする
- 買い物に同行する
できることを続けることで、認知症の進行を緩やかにすることを目指す設計です。介護される場所というより、暮らす場所に近い形になっています。
スタッフは認知症ケアの知識を持つ職員が常駐します。ここが他の施設との違いです。 他の施設でも認知症の方は受け入れますが、専門の職員が常にいるとは限りません。
入居できるのは3つの条件を満たす人
条件は明確です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 要介護度 | 要支援2以上(要支援1は利用できません) |
| 診断 | 医師による認知症の診断(診断書が必要) |
| 住民票 | 施設と同じ市区町村にあること |
これに加えて、次の2点も実務上の条件になります。
- 少人数での共同生活に支障がないこと
- 常時の医療的ケアを必要としないこと
年齢は原則65歳以上ですが、40〜64歳の若年性認知症の方も入居できます。 介護保険の第2号被保険者として認定を受けている場合です。
要介護度の区分については、要介護度で使えるサービスにまとめました。
住民票のある市区町村しか選べない
ここが、この記事でいちばん重要な部分です。
グループホームは地域密着型サービスに分類されます。住み慣れた地域で生活を続けられるようにするための仕組みで、市区町村が指定と監督の権限を持っています。
そのため、原則として、その市区町村に住民票がある人しか入居できません。
親の住民票が世田谷区にある場合
→ 世田谷区内のグループホームには入居できる
→ 隣の杉並区や、川崎市のグループホームには入居できない
特養や有料老人ホームとの決定的な違い
他の施設なら、遠方から呼び寄せて入居させることができます。住所地特例という仕組みがあるためです。
これは、施設に入るために転居した場合、元の市区町村が引き続き保険者になるという制度です。施設が多い自治体に費用の負担が偏らないようにするための仕組みで、特養、老健、有料老人ホーム、サ高住などが対象になります。
グループホームは、住所地特例の対象外です
つまり、「遠方の親を呼び寄せて、自分の家の近くのグループホームに入れる」ということが、原則としてできません。
入居するには、先に住民票をその市区町村へ移す必要があります。ただしグループホームそのものに住民票を移すことは原則できないため、いったん親族の住所などに移す形になります。
さらに、住民票を移してから一定期間(3か月など)の居住実績を求める自治体もあります。 ここは市区町村によって運用が違うので、必ず事前に確認してください。
例外がまったくないわけではありません。双方の自治体が必要性を認めた場合、市区町村を越えた利用が認められることがあります。 ただ、簡単ではないと考えておいたほうがいいです。
遠距離での介護を考えている場合は、離れて暮らす親が心配なときもあわせてご覧ください。
介護保険の自己負担は1日800円台
厚生労働省が公表している、1割負担の場合の1日あたりの金額です。
| 要介護度 | ユニットが1つ | ユニットが2つ以上 |
|---|---|---|
| 要支援2 | 761円 | 749円 |
| 要介護1 | 765円 | 753円 |
| 要介護2 | 801円 | 788円 |
| 要介護3 | 824円 | 812円 |
| 要介護4 | 841円 | 828円 |
| 要介護5 | 859円 | 845円 |
要介護3・1割負担なら、30日で約24,700円です。2割負担ならこの倍、3割なら3倍になります。
要介護度による差が小さいのが特徴です
要介護1が765円、要介護5が859円。差は1日94円、月に約2,800円だけです。
特養の場合は要介護1と5で1.5倍近い差があります。グループホームは身体介護より生活の支援が中心なので、介護度による差が小さくなっています。
実際に払う月額は12〜18万円が目安
上の金額に加えて、次の費用がかかります。
- 家賃(居住費)
- 食費
- 光熱費
- おむつ代、理美容代、日用品費
これらは介護保険の対象外で、事業所が独自に設定します。 地域差も大きい。
一般的な目安は月12〜18万円ですが、都市部ではこれを超えることもあります。入居時に保証金や敷金が必要な事業所もあります。
補足給付(負担限度額認定)は使えません
特養などの施設では、住民税非課税世帯なら食費と居住費に上限が設定されます。グループホームは、この対象外です。
民間運営の施設が多く、公的施設である特養と比べると費用は高めになります。補足給付の対象施設と混同しないよう注意してください。
特養や有料老人ホームとの比較
| グループホーム | 特養 | 介護付き有料 | |
|---|---|---|---|
| 対象 | 認知症の方のみ | 原則要介護3以上 | 要介護1以上が中心 |
| 住民票 | 同じ市区町村が必須 | どこでも可 | どこでも可 |
| 規模 | 5〜9人/ユニット | 数十〜百人規模 | 施設による |
| 費用 | 月12〜18万円 | 月5〜13万円 | 月14〜26万円 |
| 補足給付 | 対象外 | 対象 | 対象外 |
| 医療対応 | 限定的 | 限定的 | 施設による |
費用は特養より高く、介護付き有料老人ホームより安い。その中間に位置します。
施設タイプ別の費用は、老人ホームの費用相場で詳しく比較しています。
入居が難しいのはどんな場合か
条件を満たしていても、断られることがあります。正直に書きます。
医療的なケアが必要な場合
グループホームには、医師や看護師の配置義務がありません。 配置している事業所もありますが、少数です。
次のようなケアが必要な場合、受け入れが難しくなります。
- たんの吸引、経管栄養
- インスリン注射
- 在宅酸素療法
- 点滴、頻繁な処置
共同生活が難しい場合
5〜9人という規模が、逆に問題になることがあります。
- 大声を出す、暴力的な行動がある
- 夜間の徘徊が頻繁
- 他の入居者との関係が持てない
少人数だからこそ、1人の状態が全体に影響します。 事業所が慎重になるのは、この構造のためです。
要支援1の場合
制度上、利用できません。要支援2以上が条件です。
入居後に出ることになる場合もある
ここも知っておいてください。
入居時は問題なくても、認知症が進行し、医療的なケアが必要になると、退去を求められることがあります。
看取りまで対応する事業所も増えていますが、すべてではありません。 見学のときに必ず確認してください。
「これまでに退去された方は、どういう理由で、どこへ移られましたか」
「看取りまで対応された実績はありますか」
答えが「ほとんどの方が最期までいらっしゃいます」なのか、「医療が必要になった方は病院や特養へ移られます」なのかで、その事業所の性格が分かります。
後者が悪いわけではありません。 次を探す前提で入るのと、そうと知らずに入るのとでは、備えが違うというだけです。
見学時に聞くべきことは、老人ホームの見学で必ず聞くべき12の質問にまとめています。
まとめ|まず住民票のある市区町村で探す
整理します。
- 条件は要支援2以上・認知症の診断・同じ市区町村の住民票
- 住所地特例の対象外。呼び寄せての入居は原則できない
- 介護保険の自己負担は要介護3で1日824円(1割)
- 月額の総額は12〜18万円が目安。補足給付は使えない
- 医療的なケアが必要になると、退去を求められることがある
探し方は明確です。親の住民票がある市区町村の、地域包括支援センターか介護保険担当課に聞いてください。 市区町村が指定している施設なので、一覧を持っています。
「この市内のグループホームの一覧と、空き状況を教えてください」
紹介サービスを使う場合も、この住民票の制約は変わりません。 先に地域を絞ってから相談するほうが、話が早く進みます。
認知症の診断がまだの場合は、認知症の初期サイン|受診までの5つの手順をご覧ください。本人が受診を嫌がっていても、家族だけで相談できる公的な窓口があります。
関連記事
出典・参考
- 介護保険法 第8条第20項(認知症対応型共同生活介護)/第8条の2(介護予防認知症対応型共同生活介護)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」認知症対応型共同生活介護(利用者負担1割・1日あたり:要支援2は761円/749円、要介護1〜5は765〜859円/753〜845円)
- 介護保険法 第13条(住所地特例。地域密着型サービスは対象外)
- 月額費用の目安(12〜18万円)は、複数の事業者・情報サイトが公表している一般的な相場です
この記事の情報は2026年8月時点のものです。住民票の要件や居住実績の取扱い、月額費用は、市区町村および事業所によって異なります。実際の入居条件と費用は、お住まいの市区町村の介護保険担当課、または各事業所にご確認ください。

