この記事の要点
- 拒否の理由の1位は「施設が嫌」ではなく「家を離れたくない」。説得のポイントがずれていることが多い
- 本人の同意がなくても入居契約は可能な場合がある。 ただし、それは最後の手段
- 家族が言うと反発するのに、医師が言うと受け入れることが多い
- 「入ったら外出できない」という誤解を持っている人が少なくない
「絶対に施設には入らない」
そう言われて動けなくなっている家族は、とても多いようです。この記事を書くために調べていて、自分の予想と違っていたことが4つありました。順番に書きます。
驚き①:嫌なのは「施設」ではなく「家を離れること」
内閣府の世論調査で、自宅で介護を受けたい理由の上位はこうなっています。
- 住み慣れた家を離れたくない
- 他人の世話になりたくない
- 知らない人と共同生活することへの不安
1位が「施設が嫌だから」ではないのが意外でした。裏を返せば、拒否の理由は「施設への嫌悪」ではなく、家への愛着なのです。
ここがずれると、話が進まない
家族はたいてい、施設の良さを説明しようとします。設備がきれい、職員が親切、食事がおいしい。
でも、本人が抵抗しているのは施設の質ではありません。 家を離れることそのものです。だから、いくら施設の良さを説明されても響かない。
分かったこと
説得の前に、何が嫌なのかを本人に聞く必要があります。
- 家そのものが離れがたいのか
- 世話をされる立場になるのが嫌なのか
- 知らない人と暮らすのが不安なのか
理由が違えば、対処もまったく違います。 「家を離れたくない」なら家に近い環境の施設を探す、「共同生活が不安」なら個室のある施設を選ぶ、という具合です。
驚き②:同意がなくても、契約はできてしまう
これが一番驚きました。
本人の同意がなくても、家族の意向で入居手続きを進めることは可能とされています。認知症が進んで意思表示が難しい場合があるためです。
判断能力が失われている状態で、生命の危険があるような場合には、家族が代わりに施設を探して契約することも例外的にあり得ます。
ただ、これを「使える手」だと思わないほうがいい
調べていて、同時に強く書かれていたのがこれでした。
本人の意思を無視して強制的に入居させることは、してはいけない。
契約上は可能でも、本人が納得していない入居は、その後の生活が続きません。施設で暴れる、食事を拒む、家に帰ろうとする。結果的に退去を求められることもあります。
「できる」と「していい」は違う、ということです。
判断能力がある場合
本人に判断能力があるなら、同意なしの入居はできません。 本人が契約者になるからです。
この場合は、時間をかけて話すしかありません。
驚き③:家族の言葉より、医師の言葉が効く
これも予想外でした。
家族がいくら言っても聞かないのに、医師が言うと素直に受け入れる高齢者が多いそうです。
なぜそうなるのか
家族が言うと、こう聞こえてしまうからだと思います。
- 「厄介払いされる」
- 「見捨てられる」
- 「自分は迷惑な存在だ」
同じ内容でも、第三者から言われると「専門的な判断」として届きます。
使える第三者
- 医師(かかりつけ医。最も効きやすい)
- ケアマネジャー
- 地域包括支援センターの職員
- 本人が信頼している親戚、友人
診察のときに「施設の話をしたいのですが、先生から触れてもらえませんか」と相談してみる価値はあります。
家族だけで抱えなくていい、というのがこの項目の要点です。
驚き④:「入ったら終わり」だと思われている
高齢者の中には、施設についてこういうイメージを持っている方が少なくないそうです。
- 自由に外出できなくなる
- 家族に会えなくなる
- 一度入ったら、もう出られない
これは事実と違います。
外出も面会もできます。施設が合わなければ、転居もできます。
誤解を解くだけで変わることがある
「そういう場所ではない」と伝えるだけで、態度が軟化することがあるそうです。
考えてみれば、今の高齢者が若い頃の「施設」のイメージは、今のものとかなり違います。古い印象のまま拒否している可能性は十分あります。
では、どうすればいいのか
4つの発見から導かれる進め方をまとめます。
1. まず理由を聞く
「なぜ嫌なのか」を、責めずに聞く。ここを飛ばして説得に入らないこと。
2. 誤解があれば解く
外出できる、面会できる、合わなければ移れる。事実を伝える。
3. 第三者から話してもらう
医師、ケアマネジャー、地域包括支援センター。家族以外の口から。
4. 体験入居やショートステイで慣らす
言葉より、経験のほうが早いことがあります。
多くの施設に体験入居があります。ショートステイから始めて、少しずつ施設の雰囲気に慣れてもらう方法もあります。「見学だけ」「1泊だけ」なら応じる方は少なくありません。
5. 家に近い環境を探す
「家を離れたくない」が理由なら、自宅に近い立地、少人数、個室といった条件で探すと、抵抗が下がることがあります。
最後に:家族の限界も、正当な理由です
ここまで本人の気持ちを中心に書きました。ただ、介護する側が倒れたら、元も子もありません。
在宅介護を続けた結果、介護者がうつ状態になったり、虐待に至ってしまったりする事例は現実にあります。限界まで我慢するのが正解ではありません。
「自分が限界に近い」ということも、地域包括支援センターやケアマネジャーに伝えていい相談です。それは親を見捨てることとは違います。
施設に入ることは、介護を放棄することではありません。関わり方が変わるだけです。 面会にも行けますし、外出もできます。
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出典・参考
- 内閣府「高齢者介護に関する世論調査」
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」
この記事の情報は2026年8月時点のものです。入居契約や成年後見に関する判断は、個別の状況により異なります。実際の手続きは、ケアマネジャー、地域包括支援センター、または専門機関にご相談ください。

