認知症で親の口座は凍結されるのか|2021年に変わった銀行の対応

この記事にはプロモーション(広告)を含みます。公的制度と無料でできる方法を先に紹介し、向いていない場合も併せて記載しています。

この記事の要点

  • 「認知症になったら即座に口座凍結」は正確ではありません。 2021年に銀行の対応の考え方が示されました
  • 医療費や介護費など、本人のための支出なら親族が引き出せる場合があります
  • ただし不動産は売れません。ここが最も困る点です
  • 凍結後に使えるのは法定後見。ただし子が後見人になれるとは限りません(親族の選任は約2割)
  • 後見人の報酬は本人が亡くなるまで続きます。月3万円なら10年で360万円

親の認知症が気になり始めると、お金の話が必ず出てきます。「口座が凍結される」「家が売れなくなる」。検索すると、そういう言葉が並びます。

不安になる話です。ただ、調べてみると実態は少し違いました。

この記事では、まず何が起きて何が起きないのかを整理します。そのうえで、対策の選択肢を並べます。結論を先に言うと、慌てて何かを契約する必要はありません。

目次

2021年に示された銀行の対応の考え方

ここが、いちばん伝えたい部分です。

2021年2月18日、全国銀行協会が「金融取引の代理等に関する考え方」を公表しました。

それまで銀行は、本人の判断能力が低下した場合、原則として法定後見制度の利用を求めていました。対応は銀行ごとにばらばらで、断られて途方に暮れる家族が少なくありませんでした。

この考え方では、親族が本人の預金の引き出しを求めた場合に、応じることがあるという整理が示されています。

条件があります。

  • 医療費、介護費、生活費など、本人の利益に適合することが明らかな場合
  • 戸籍などで家族関係が確認できること
  • 請求書などで使いみちが確認できること

つまり、まず銀行の窓口に相談してください

全国銀行協会は、「本人の意思確認ができない場合の預金の引き出し」について案内資料も出しています。 そこでも、まず取引銀行の窓口に相談するよう案内されています。

親の医療費や施設費が払えなくて困っている段階なら、最初にやるのはこれです。 何かを契約する前に、窓口で聞いてください。

ただし、これは「必ず引き出せる」という意味ではありません。最終的な判断は各銀行が行います。その都度、書類を揃えて相談する必要があります。

それでも困るのは不動産と大きな支出

生活費レベルの引き出しに道が開けたとしても、解決しない問題が残ります。

やりたいこと本人の判断能力が低下した後
生活費・医療費・介護費の引き出し銀行に相談すれば応じてもらえる場合がある
実家の売却できない(本人の意思確認が必要)
定期預金の解約難しい場合が多い
保険や証券の解約難しい場合が多い
アパートなどの賃貸契約・修繕できない

いちばん深刻なのは、実家が売れないことです。

親が施設に入り、実家が空き家になる。その売却代金を施設費に充てたい。ところが本人の意思確認ができないため、売買契約が結べません。 空き家のまま固定資産税と維持費だけがかかり続けます。

施設の入居一時金のようなまとまった支出も、生活費とは扱いが違うため、引き出しに応じてもらえない可能性があります。

凍結後に使えるのは法定後見だけ

判断能力が低下した後で不動産を売りたい場合、方法は法定後見制度しかありません。

家庭裁判所に申し立て、本人の代わりに財産を管理する人(成年後見人)を選んでもらう制度です。

ここで、多くの方が誤解している点があります。

子が後見人になれるとは限りません

「自分が後見人になって管理すればいい」と考える方が多いのですが、誰を後見人にするかを決めるのは家庭裁判所です。 申立人の希望どおりになるとは限りません。

制度が始まった2000年、後見人に親族が選ばれる割合は約9割でした。それが近年は約2割まで下がっています。

残りの約8割は、司法書士や弁護士などの専門職です。

背景には、不正の問題があります

最高裁判所の調査では、後見人による横領などの不正の被害額が、2011年からの15年間で319億円にのぼると報告されています。そのうち約92%が親族後見人によるものでした。

家庭裁判所が親族の選任に慎重になっているのは、この経緯があるためです。疑われているというより、制度としてそう設計されています。

報酬は本人が亡くなるまで続きます

専門職が後見人になると、報酬が発生します。金額は家庭裁判所が決めますが、東京家庭裁判所が目安を公表しています。

管理する財産の額基本報酬の目安(月額)
1,000万円以下2万円
1,000万円超〜5,000万円以下3〜4万円
5,000万円超5〜6万円

この報酬は、本人の財産から支払われます。そして原則として、本人が亡くなるまで続きます。

積み上げるとこうなります。

月額5年10年15年
2万円120万円240万円360万円
3万円180万円360万円540万円
5万円300万円600万円900万円

「不動産を売るためだけに申し立てたのに、その後もずっと報酬が発生する」という状況が起こりえます。目的を達成したから終わり、とはなりません。

誤解のないように書いておくと、法定後見は悪い制度ではありません。 身寄りのない方、家族が財産を守れない状況にある方にとっては、必要な仕組みです。財産管理だけでなく、施設の契約など身の回りのことも代理できます。

ただ、「使いたいときだけ使う」ことができない制度だという点は、知っておく必要があります。

判断能力があるうちにできる3つの対策

ここまでが「後から」の話です。判断能力が保たれている段階なら、選べる手が増えます。

制度できること費用の目安
任意後見後見人を自分で指名しておく。財産管理と身上保護の両方公正証書の作成費用。開始後は監督人の報酬が発生
家族信託財産の管理・処分を家族に託す。不動産の売却も可能初期費用。以降の定期的な報酬は原則なし
日常生活自立支援事業社会福祉協議会による日常的な金銭管理の支援1回あたり数百円〜1,500円程度(自治体による)

3つ目は、あまり知られていません。 社会福祉協議会が実施している公的なサービスで、通帳の預かりや日常的な支払いの代行を、低額で頼めます。判断能力が不十分でも、契約内容を理解できれば利用できます。

財産が多くない場合、これで足りることがあります。 窓口はお住まいの社会福祉協議会、または地域包括支援センターです。

家族信託が向く場合と向かない場合

家族信託は、親(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産の管理を託す契約です。信託した財産については、親の判断能力が低下した後も、家族の判断で管理・処分ができます。

ただし、すべての人に向いているわけではありません。 正直に整理します。

向いている場合

  • 実家などの不動産があり、将来売却する可能性がある
  • アパートなど、管理や修繕が必要な収益不動産がある
  • 財産を託せる家族がいて、その家族との関係が良好
  • 親の判断能力がまだ保たれている
  • 相続人の間で、あらかじめ合意が取れる見込みがある

向いていない場合

  • すでに親の判断能力が低下している(契約できません)
  • 財産が預貯金のみで、金額も多くない
  • 施設の契約など、身の回りのことを代理してほしい(信託ではできません)
  • 財産を託せる家族がいない
  • 相続人の間で意見が割れている

家族信託では身上保護ができません

信託でできるのは財産の管理と処分だけです。 施設の入居契約、医療の同意、介護サービスの契約といった行為は代理できません。

ここは後見制度との決定的な違いです。「信託をすれば全部カバーできる」わけではありません。 実務では、信託と任意後見を組み合わせることもあります。

費用の目安

専門家に依頼する場合、次のような内訳になります。

項目目安
コンサルティング報酬信託財産の1%前後。最低50万円以上とする事務所が多い
公正証書の作成数万円(財産額による)
信託登記の登録免許税土地は評価額の0.3%、建物は0.4%(不動産がある場合)
司法書士報酬(登記)11〜16.5万円程度

総額で100万円前後になるケースが多いとされています。 決して安くありません。

ただ、法定後見の報酬が月3万円で10年続けば360万円です。期間によっては、初期費用のほうが結果的に低くなることがあります。 どちらが得かは、財産の内容と、これから何をしたいかで変わります。

相談してみるという選択肢

ここまで読んで「うちは家族信託が向いているかもしれない」と思われた場合、専門家への相談が次の一歩になります。

信託契約の設計は、財産の内容、家族構成、将来やりたいことによって大きく変わります。ひな形をあてはめて済む話ではありません。

家族信託の「おやとこ」(無料相談)

司法書士などの専門家が、家族信託についての無料相談を行っています。全国に拠点があり、年間で数千件の問い合わせに対応しているとのことです。

相談できるのは家族信託についてです。 成年後見制度や相続一般の相談を希望する場合は、家庭裁判所や地域の法律相談窓口をご利用ください。

認知症による資産凍結から親を守る|家族信託のおやとこ

※申し込み後、担当者から電話で確認の連絡があります。連絡が取れる時間帯を想定して申し込んでください。
※現時点で家族信託について提携しているのは1社のみです。他社と比較したうえでご判断ください。
※家族信託が最適とは限りません。上の「向いていない場合」に当てはまる場合は、他の方法をご検討ください。

まとめ|順番を間違えないこと

整理します。

  1. いま困っているなら、まず銀行の窓口へ

    医療費や介護費の支払いに困っている段階なら、2021年の考え方に基づいて対応してもらえる可能性があります。 何かを契約する前に、まず相談してください。

  2. 金銭管理だけなら、社会福祉協議会

    日常生活自立支援事業は、1回数百円から使えます。財産が多くない場合、これで足りることがあります。

  3. 不動産があるなら、判断能力があるうちに考える

    実家の売却は、判断能力が低下した後では法定後見しか手がありません。ここが分かれ目です。

  4. 親と話す

    どの方法も、親本人の意思と契約が必要です。子どもだけで決められることではありません。

認知症の心配が出てきた段階での動き方は、認知症の初期サイン|受診までの5つの手順にまとめました。本人が受診を嫌がっていても、家族だけで相談できる公的な窓口があります。

お金の話は切り出しにくいものですが、「実家をどうするか」という形なら話しやすいことがあります。 相続の話ではなく、これからの生活の話として。

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出典・参考

  • 一般社団法人全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」(2021年2月18日)/「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引出しに関するご案内資料」(2020年3月)
  • 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」(成年後見人等に親族が選任された割合)
  • 東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(基本報酬 月額2万円、管理財産額1,000万円超5,000万円以下は月額3〜4万円、5,000万円超は月額5〜6万円)
  • 後見人による不正の被害額は、最高裁判所の調査をもとにした集計(地域後見推進プロジェクト)による
  • 厚生労働省「日常生活自立支援事業」/各都道府県社会福祉協議会
  • 家族信託の費用は、複数の司法書士・弁護士事務所が公表している料金体系をもとにした一般的な相場です

この記事の情報は2026年8月時点のものです。当サイトは法律事務所ではなく、記載内容は個別の法的判断を目的としたものではありません。銀行の対応は各金融機関の判断によります。後見人の報酬は家庭裁判所が個別に決定します。家族信託の費用は事務所や財産の内容によって大きく異なります。実際の手続きは、司法書士・弁護士等の専門家、または家庭裁判所にご相談ください。

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