医療費と介護費は合算できる|年間の上限を超えた分が戻る

この記事の要点

  • 医療費と介護費を1年分まとめて、上限を超えた分が戻る制度です
  • 計算期間は8月1日から翌年7月31日。年度ではありません
  • 70歳以上・一般所得の世帯なら、上限は年56万円
  • 同じ世帯でも、医療保険が違うと合算できません
  • 申請しないと戻りません。 時効は2年です

親が入院して、退院後にデイサービスを使い始めた。医療費と介護費が両方かかる状態が、年単位で続いている。

このとき使えるのが高額医療・高額介護合算療養費制度です。名前が長く、内容も分かりにくいのですが、医療と介護を合算して、年間の上限を超えた分が戻ってきます。

2008年にできた制度ですが、知られていません。 そして、申請しないと1円も戻りません。

手順を5つに分けて書きます。

目次

月ごとの制度とは別のもの

混同しやすいので、先に整理します。似た名前の制度が3つあります。

制度対象期間
高額療養費医療費のみ1か月
高額介護サービス費介護費のみ1か月
高額医療・高額介護合算療養費医療費+介護費1年

月ごとの制度を使ったうえで、なお年間の負担が大きい場合に、さらに戻る仕組みです。

二重に受け取れるわけではありません。高額療養費や高額介護サービス費で戻った分は差し引いて計算されます。

月ごとの制度については、高額介護サービス費と補足給付で、いくら戻るかにまとめました。

計算期間は8月から翌年7月

ここが最初の落とし穴です。

計算期間は、毎年8月1日から翌年7月31日までです。 4月から3月の年度でも、1月から12月の暦年でもありません。

この区切りを知らないと、次のようなことが起こります。

7月と8月で、扱いが変わります

7月31日までの支払いと、8月1日からの支払いは別の年度として計算されます。

たとえば、その年の負担がすでに上限を超えている場合、7月中に受けたサービスは戻る対象になりますが、8月に受けると次の期間に繰り越されます。

逆に、まだ上限に届いていない年なら、8月まで待ったほうが有利になることもあります。ケアマネジャーに相談する価値がある場面です。

手順① 対象になる世帯か確認する

次の3つをすべて満たす必要があります。

  1. 医療保険と介護保険の両方を使っている

    どちらかが0円だと支給されません。 医療費だけ、介護費だけの世帯は対象外です。

    ただし、世帯内で分かれていても構いません。夫が医療のみ、妻が介護のみという組み合わせでも対象になります。

  2. 同じ医療保険に加入している

    ここが二番目の落とし穴です。合算できるのは、同じ医療保険に加入している人の分だけです。

    75歳以上の方は全員が後期高齢者医療制度に移ります。夫が75歳で後期高齢者、妻が73歳で国保という場合、この2人の分は合算できません。

  3. 1年間の自己負担が限度額を超えている

    超過額が501円以上でないと支給されません。

手順② 限度額を確認する

限度額は、年齢と所得で決まります。

所得区分70歳以上70歳未満
年収約1,160万円〜212万円212万円
年収約770万〜1,160万円141万円141万円
年収約370万〜770万円67万円67万円
〜年収約370万円(一般)56万円60万円
住民税非課税(低所得Ⅱ)31万円34万円
低所得Ⅰ19万円34万円

多くの高齢者世帯は、一般所得の56万円に当たります。 年金収入が中心なら、まずここを目安にしてください。

住民税が非課税なら31万円まで下がります。該当するかどうかは、負担割合の判定と同じ考え方です。 詳しくは介護保険の自己負担は1割・2割・3割のどれ?をご覧ください。

手順③ 1年分の自己負担額を集計する

8月から翌年7月までの支払いを合計します。

対象になるもの

  • 医療機関の窓口で払った自己負担(高額療養費で戻った分を除く)
  • 介護サービスの自己負担(高額介護サービス費で戻った分を除く)

対象にならないもの

医療のほうで対象外介護のほうで対象外
入院時の食事代施設の食費・居住費
差額ベッド代福祉用具の購入費
先進医療の費用住宅改修費
予防接種、健康診断おむつ代、日用品費

施設入所の食費・居住費は対象外です

ここは誤解しやすいところです。特養などに入所している場合、費用の大きな部分を占める食費と居住費は、この制度の対象になりません。

食費と居住費を軽くするのは、負担限度額認定(補足給付)のほうです。こちらも申請が必要です。

また、70歳未満の方の医療費は、1か月・1医療機関あたり21,000円以上のものだけが合算の対象になります。少額の通院は含まれません。70歳以上の方はすべて合算できます。

計算の例

70歳以上の夫婦で、同じ医療保険に加入している場合。

医療費介護費
夫(74歳)20万円35万円
妻(73歳)32万円13万円
合計52万円48万円

合計100万円 - 限度額56万円 = 44万円が戻る

支給は、医療保険と介護保険から自己負担額の比率に応じて振り込まれます。

手順④ 介護保険の窓口で証明書をもらう

申請には順番があります。まず介護保険の窓口です。

市区町村の介護保険担当課に、「介護保険自己負担額証明書」の交付を申請します。名称は自治体によって少し違います。

1年間に支払った介護保険の自己負担額を証明する書類で、次の申請に必要になります。

「高額医療・高額介護合算療養費の申請をしたいので、介護保険の自己負担額証明書をお願いします」

後期高齢者医療制度や国保なら、省ける場合があります

親が後期高齢者医療制度または国民健康保険に加入していて、介護保険と同じ市区町村が保険者になっている場合、この証明書が不要なことがあります。 同じ役所の中でデータを確認できるためです。

先に窓口で聞いてください。

手順⑤ 医療保険の窓口に申請する

証明書を持って、加入している医療保険に申請します。

加入している保険申請先
後期高齢者医療制度(75歳以上)市区町村の後期高齢者医療担当課
国民健康保険市区町村の国保担当課
協会けんぽ都道府県支部
健康保険組合加入している組合

基準日である7月31日時点で加入している保険が申請先になります。年度の途中で保険が変わった場合も、この日の保険者に出します。

審査を経て、指定した口座に振り込まれます。申請から支給までは、数か月かかることがあります。

自治体から案内が届く場合もある

後期高齢者医療制度や国民健康保険の場合、該当しそうな方に自治体から申請の案内が届くことがあります。 12月頃から順次送られる自治体が多いようです。

ただし、届かないケースもあります。

  • 年度の途中で医療保険が変わった
  • 年度の途中で市区町村をまたいで転居した
  • 会社の健康保険に加入している

案内を待つのではなく、心当たりがあれば自分から窓口に聞いてください。

「去年8月から今年7月まで、医療費と介護費が両方かかりました。合算の制度に該当しないか確認したいのですが」

時効は2年

申請できる期限は、基準日である7月31日の翌日から2年間です。

つまり、去年や一昨年の分も、まだ間に合う可能性があります。

親の医療費と介護費が重なっていた時期に心当たりがあるなら、過去の分も確認する価値があります。窓口で「過去の分も該当しないか」と聞いてください。

まとめ|心当たりがあれば窓口へ

整理します。

  • 計算期間は8月1日〜翌年7月31日
  • 70歳以上・一般所得なら上限は年56万円
  • 医療と介護の両方を使っていることが条件
  • 同じ医療保険でないと合算できない
  • 食費・居住費・福祉用具購入費・住宅改修費は対象外
  • 申請が必要。時効は2年

この制度は、該当していても気づかない人が多いと思います。名前が長く、月ごとの制度と混同しやすいためです。

判断が難しければ、集計せずに窓口へ行っても構いません。 該当するかどうかは、窓口で確認できます。

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出典・参考

  • 健康保険法 第115条の2(高額介護合算療養費)/介護保険法(高額医療合算介護サービス費)
  • 厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」(2008年4月施行)
  • 内閣府「高額介護合算療養費制度 概要」(限度額:年収約1,160万円〜212万円、約770〜1,160万円141万円、約370〜770万円67万円、〜約370万円は70歳以上56万円・70歳未満60万円、低所得Ⅱ31万円、低所得Ⅰ19万円)
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額介護合算」(70歳未満は1か月21,000円以上のみ合算、超過額501円以上が支給対象、いずれかが0円の場合は不支給)

この記事の情報は2026年8月時点のものです。所得区分の判定や申請手続きは、加入している医療保険と市区町村によって異なります。実際の該当の可否と手続きは、加入している医療保険の窓口または市区町村の担当課にご確認ください。

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