この記事の要点
- 介護医療院は2018年にできた、いちばん新しい介護保険施設です
- 全国で926施設。 老健の約4分の1、特養の約9分の1しかありません
- 8割以上が元の病院です。 介護療養病床から転換したものが中心
- 老健と違い、期間の制限がなく、看取りまで対応します
- Ⅰ型とⅡ型があります。 医療の必要度で分かれます
介護保険で入れる施設は3つあります。特養、老健、そして介護医療院。
前の2つは名前を聞いたことがあると思いますが、介護医療院を知っている方は少ないはずです。
調べてみると、成り立ちが独特でした。驚いた点を4つ書きます。
驚いた事① 926施設しかない
まず数から。厚生労働省の集計で、令和6年4月1日時点の開設数は926施設です。
| 施設 | 全国の施設数 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 約8,000施設 |
| 介護老人保健施設(老健) | 4,214施設 |
| 介護医療院 | 926施設 |
老健の約4分の1、特養の約9分の1です。
総療養床数は53,183床。都道府県によっては数軒しかない地域もあります。
「候補に入らない」ことがあります
数が少ないので、そもそも近くにないという状況が起こります。
ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーから提案されなかったとしても、それは見落としではなく、地域に施設がないだけかもしれません。
気になる場合は「この地域に介護医療院はありますか」と直接聞いてください。
驚いた事② 8割以上が元の病院
この施設ができた経緯が、他と違います。
介護療養病床という制度が廃止されることになり、その受け皿として2018年に作られました。 移行期限は2024年3月でした。
厚生労働省の資料で、転換元の内訳が公表されています。
| 転換元 | 療養床数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 介護療養病床(病院) | 32,775床 | 61.6% |
| 介護療養型老人保健施設 | 5,209床 | 9.8% |
| 介護療養病床(診療所) | 949床 | 1.8% |
| 老人性認知症疾患療養病棟(精神病床) | 828床 | 1.6% |
つまり、多くは「病院だった場所」です。
新しく建てられた施設ではなく、入院していた人がそのまま暮らせるように、病床を施設に切り替えたものが中心になっています。
だから医療に強い
元が病院なので、医師と看護師の体制がそのまま残っています。
たんの吸引、経管栄養、インスリン注射、酸素療法。他の施設では断られることのあるケアに対応できます。
そして、看取りやターミナルケアも制度上の役割に含まれています。
驚いた事③ 病院より広い基準がある
これも意外でした。
介護医療院の療養室は、1人あたり8.0㎡以上と定められています。 医療法の療養病床の基準(6.4㎡以上)より広い。
設備の基準もあります。
- 診察に適した診察室
- 40㎡以上の機能訓練室
- 談話室、食堂、浴室
- レクリエーションルーム
そして、多床室であっても、プライバシーに配慮した間仕切りが求められます。 カーテンだけでなく、家具やパーテーションで区切る形です。
病院の大部屋とは、設計の考え方が違います。 「治療の場」ではなく「暮らしの場」として作られているためです。
驚いた事④ Ⅰ型とⅡ型がある
同じ介護医療院でも、2つの型に分かれています。
| Ⅰ型 | Ⅱ型 | |
|---|---|---|
| もとになった基準 | 介護療養病床(療養機能強化型)相当 | 老健相当以上 |
| 対象 | 重篤な身体疾患がある方、身体合併症のある認知症の方 | Ⅰ型より容体が安定している方 |
| 医療の体制 | より手厚い | Ⅰ型に次ぐ |
| 施設数(令和6年4月) | 600施設・37,568床 | 319施設・15,615床 |
※Ⅰ型とⅡ型が混在する施設が7施設あります。
数の上ではⅠ型が多数派です。 医療の必要度が高い方を想定した施設が中心になっています。
見学や相談のときは、こう聞いてください。
「こちらはⅠ型ですか、Ⅱ型ですか?」
「うちの母の状態だと、どちらが合いますか?」
老健・特養との違い
3つを並べると、性格がはっきりします。
| 特養 | 老健 | 介護医療院 | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 生活の場 | 在宅復帰 | 長期療養+生活 |
| 入所条件 | 原則要介護3以上 | 要介護1以上 | 要介護1以上 |
| 期間 | 制限なし | 3〜6ヶ月ごとに判定 | 制限なし |
| 医師 | 配置義務なし | 常勤で配置 | 常勤で配置 |
| 医療的ケア | 限定的 | 対応可 | 最も手厚い |
| 看取り | 看取り介護加算あり | ターミナルケア加算あり | ターミナルケア加算あり |
| 施設数 | 約8,000 | 4,214 | 926 |
老健との最大の違いは、期間です。 老健は在宅復帰を目的とするため、3〜6ヶ月ごとに在宅に戻れるかを検討します。介護医療院にはその仕組みがありません。
老健の実態についてはこちらの記事にまとめました。平均在所日数は約10ヶ月で、「3ヶ月で出される」は正確ではありません。 ただ、制度上の位置づけは違います。
特養との違いは、医療です。 特養には医師の常勤配置義務がなく、医療的ケアが必要になると受け入れが難しくなります。
費用の目安
公的な施設なので、入所一時金はかかりません。 月額のみです。
内訳を示します。要介護1・多床室・1割負担の場合の概算です。
| 項目 | 計算 | 月額 |
|---|---|---|
| 介護サービス費 | 833単位 × 30日 × 1割 | 約24,990円 |
| 食費 | 1,545円 × 30日 | 約46,350円 |
| 居住費(多床室) | 915円 × 30日 | 約27,450円 |
| 合計 | 約98,790円 |
※Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ)(ⅱ)多床室・要介護1の単位数で計算した目安です。要介護度、居室のタイプ、加算によって変わります。1単位10円で計算していますが、地域により10〜11.40円の幅があります。
要介護度が上がれば、介護サービス費も上がります。 ユニット型個室ならさらに高くなります。日用品費なども別途かかります。
食費の基準費用額は2026年8月に変わりました
1日1,445円から1,545円へ。 30日で3,000円の差です。古い記事には旧の金額のまま書かれているものがあります。
住民税非課税世帯なら負担限度額認定で食費と居住費に上限が設定されます。申請が必要です。 詳しくは高額介護サービス費と補足給付をご覧ください。
なお、介護医療院の自己負担は医療費控除の対象になります。 特養は2分の1ですが、介護医療院は老健と同じく全額です。 食費と居住費も含まれます。詳しくはこちらの記事に書きました。
入所を検討する場面
次のような状況で候補になります。
- 医療的なケアが継続的に必要(たん吸引、経管栄養、インスリン、酸素など)
- 病状は安定しているが、在宅での療養が難しい
- 特養や有料老人ホームで受け入れを断られた
- 老健の入所期間が終わりに近づいているが、在宅復帰が難しい
- 最期まで医療を受けられる場所を探している
相談先
入院中なら、病院の医療ソーシャルワーカーがいちばん確実です。地域の施設の状況を把握しています。
在宅なら、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターです。
また、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で、地域の施設を検索できます。医療対応の状況や職員の配置も確認できます。
知っておきたい注意点
数が少ないので、待つことがあります
926施設・53,183床。需要に対して供給が足りない地域があります。
ただし特養のような全国的な待機の統計は公表されていないため、実際の待ち時間は施設ごとに確認するしかありません。
看取りに対応するかは施設による
制度上はターミナルケアが役割に含まれていますが、実際にどこまで対応するかは施設ごとに違います。
見学のときに、実績を聞いてください。
「昨年、こちらで最期を迎えられた方は何人ですか?」
看取りができる施設の選び方は、こちらの記事にまとめました。
リハビリの位置づけが違います
機能訓練室の設置は基準に含まれていますが、老健ほどリハビリに重点は置かれていません。
在宅復帰を目指してリハビリを受けたいなら、老健のほうが適しています。
まとめ|医療が必要で長期になる場合
整理します。
- 2018年にできた、いちばん新しい介護保険施設
- 926施設。老健の4分の1、特養の9分の1
- 8割以上が元の病院。だから医療に強い
- 老健と違い期間の制限がなく、看取りまで対応
- 費用は多床室・要介護1で月10万円前後
この施設が向くのは、「医療が必要で、かつ長期になる」場合です。
特養では医療的ケアが難しく、老健では期間が限られ、病院には長く入院できない。その隙間を埋めるために作られた施設です。
ただ、数が少ない。まず「この地域にあるか」を確認するところから始めてください。
施設タイプ別の費用比較は老人ホームの費用相場に、入院中の動き方は親が入院したときにまとめています。
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出典・参考
- 厚生労働省「介護医療院の開設状況等(令和6年4月1日時点)」(926施設・53,183床/Ⅰ型600施設37,568床、Ⅱ型319施設15,615床、混合7施設/転換元の構成比:介護療養病床(病院)61.6%、介護療養型老人保健施設9.8%、介護療養病床(診療所)1.8%、老人性認知症疾患療養病棟1.6%)
- 厚生労働省「介護医療院について」(長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象、日常的な医学管理と看取り・ターミナルケア、生活施設としての機能)
- 介護保険法 第8条第29項(介護医療院の定義)/介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(療養室は1人あたり8.0㎡以上、機能訓練室40㎡以上)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」(Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ)(ⅱ)多床室 要介護1=833単位)
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1506(食費の基準費用額1,545円/2026年8月〜)
この記事の情報は2026年9月時点のものです。費用は要介護度、居室のタイプ、加算、地域区分によって変わります。医療的ケアへの対応や看取りの実績は施設ごとに異なります。実際の入所条件と費用は、各施設または入院先の医療ソーシャルワーカー、担当のケアマネジャーにご確認ください。

