この記事の要点
- 家族と話し合ったことが「ない」人は68.6%。話せていないのが普通です
- ただし「考えたことがある」人は51.9%。親も考えている可能性があります
- 判断能力があるうちにしかできない手続きがあります
- 意思より先に、手続きに直結する情報から聞いてください
- 一度で終わらせようとしないこと。繰り返す前提の話です
親はまだ元気で、日常生活も自分でできている。ただ、年々できることが減っているのは分かる。いつか介護が必要になったとき、何をどうしたいのか。
聞いておいたほうがいいと思いつつ、切り出せない。「縁起でもない」と言われそうで、口にできない。
私も同じだと思います。ただ、調べていくうちに、ためらう理由が思い込みかもしれないと感じるデータに出会いました。よくある疑問の形で書いていきます。
話せていない人が7割
厚生労働省が2022年度に行った意識調査があります。人生の最終段階の医療やケアについて、家族などと話し合っているかを聞いたものです。
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| 詳しく話し合っている | 1.5% |
| 一応話し合っている | 28.4% |
| 話し合ったことはない | 68.6% |
7割近くが、話せていません。切り出せないのは、あなただけではありません。
ところが、同じ調査にもう1つ数字があります。
人生の最終段階の医療やケアについて「考えたことがある」51.9%
半数以上が、自分では考えているのです。 考えてはいるが、話し合えていない。
つまり、親も考えているかもしれません
「親は考えたくないだろう」と思って切り出せずにいる。ところが親のほうも、考えてはいるが言い出せずにいる。 そういう状態は、十分にありえます。
この数字を見て、私の見方が変わりました。嫌がられると決めつける前に、一度聞いてみる価値はあります。
元気なうちにしかできない手続きがある
なぜ急ぐのか。理由は「気持ちの整理」だけではありません。判断能力が保たれているうちにしかできない手続きがあるからです。
| できなくなること | 判断能力が低下した後は |
|---|---|
| 実家の売却 | 法定後見の申し立てが必要 |
| 定期預金の解約 | 難しい場合が多い |
| 任意後見・家族信託の契約 | できない |
| 保険や証券の手続き | 難しい場合が多い |
特に任意後見と家族信託は、本人が契約するものです。 判断能力が低下してからでは間に合いません。詳しくは認知症で親の口座は凍結されるのかにまとめました。
「まだ元気だから」は、実は「今しかできない」という意味でもあります。
意思より先に手続きの情報から聞く
切り出し方を考える前に、聞く順番を決めてください。ここを間違えると、最初の一回で行き詰まります。
いきなり「どんな介護がいい?」「延命治療はどうする?」と聞くと、重くなります。親も答えに詰まります。
先に聞くべきは、手続きに直結する情報です。
優先度A|困ったときにすぐ必要になるもの
- かかりつけ医の名前と連絡先
- 飲んでいる薬(お薬手帳の場所)
- 持病、アレルギー、手術歴
- 健康保険証、介護保険被保険者証の保管場所
- 年金手帳、通帳、印鑑の場所
- 加入している保険(証券の場所)
これらは「意思」ではなく「情報」です。 聞いても重くなりません。
そして、親が入院したときに必ず聞かれます。 救急搬送されて、薬の名前が分からない。これが実際に困る場面です。
優先度B|落ち着いて聞きたいこと
- 介護が必要になったら、家と施設のどちらがいいか
- 費用はどこまで自分の資産から出す考えか
- 頼りたい人、頼りたくない人
- 親しい友人・親戚の連絡先
優先度C|時間をかけて
- 延命治療についての考え
- 最期をどこで迎えたいか
- 葬儀やお墓のこと
Cから始めないでください。 ここは何度も話す中で、少しずつ出てくる部分です。
切り出し方は「自分のため」にする
言い方で、受け取られ方が変わります。
| 避けたい言い方 | 通りやすい言い方 |
|---|---|
| 「もしものときのために聞いておきたい」 | 「私が困らないように教えておいてほしい」 |
| 「介護が必要になったらどうする?」 | 「もし入院したら、何を持っていけばいい?」 |
| 「終活しておいてよ」 | 「私も保険を見直したから、そっちはどうなってる?」 |
主語を自分にすると、角が立ちません。 「あなたが弱ったときの話」ではなく「私が困らないための話」にする。
そのまま使える言い方を挙げます。
「この前、友達のお母さんが急に入院して、保険証がどこにあるか分からなくて大変だったって。うちは大丈夫?」
「もし何かあったとき、私が支払いで困らないように、どこに何があるか教えておいてほしい」
「私も自分の保険を見直したんだけど、お父さんのはどうなってるの」
相続の話ではなく、支払いや手続きの話として切り出してください。 「財産を知りたいのか」と思われると、そこで止まります。
きっかけは外から借りる
何もない日に切り出すのは難しい。外側の出来事をきっかけにするほうが自然です。
- 知人や親戚に何かあったとき(入院、介護が始まった、亡くなった)
- 親が健康診断を受けたとき
- ニュースや番組で介護の話題が出たとき
- 自分が保険や資産の見直しをしたとき
- 帰省したとき(お盆、年末年始)
国も、こうした話し合いを「人生会議」という名前で呼んで、普及に取り組んでいます。11月30日が「人生会議の日」です。
ただし、認知度は高くありません。 同じ調査で、人生会議を「知らない」と答えた人が72.1%でした。
それでも、「国がこういうのを勧めてるらしいよ」という切り出し方はできます。 自分の意思ではなく外の話として持ち出せるので、使いやすい入口です。
一度で終わらせようとしない
ここが最も大事かもしれません。
1回の帰省で全部聞き出そうとすると、失敗します。 親は身構えますし、こちらも焦って質問攻めになります。
実際、人生会議も「繰り返し話し合うこと」と定義されています。一度決めたことも、状況が変われば変わります。
嫌がられたら、そこで止める
「まだ大丈夫」「そんな話はしたくない」と言われたら、いったん引いてください。
押し切ると、次に話を持ち出しにくくなります。「わかった。何かあったら言ってね」で終わらせて、次の機会を待つほうが結果的に早く進みます。
ただし、優先度Aの情報だけは別です。「保険証の場所だけ教えて」なら、意思の話ではないので通りやすいはずです。
聞いた内容は兄弟に共有する
一人で聞いて、一人で抱えないでください。
後から「勝手に決めた」と言われる原因になります。 特にお金の話は、聞いた内容をそのまま共有しておくことが大事です。
- いつ、何を聞いたか
- 親が何と言ったか
- まだ聞けていないこと
メッセージアプリのグループで十分です。記録が残る形にしておいてください。
費用の分担については、介護の費用は誰が払うのかに、話し合う順番をまとめました。
まとめ|完璧を目指さない
整理します。
話せていないのが普通
7割近くが話し合っていません。ただし半数は自分で考えています。
手続きの情報から聞く
かかりつけ医、薬、保険証の場所。意思の話は後回しで構いません。
主語を自分にする
「私が困らないように」。相続ではなく支払いの話として。
きっかけは外から借りる
知人の入院、健康診断、帰省。
一度で終わらせない
嫌がられたら引く。繰り返す前提の話です。
全部を聞き出す必要はありません。かかりつけ医の名前が分かるだけでも、いざというときの動き方が変わります。
そして、介護が実際に始まったときの動き方は、地域包括支援センターが最初の窓口になります。無料で相談できます。まだ介護が始まっていない段階でも、相談して構いません。
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出典・参考
- 厚生労働省「令和4年度 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」(一般国民 n=3,000/話し合ったことはない68.6%、一応話し合っている28.4%、詳しく話し合っている1.5%/希望について考えたことがある51.9%/人生会議を知らない72.1%)
- 厚生労働省「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」(11月30日を「人生会議の日」に設定)
この記事の情報は2026年8月時点のものです。当サイトの運営者に介護の実務経験はなく、記載内容は公的資料をもとに整理したものです。個別の手続きや契約については、専門家または市区町村の窓口にご相談ください。

