この記事の要点
- 「3ヶ月で出される」は正確ではありません。 平均在所日数は約10ヶ月です
- ただし施設によって差が非常に大きい。同じ老健で79日と288日という例があります
- 差の理由は5つの類型。在宅復帰率が高い施設ほど報酬が高い仕組みです
- 3〜6ヶ月ごとにあるのは「退所判定」ではなく「在宅復帰の可否の検討」です
- 費用は多床室で月8万円前後。特養より高く、有料老人ホームより安い
親が入院して、退院後の行き先として老健をすすめられた。調べてみると「3ヶ月で出される」という記述が並んでいる。
それでは、次の行き先をすぐ探さなければならない。そう思って焦る方が多いと思います。
ただ、調べてみると実態はかなり違いました。 そして、施設によって大きく変わることも分かりました。驚いた点を4つ書きます。
驚いた事① 平均在所日数は約10ヶ月
厚生労働省の調査による老健の平均在所日数は299.9日です。約10ヶ月になります。
「3ヶ月」という数字とは、かなり開きがあります。
ではなぜ「3ヶ月」と言われるのか。3〜6ヶ月ごとに在宅復帰の可否を検討する仕組みがあるからです。 ここが誤解のもとになっています。
「判定がある」と「出される」は別のことです
3〜6ヶ月ごとに行われるのは、在宅に戻れる状態かどうかの検討です。自動的に退所になるわけではありません。
在宅の受け入れ準備が整っていない、次の行き先が決まっていない。こうした事情がある場合、施設に空きがあれば入所期間が延びることもあります。
驚いた事② 同じ老健で79日と288日
ただ、平均だけを見ると判断を誤ります。施設ごとの差が非常に大きいためです。
厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」に、2つの老健を比較した例が載っています。
| A施設 | B施設 | |
|---|---|---|
| 平均的な入所日数 | 79.3日 | 288日 |
| 3ヶ月間に自宅等へ戻った人の割合 | 23.3%(24/103人) | 1.3%(2/152人) |
入所日数で3.6倍、在宅復帰率では18倍の差があります。 どちらも同じ「老健」です。
つまり、「老健は何ヶ月」という問いに、全国共通の答えはありません。 大事なのは「どの老健か」です。
驚いた事③ 老健は5つの類型に分かれている
この差が生まれる理由が、報酬の仕組みにありました。
2018年の介護報酬改定で、老健は5つの類型に区分されました。
| 類型 | 在宅復帰・在宅療養支援等指標 | 報酬 |
|---|---|---|
| 超強化型 | 70点以上 | 最も高い |
| 在宅強化型 | 60点以上 | ↑ |
| 加算型 | 40点以上 | ↑ |
| 基本型 | 20点以上 | ↑ |
| その他 | 要件を満たさない | 最も低い |
指標は10項目・90点満点で、在宅復帰率が最も配点が高く、50%超で20点です。ほかにベッド回転率、訪問指導、リハビリ職の配置などが評価されます。
そして重要なのがここです。
在宅復帰率が高い施設ほど、介護報酬が高くなります
つまり、施設側に「在宅へ戻す」経済的な動機があります。
類型によって、入所期間の見込みが変わります
超強化型・在宅強化型の老健は、在宅復帰を強く推し進めます。リハビリは手厚いですが、入所期間は短くなる傾向があります。
一方、基本型やその他の老健は、比較的長く入所できることがあります。
なお、報酬の加算期間が終わった利用者に退所を求める施設もあるという指摘もあります。制度がそう設計されている以上、起こりうることです。
だから、最初にこれを聞いてください
見学や相談のときに、この質問が効きます。
「こちらは、どの類型の老健ですか?」
「平均的な入所日数と、在宅に戻られた方の割合を教えていただけますか?」
類型は施設が把握しています。 そして、平均在所日数と在宅復帰率は、介護サービス情報公表システムでも確認できる項目です。
答えが「超強化型です」なら、リハビリに力を入れている代わりに、期間は短めと考えたほうがいい。どちらが良い悪いではなく、目的に合うかどうかです。
驚いた事④ 特養の待機場所になっている実態
制度の建前と、実際の使われ方にはずれがあります。
厚生労働省の資料に、こう書かれています。
- 特別養護老人ホームに入所できるまで、老健で待機している人がいる
- リハビリで在宅生活に戻れる状態になっても、介護する家族の高齢化などで在宅復帰が叶わない人がいる
- その結果、老健で看取られ、最期を迎える方もいる
- 複数の老健等を移りながら過ごす方もいる
在宅復帰を目的とする施設なのに、実際には終の住処になっている場合がある。 これが現状です。
特養の待機については、申込順ではなく点数で決まる仕組みと、東京都の実態調査を別記事にまとめました。「何年も待つ」という前提も、実は正確ではありません。
老健は何をする場所か
ここまでの前提として、施設の性格を整理します。
老健は、病院と自宅の中間にある施設です。 病状が安定した方が、リハビリを受けながら在宅復帰を目指します。
| 職種 | 配置 |
|---|---|
| 医師 | 常勤で配置(入所者100人あたり1人以上) |
| 看護師 | 配置あり |
| 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | いずれか1人以上(入所者100人あたり) |
| 介護職員 | 配置あり |
| 支援相談員 | 配置あり |
医師とリハビリ職の配置が義務づけられているのが、老健の特徴です。 特養にはこの義務がありません。
入所の条件
- 要介護1以上(要支援は利用できません)
- 原則65歳以上(40〜64歳でも、特定疾病による要介護認定があれば可)
- 病状が安定していること
- 入院治療の必要がないこと
要介護度と使えるサービスの関係は、要介護度で使えるサービスで7段階すべて整理しています。
費用は多床室で月8万円前後
老健は公的な施設なので、入所一時金はかかりません。 月額のみです。
| 居室タイプ | 月額の目安(1割負担) |
|---|---|
| 多床室 | 7.8〜8.7万円 |
| ユニット型個室的多床室 | 11.7〜12.5万円 |
| ユニット型個室 | 12.6〜13.5万円 |
内訳は、介護サービス費・居住費・食費・日常生活費です。2割負担なら介護サービス費が倍、3割なら3倍になります。
食費の基準費用額は2026年8月に変わりました
1日1,445円から1,545円へ。 30日で3,000円の差です。
公開時期の古い記事には、旧の1,445円のまま書かれているものがあります。数字を見かけたら、いつ時点のものか確認してください。
住民税非課税世帯なら負担限度額認定で食費と居住費に上限が設定されます。申請が必要です。詳しくは高額介護サービス費と補足給付をご覧ください。
特養と比べると、医師とリハビリ職がいる分だけ月々の負担は高くなります。 一方で、介護付き有料老人ホームよりは安い。中間に位置します。
施設タイプ別の比較は老人ホームの費用相場にまとめました。
断られる理由は医療費の仕組みにある
もう1つ、実務的に大事な点があります。
老健では、入所中の医療費や薬代が原則として施設の負担になります。 介護報酬に包括されているためです。
この仕組みのため、高額な薬を使っている方は、受け入れを断られることがあります。 施設側の持ち出しが大きくなるからです。
- 抗がん剤、一部の認知症治療薬など高額な薬
- 頻繁な処置が必要な状態
- 人工透析
該当する場合は、入所相談の段階で薬の内容を正確に伝えてください。 あとから判明すると、話が振り出しに戻ります。
お薬手帳を持参するのが確実です。入院中なら、医療ソーシャルワーカーが調整してくれます。
入所するときに家族がやっておくこと
類型と実績を聞く
「どの類型か」「平均在所日数」「在宅復帰率」。この3つで、入所期間の見込みが立ちます。
次の行き先を並行して考える
在宅に戻るのか、特養を待つのか、有料老人ホームか。老健にいる間に決めるのが前提の施設です。
特養を希望するなら、老健に入所した時点で申し込んでおいてください。 待機期間が長くなる地域もあります。
家の環境を整える
在宅復帰を目指すなら、手すりの設置や段差の解消が必要になることがあります。住宅改修は20万円まで使えますが、着工前の申請が必須です。
リハビリの目標を共有する
「どこまで回復したら在宅に戻れるか」を、施設と家族で一致させておく。ここがずれていると、退所の時期でもめます。
まとめ|「3ヶ月」より「どの老健か」
整理します。
- 平均在所日数は約10ヶ月。「3ヶ月で出される」は不正確
- ただし施設差が大きい(79日と288日という例がある)
- 差の理由は5つの類型。在宅復帰率が高い施設ほど報酬が高い
- 3〜6ヶ月ごとにあるのは判定であって、自動的な退所ではない
- 費用は多床室で月8万円前後。医療費が施設負担なので、高額な薬があると断られることも
不安の中身は「いつ出されるか分からない」ことだと思います。それなら、最初に類型と実績を聞いてください。 見込みが立てば、備えられます。
そして、老健は次を決めるための時間を稼ぐ場所です。 その時間をどう使うかで、退所後の選択肢が変わります。
入所中の相談先は、施設の支援相談員です。配置が義務づけられています。ケアマネジャーと同じように、退所後の調整を担当してくれます。
関連記事
出典・参考
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」介護老人保健施設(施設比較の例:平均的な入所日数79.3日/288日、3ヶ月間に自宅等へ戻った人の割合23.3%/1.3%)
- 厚生労働省の調査による老健の平均在所日数299.9日
- 厚生労働省「介護老人保健施設の報酬・基準について」(2018年度介護報酬改定による5類型/在宅復帰・在宅療養支援等指標90点満点)
- 介護保険法 第8条第28項(介護老人保健施設)/人員・設備・運営に関する基準(医師、理学療法士等の配置)
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1506(食費の基準費用額1,545円/2026年8月〜)
- 月額費用の目安は、複数の事業者・情報サイトが公表している一般的な相場です
この記事の情報は2026年8月時点のものです。入所期間、類型、費用は施設によって大きく異なります。医療費の取扱いや受け入れの可否は施設の判断によります。実際の入所条件と期間の見込みは、各施設または入院先の医療ソーシャルワーカー、担当のケアマネジャーにご確認ください。

