この記事の要点
- チェック項目を増やすより、答えをどう読むかのほうが重要
- 最も聞き忘れるのは退去要件。「どうなったら出なければならないか」
- 職員の離職率は、数字ではなく答え方を見る
- 見学は1回でも大丈夫。見ていない時間帯のことは質問で埋められる
- パンフレットに載らない情報を引き出す12の質問を、そのまま使える形で
老人ホームの見学に行くと、多くの人が「きれいでしたね」「感じがよかったです」という感想だけを持ち帰ります。
案内されるのは、たいてい見せるために整えられた場所です。それだけを見て判断すると、入居後に「聞いていなかった」ことが次々に出てきます。
この記事では、見学で必ず聞くべき12の質問と、返ってきた答えをどう読むかをまとめます。印刷して持っていける形にしてあるので、そのまま使ってください。
質問の前に:見学の組み方
平日の昼前後に行く
11時から13時の時間帯がおすすめです。食事の様子、職員の動き、入居者の表情が同時に見られます。
土日は職員が少なく、レクリエーションもない施設が多いため、普段の姿が見えません。
1回で見極めるための工夫
理想を言えば時間帯を変えて2回行くのがいいのですが、仕事をしながら施設を探している人には現実的ではありません。
1回しか行けない前提で、次の3つを使ってください。
見ていない時間帯のことを、質問で埋める
夕方以降の様子は、実際に見なくても聞けます。
「17時から翌朝までは、職員は何人になりますか」
「夜間に転倒があった場合、誰がどう対応しますか」
その場で答えられるかどうかが判断材料になります。
入居者のご家族の連絡先を聞く
家族会がある施設なら、「実際に利用しているご家族のお話を伺えますか」と聞いてみてください。応じてくれる施設は、隠すことがありません。
体験入居を使う
多くの施設に1泊〜数泊の体験入居があります。見学2回分より情報量が多いうえ、本人の反応も見られます。有料の場合が多いので、費用と条件を確認してください。
仕事を休んで2回行くより、1回の見学で質問を尽くし、体験入居につなげるほうが効率的です。
本人を連れて行くかどうか
本人が納得して入居することが最善ですが、状態によっては見学自体が負担になります。
まず家族だけで2〜3か所回り、絞ってから本人に見せるのが現実的です。
12の質問
1. どうなったら退去しなければなりませんか
最も重要で、最も聞き忘れられる質問です。
多くの施設には退去要件があります。「認知症が進んで他の入居者に危害を及ぼす場合」「医療依存度が高まった場合」「長期入院した場合」など。
答えの読み方
- 良い答え:具体的な基準と、その場合の転居先の相談に乗る体制まで説明する
- 注意が必要な答え:「基本的に最期までいられます」とだけ言い、条件を説明しない
契約書に必ず記載があります。その場で該当箇所を見せてもらってください。 断られたら、それが答えです。
2. 夜勤は何人体制ですか。入居者何人に対してですか
日中の職員配置は基準で決まっていますが、夜間は施設によって大きく違います。
答えの読み方
- 具体的な人数がすぐ出る → 日常的に意識している
- 「十分に配置しています」と数字を避ける → 少ない可能性が高い
入居者50人に対して夜勤2人と、夜勤1人では、緊急時の対応がまったく変わります。
3. 職員の平均勤続年数を教えてください
離職率そのものを聞くと角が立つので、勤続年数を聞きます。
答えの読み方
- 答え方に淀みがない → 把握している、つまり定着している
- 「人によりますね」と濁す → 入れ替わりが激しい可能性
職員が頻繁に入れ替わる施設では、入居者の状態や好みが引き継がれません。これは介護の質に直結します。
4. 看取りは何件くらい経験がありますか
看取りに対応しているかだけでなく、実績の数を聞いてください。
「対応しています」と答える施設でも、実際には年に1件もないことがあります。
答えの読み方
- 年間の件数が出る → 体制ができている
- 「ご希望があれば対応します」だけ → 経験が乏しい可能性
あわせて、深夜に急変したときの手順も聞いてください。誰が判断し、誰に連絡し、どこへ搬送するのか。
5. 月額費用のほかに、実際にはいくらかかっていますか
パンフレットの月額費用には含まれないものが必ずあります。
- おむつ代、日用品費
- 医療費、薬代
- 理美容代
- 病院への付き添い代
- レクリエーションの材料費
答えの読み方
「入居者の方は、だいたい月にいくらくらい追加でかかっていますか」と聞くのが有効です。平均額をすぐ答えられる施設は、費用の相談に慣れています。
6. 費用が上がることはありますか
介護度が上がったとき、人件費が上がったとき、費用が改定されることがあります。
過去3年で値上げがあったかを聞いてください。あった場合、どのくらいの幅だったか。
年金と貯蓄で何年もつかを計算するとき、この情報がないと意味がありません。
7. 入居者の平均要介護度はどのくらいですか
これは施設の実態を知る質問です。
平均が要介護4〜5なら、寝たきりに近い方が中心。まだ歩ける方が入ると、話し相手がいない環境になります。
逆に平均が要介護1〜2の施設に、介護度の高い方が入ると、十分なケアを受けられないことがあります。
本人の状態と合っているかを確認してください。
8. 通院はどうなりますか。付き添いは誰がしますか
見落とされがちですが、家族の負担を大きく左右します。
- 施設が付き添う → 費用がかかることが多い
- 家族が付き添う → 仕事を休む必要がある
- 訪問診療がある → 通院自体が減る
月に何回の通院が必要か、そのたびに誰が動くのか。具体的に計算してください。
9. 面会はいつでもできますか。宿泊はできますか
面会時間の制限、事前予約の要否、宿泊できる部屋があるか。
答えの読み方
面会の制限が厳しい施設は、見られたくない事情がある場合があります。ただし、感染症対策として合理的な制限もあるので、理由まで聞いてください。
看取りの時期に泊まれるかどうかは、後になって大きな意味を持ちます。
10. 職員の方に直接お話を聞いてもいいですか
見学の案内は、多くの場合入居相談員が行います。営業担当です。
現場の職員に「ここで働いてどうですか」と聞けるか。その場で断られるかどうかが判断材料になります。
快く応じる施設は、現場に自信があります。
11. 入居者のご家族の連絡会や、意見を聞く場はありますか
家族会がある施設は、家族の声が運営に届く仕組みを持っています。
苦情や要望をどう扱っているか、記録が残っているか。「特にありません」と答える施設より、「こういう意見があって、こう改善しました」と具体例が出る施設のほうが信頼できます。
12. 見学していない場所を見せてもらえますか
案内されるのは、たいてい見せるための場所です。
汚物処理室、洗濯室、厨房の裏、夜間の廊下。 これらを見せてもらえるか聞いてください。
答えの読み方
- 快く見せる → 日常的に整っている
- 理由をつけて避ける → 見せられない状態の可能性
臭いは特に重要です。水回りに臭いがある施設は、清掃が行き届いていません。
質問しながら見るべき3つのこと
職員が入居者にどう話しかけているか
立ったまま見下ろして話していないか。名前で呼んでいるか。急かしていないか。
しゃがんで目線を合わせる職員がいる施設は、教育が行き届いています。
掲示物の日付
行事の写真、献立表、予定表。日付が古いままなら、日常が回っていない証拠です。
季節の飾りが前の季節のままの施設は、細部に手が回っていません。
入居者の表情
一番わかりやすい指標です。
テレビの前に一列に並べられ、誰も話していない。職員と入居者の会話がない。そういう空気は、見ればわかります。
印刷して持っていくチェックリスト
見学当日、その場でメモできるよう、質問だけを並べます。
費用 – 月額以外に実際いくらかかっているか(平均額) – 過去3年の値上げの有無と幅 – 介護度が上がったときの費用の変化
体制 – 夜勤の人数と、入居者数との比率 – 職員の平均勤続年数 – 入居者の平均要介護度
医療・看取り – 看取りの年間実績数 – 深夜に急変したときの手順 – 通院の付き添いは誰がするか、費用は
契約 – 退去要件(契約書の該当箇所を確認) – 退去を求められた場合の転居先の相談体制
その他 – 面会時間と宿泊の可否 – 家族会の有無 – 現場職員と話せるか – 汚物処理室・洗濯室を見せてもらえるか
見学のあとにやること
その日のうちにメモを残す
2か所目、3か所目を回ると、記憶が混ざります。その日のうちに、良かった点と気になった点を書き出してください。
優先順位を決める
すべての条件を満たす施設は、ほぼ存在しません。
「建物は古くても職員が丁寧なほうがいい」「多少高くても自宅から近いほうがいい」。家族で譲れない軸を1つか2つ決めてください。
これがないと、いつまでも決まりません。
迷ったら、電話で追加の質問をする
もう一度見学に行くのが難しくても、電話で聞き足りなかったことを確認することはできます。
このときの対応も判断材料です。丁寧に答えてくれるか、面倒そうにされるか。入居後に何度もやり取りする相手なので、ここは見ておいて損がありません。
見学先を探す段階の方へ
見学に行く前に、そもそもどんな施設があるのかを整理しておくと効率が上がります。
施設の種類と費用の違いは、こちらの記事にまとめています。
- 老人ホームの費用相場を、施設タイプ別に比較する
- 在宅の限界を感じたときの選択肢
- 要介護認定の申請から結果が出るまで
この記事の情報は2026年8月時点のものです。施設の運営方針や料金体系は施設ごとに異なります。実際の契約内容は、必ず重要事項説明書と契約書でご確認ください。

