この記事の要点
- 公的調査から計算すると、介護費用の総額は平均542万円(一時費用47.2万円+月9.0万円×55か月)
- ただしこの542万円を実際に払う人は、ほとんどいません。費用は二つの山に割れています
- 在宅なら約339万円、施設なら約806万円。差は467万円です
- 介護期間の平均は4年7か月。4年を超えた人が約4割
- 多くのサイトが今も引用している「580万円」は、2021年度の古い数字です
親の介護が始まったとき、いちばん知りたいのに、いちばん答えが見つからないのがこの問いだと思います。結局、いくらかかるのか。
検索すると「約580万円」という数字がよく出てきます。ただ、調べていくうちに、この数字には2つの問題があることがわかりました。
1つは、古いこと。 もう1つは、その平均額を実際に払う人が、ほとんどいないことです。
順に書いていきます。
最新の数字は、542万円
介護費用の総額としてよく引用されるのは、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」です。3年ごとに行われていて、最新版は2024年度調査(2025年1月発表)です。
過去3年間に介護経験がある人への調査結果は、次のとおりでした。
| 項目 | 平均 |
|---|---|
| 一時的な費用(住宅改造、介護用ベッドなど) | 47.2万円 |
| 月々の費用 | 9.0万円 |
| 介護期間 | 55.0か月(4年7か月) |
一時的な費用というのは、介護が始まった最初のころにまとめて出ていくお金です。手すりの取り付け、段差の解消、介護用ベッドや車いすの購入など。このうち住宅改修は、介護保険から上限20万円まで給付を受けられます。 福祉用具もレンタルできるものが多く、47.2万円という数字は、制度を使えばもう少し抑えられる余地があります。
掛け合わせると、こうなります。
47.2万円 +(9.0万円 × 55か月)= 542.2万円
広く引用されている580万円は、1つ前の2021年度調査の数字(74万円+8.3万円×61か月)です。一時費用も介護期間も下がったため、総額は約38万円減りました。
公開から1年以上たっていますが、更新されていないページがまだ多く残っています。数字を見かけたら、調査年が2024年度かどうかを確認してください。
ところが、542万円を払う人はほとんどいない
ここからが、調べていていちばん驚いた部分です。
同じ調査で、月々の費用の分布が公表されています。最も多いのは「15万円以上」で19.3%。次に多いのが「1万〜2万5千円未満」で15.1%でした。
両端が高い。平均である9万円前後の層は、むしろ少数です。
統計では、こうした分布を「二こぶ」と呼びます。性質の違う2つの集団が1つのデータに混ざっているときに起きる形です。平均値は、その谷間を指してしまいます。
理由ははっきりしています。介護を行った場所で分けると、こうなるからです。
| 介護の場所 | 月額の平均 |
|---|---|
| 在宅 | 5.3万円 |
| 施設 | 13.8万円 |
在宅の山と、施設の山。この2つが混ざった結果が、9.0万円という平均です。 谷底の数字を、代表値として使っていることになります。
つまり、こう考えるほうが現実に近い
「542万円かかる」ではなく、「在宅を続けるのか、施設に移るのかで、金額が2倍以上変わる」。総額を1つの数字で覚えるより、この分岐を知っておくほうが役に立ちます。
在宅なら339万円、施設なら806万円
先ほどの月額を、介護期間55か月で計算し直します。一時費用47.2万円はどちらにも加えました。
| 介護の場所 | 計算 | 総額 |
|---|---|---|
| 在宅 | 47.2万+5.3万×55か月 | 約339万円 |
| 施設 | 47.2万+13.8万×55か月 | 約806万円 |
差は467万円。2.4倍です。
この2つの数字のほうが、平均542万円よりも準備の役に立ちます。どちらに近い形になりそうかは、親の状態と、支える家族の状況である程度は見当がつくためです。
在宅が安い、という単純な話ではありません
在宅の5.3万円には、家族が負担している時間が金額として入っていません。 仕事を減らしたり、離職したりすれば、収入の減少という形で費用は発生します。金額だけを比べると、この部分が見えなくなります。
「4年7か月」は、下限に近い数字
平均55.0か月という数字には、現在も介護を続けている人の「これまでの経過期間」が含まれています。 その人たちの介護は、まだ終わっていません。
つまり、実際の期間はこれより長くなる可能性があります。 調査でも、4年を超えて介護した人が約4割いると報告されています。
短く終わる人もいます。ただ、資金の準備という観点では、4年7か月は下限に近い数字と考えておくほうが安全です。
542万円に、入っていないもの
調査が聞いているのは「介護に要した費用」です。次のものは含まれていないか、回答者によってばらつきがあります。
- 医療費(入院、通院、薬代)
- 介護のための帰省交通費
- 親の生活費そのもの(食費、光熱費など)
- 家族の収入減少
特に医療費は、要介護度が上がるほど連動して増えます。542万円は「介護費用の総額」であって、「介護期間中に必要なお金の総額」ではありません。
逆に、この総額から差し引ける制度もあります。医療費と介護費の自己負担が高額になったとき、年間の上限を超えた分が戻る「高額医療・高額介護合算療養費制度」です。所得区分によりますが、年間で数万円から数十万円が戻る場合があります。 こちらも申請が必要です。
総額より先に、確認すべき4つ
総額を眺めても、次に何をすればいいかはわかりません。実際に金額を左右する順に並べます。
親の所得段階を確認する
住民税が非課税なら、施設の居住費と食費に上限が設定されます。これだけで月に数万円変わります。 申請しないと適用されないので、確認は早いほうがいいです。
負担割合を確認する
1割か2割か3割か。介護保険負担割合証に書かれています。3割なら、介護サービス費は1割の方の3倍です。
在宅で続ける場合の上限額を知る
区分支給限度基準額を超えた分は全額自己負担になります。要介護3なら27,048単位、1割負担で月約27,000円が上限です。
施設を考えるなら、タイプごとの相場を見る
特養、介護付き有料老人ホーム、サ高住で構造が違います。同じ「施設」でも金額の幅が大きいので、タイプ別に見ないと意味がありません。
まとめ|迷っている方へ
整理します。
- 最新の平均総額は542万円(2024年度調査)。580万円は古い数字
- ただし平均は谷底の数字。在宅約339万円、施設約806万円で見るほうが現実的
- 介護期間の平均は4年7か月。継続中の人を含むので、下限に近い
- 医療費や家族の収入減は、この総額に入っていない
金額を見て不安になるのは自然なことです。ただ、この542万円は、5年近くかけて分散して出ていくお金です。 一度に用意する必要はありません。
そして、所得段階や負担割合によって、実際の金額はここから大きく下がる場合があります。平均を眺めるより、親の条件を1つずつ確認するほうが、はるかに正確な数字にたどり着きます。
どこから手をつければいいかわからないときは、地域包括支援センターが最初の窓口になります。費用の相談も無料でできます。
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出典・参考
- 公益財団法人生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査[2人以上世帯]」(2025年1月発行)/同センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」(一時費用47.2万円、月額9.0万円、在宅5.3万円、施設13.8万円、介護期間55.0か月)
- 厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506」(2026年8月からの負担限度額)
- 区分支給限度基準額(2019年10月改定。以降据え置き)
この記事の情報は2026年8月時点のものです。総額は調査の平均値をもとにした概算であり、実際の費用は要介護度、居住地、所得段階、利用するサービスによって大きく異なります。

