成年後見制度のデメリット|調べて驚いた4つのこと

この記事の要点

  • 現行制度では、一度始めると原則として本人が亡くなるか判断能力が回復するまで続きます
  • 家族が後見人等に選ばれた割合は、2025年で約16.4%でした
  • 専門職が選ばれると、報酬が継続的にかかります
  • 2026年6月に、制度を見直す改正民法が成立しました。ただし施行はまだ先です
  • 急ぎでなければ、ほかの方法で足りないかを先に確認する価値があります

親の預金が引き出せない。実家を売りたい。施設の契約で「後見人を立ててください」と言われた。

成年後見制度は、判断能力が低下した人の財産と生活を守るための制度です。 必要な場面は確かにあります。

ただ、調べてみると「使い始めてから知った」という声が多い制度でもありました。使う前に知っておきたい点を4つ書きます。

この記事は、2026年9月時点で運用されている現行制度を前提にしています。改正の内容は、驚いた事④で整理します。

目次

驚いた事① 始めると原則としてやめられない

これが、いちばん知られていない点だと思います。

現行制度では、後見が始まると、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで、原則として続きます。

よくある申し立ての理由その用事が終わったあと
実家を売りたい売却後も後見は続く
定期預金を解約したい解約後も続く
遺産分割協議をしたい協議が終わっても続く

「この手続きのためだけに」と考えて申し立てても、用事が済んだから終わり、とはなりません。

申し立ての取り下げにも制限があります

申し立てたあとで「やはりやめたい」と思っても、審判の前であっても、家庭裁判所の許可がなければ取り下げられません。

「希望した人が後見人に選ばれそうにないから取り下げる」ということが、自由にはできない仕組みです。

驚いた事② 家族が選ばれるのは約16%

「後見人には自分がなるつもり」と考えている方は多いと思います。

最高裁判所の「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」によると、後見人等と本人との関係は次のとおりでした。

後見人等に選ばれた人割合
配偶者、親、子、兄弟姉妹、その他の親族約16.4%(前年約17.1%)
親族以外(弁護士、司法書士、社会福祉士など)約83.6%

後見人を選ぶのは家庭裁判所です。 申立書に候補者として家族の名前を書いても、その人が選ばれるとは限りません。

この数字の読み方

この割合は、親族が候補者として希望されたかどうかに関係なく、選任された全体に占める割合です。

身寄りのない方のために市区町村長が申し立てるケースなども含まれています。「家族が希望しても8割以上は選ばれない」という意味ではありません。

ただ、財産が多い場合や、家族の間で意見が分かれている場合などは、専門職が選ばれたり、監督人がついたりすることがあります。

驚いた事③ 専門職の報酬が続く

専門職が後見人に選ばれた場合、報酬は本人の財産から支払われます。

報酬額は家庭裁判所が決めます。東京家庭裁判所は、目安を公表しています。

管理する財産の額報酬の目安(月額)
基本2万円
1,000万円超〜5,000万円以下3万〜4万円
5,000万円超5万〜6万円

※あくまで目安です。実際の額は、事務の内容や地域などを踏まえて家庭裁判所が決めます。特別な事務があった場合は、別に報酬が加わることがあります。

たとえば月3万円が10年続くと、合計360万円になります。現行制度では、原則として本人が亡くなるまで続きます。

申し立て時の費用

項目目安
申立手数料(収入印紙)800円
登記手数料(収入印紙)2,600円
郵便切手裁判所ごとに異なる
医師による鑑定費用必要な場合のみ。多くは10万円以下
医師の診断書医療機関による

書類の作成を専門家に依頼する場合は、別に費用がかかります。

驚いた事④ 2026年6月に改正法が成立した

ここが、いまこの記事を書く意味だと思っています。

2026年6月17日、成年後見制度を見直す改正民法が成立しました。 6月24日に公布されています。

主な見直しの方向

現行制度改正後
類型後見・保佐・補助の3つ「補助」に一本化
終わり方原則として亡くなるまで必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば終了できる
範囲財産全般に及ぶ特定の行為に限った利用も可能に

たとえば「実家の売却のため」「遺産分割のため」といった目的が終われば、制度の利用を終えるという使い方が想定されています。

施行はまだ先です

改正法は成立しましたが、施行は公布から2年6ヶ月以内とされています。つまり、遅くとも2028年12月ごろまでに始まる見込みです。

2026年9月時点では、現行制度が適用されます。 いま申し立てる場合は、この記事の①〜③の特徴があることを前提に考える必要があります。

すでに制度を利用している人の扱いについても定めが設けられていますが、具体的な運用は今後示されます。 最新情報は法務省や家庭裁判所の案内を確認してください。

いま申し立てるかの判断

改正を待てるかどうかは、急ぎかどうかで分かれます。

状況考え方
生活費や施設費が払えない待てない。現行制度でも利用を検討する
本人が詐欺や不当な契約の被害にあっている待てない。早めに相談する
実家の売却が目的だが、当面の費用は足りている改正の内容と施行時期を確認してから判断する余地がある
相続に備えて「なんとなく」ほかの方法で足りないか、先に確認する

待つことで本人の生活や財産が守れなくなるなら、待つべきではありません。 判断に迷う場合は、地域包括支援センターや専門家に相談してください。

後見人ができないこと

後見人は、本人のために財産を管理します。そのため、次のようなことは原則としてできません。

  • 相続税対策のための贈与や生前対策
  • 家族の生活費を本人の財産から出すこと(本人に扶養義務がある場合などを除く)
  • 株式投資など、元本割れのおそれがある運用
  • 本人の利益にならない不動産の購入や処分

本人の居住用の不動産を売る場合は、家庭裁判所の許可が必要です。 実家の扱いは、親が施設に入ったら実家はどうするにまとめました。

また、後見人は家庭裁判所に定期的に財産の状況を報告します。家族が後見人になった場合、この事務も家族が担います。

ほかの方法で足りる場合がある

成年後見を検討する前に、目的ごとに確認してください。

目的ほかの選択肢
医療費・介護費の引き出し銀行に相談する。2021年の全国銀行協会の考え方で、親族による引き出しに応じることがある
日常的なお金の管理日常生活自立支援事業(社会福祉協議会。1回数百円〜1,500円程度)
将来に備えたい(判断能力があるうち)任意後見契約、家族信託
施設の入所身元保証人の扱いを施設に確認する

判断能力があるうちなら、選択肢は広がります。 任意後見は、本人が元気なうちに「誰に」「何を」任せるかを自分で決めておける制度です。

口座の扱いは認知症で親の口座は凍結されるのかに、施設入所時の保証人は施設入所に身元保証人がいないときにまとめています。

成年後見が必要な場面もあります

ここまでデメリットを中心に書きましたが、成年後見でなければ対応できない場面もあります。

  • 本人が悪質な契約を繰り返している
  • 身寄りがなく、財産を管理する人がいない
  • 家族による使い込みの心配がある
  • 判断能力が低下したあとで、不動産の売却や遺産分割が必要になった

本人を守るための制度であることは変わりません。 必要な場面で使うことをためらう必要はありません。

相談先

  • 地域包括支援センター(無料。最初の相談先として)
  • 市区町村の成年後見制度の相談窓口(中核機関、権利擁護センターなど名称は地域による)
  • 家庭裁判所(申し立ての手続き)
  • 弁護士、司法書士、社会福祉士

「親の判断能力が落ちてきています。成年後見を使うべきか、ほかの方法で足りるのか相談したいのですが?」

「使うかどうか」の段階から相談できます。

まとめ|使う前に目的を確認する

  • 現行制度では、始めると原則として亡くなるまで続く
  • 家族が後見人等に選ばれた割合は約16.4%(2025年)
  • 専門職が選ばれると報酬が継続的にかかる
  • 2026年6月に改正法が成立。施行は遅くとも2028年12月ごろまで
  • 急ぎでなければ、ほかの方法で足りないかを先に確認する

成年後見制度は、本人を守るための制度です。ただ、目的が「この手続きだけ」の場合、現行制度では負担が大きくなることがあります。

まず、何のために使いたいのかを書き出してください。そこから、成年後見が必要か、ほかの方法で足りるかが見えてきます。

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出典・参考

  • 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況―令和7年1月〜12月―」(親族が成年後見人等に選任されたもの約16.4%、親族以外約83.6%、申立件数43,159件)
  • 東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」
  • 民法(成年後見)/家事事件手続法 第121条(後見開始の申立ての取下げの制限)/民法 第859条の3(居住用不動産の処分の許可)
  • 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号/2026年6月17日成立、6月24日公布。施行は公布から2年6ヶ月以内)
  • 法務省「成年後見制度の見直し(法制審議会)について」
  • 一般社団法人全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年2月18日)

この記事の情報は2026年9月時点のものです。当サイトは法律事務所ではなく、記載内容は個別の法的判断を目的としたものではありません。改正法の施行時期や、施行後の具体的な運用、すでに制度を利用している人の取扱いは、今後の政省令や家庭裁判所の運用によって示されます。報酬額は家庭裁判所が個別に決定します。実際の手続きについては、家庭裁判所、市区町村の相談窓口、弁護士・司法書士などにご確認ください。

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