福祉用具のレンタルと購入|先に買うと保険が使えない

この記事の要点

  • 福祉用具はレンタルが原則。購入で保険が使えるのは9品目だけです
  • 2024年4月から4品目が選べるようになりました(スロープ、歩行器、単点杖、多点杖)
  • 福祉用具に公定価格はありません。 同じ商品でも事業所によって値段が違います
  • 要支援1・2と要介護1は、車いすや介護ベッドが原則対象外です
  • 購入は年10万円まで。いったん全額を払って、あとから戻ります

親が歩きにくくなってきた。ベッドから起き上がるのがつらそう。手すりが要るかもしれない。

こういうとき、先に通販で買ってしまう方がいます。 ところが、それでは介護保険が使えません。

福祉用具は制度の作りが独特で、レンタルが原則、購入は例外という構造になっています。しかも2024年4月に、その区分が一部変わりました。

手順を5つに分けて書きます。買う前に読んでください。

目次

福祉用具はレンタルが原則

理由は2つあります。

1つは、状態が変わるからです。 歩行器で歩けていた人が車いすになる。介護ベッドの高さを変える必要が出る。買ってしまうと、合わなくなったときに買い直しになります。

もう1つは、メンテナンスです。 レンタルなら6か月に一度の点検があり、故障や劣化があれば交換されます。購入すると、この仕組みがありません。

レンタルの対象は13種目

種目要支援1・2/要介護1
手すり(工事を伴わないもの)○
スロープ○
歩行器○
歩行補助つえ○
車いす/車いす付属品原則対象外
特殊寝台(介護ベッド)/付属品原則対象外
床ずれ防止用具原則対象外
体位変換器原則対象外
認知症老人徘徊感知機器原則対象外
移動用リフト(つり具を除く)原則対象外
自動排泄処理装置要介護4・5のみ

軽度の場合、介護ベッドと車いすは原則使えません

要支援1・2と要介護1の方は、介護ベッドや車いすが保険の対象外になります。使いたい場合は全額自己負担です。

ただし例外があります。医師の意見などにより、日常的に起き上がりや寝返りが困難といった状態が確認されれば、認められる場合があります。該当しそうなら、ケアマネジャーに相談してください。

要介護度によって使えるサービスがどう変わるかは、要介護度で使えるサービスにまとめています。

購入で保険が使えるのは9品目だけ

他人が使ったものを再利用しにくいもの、使ううちに形が変わるもの。これらは購入が対象になります。

購入対象の9品目
腰掛便座(ポータブルトイレなど)
入浴補助用具(シャワーチェア、浴槽用手すりなど)
簡易浴槽
移動用リフトのつり具の部分
自動排泄処理装置の交換可能部品
排泄予測支援機器
スロープ(固定用)※2024年4月追加
歩行器(歩行車を除く)※2024年4月追加
歩行補助つえ(松葉づえを除く)※2024年4月追加

下の3つが、次に説明する選択制で加わったものです。

2024年4月から4品目は選べる

2024年度の介護報酬改定で、制度が変わりました。

次の4つは、レンタルか購入かを利用者が選べます。

選択制の対象除かれるもの
固定用スロープ持ち運びできる可搬型は対象外
歩行器車輪・キャスター付きの歩行車は対象外
単点杖松葉づえは対象外
多点杖—

いずれも比較的安価で、状態が変わっても使い続けられるものが選ばれています。

どちらを選ぶか

レンタル購入
支払い毎月一度だけ
点検6か月に一度ありなし
交換状態が変われば可能買い直し
向く場合短期間で済みそう
状態が変わりそう
長く使う見込み
状態が安定している

目安は使用期間です。 杖を月300円でレンタルすると、3年で10,800円。購入して自己負担が数千円なら、購入のほうが安くなります。

ただし、購入するとメンテナンスがありません。 杖のゴムがすり減っても、自分で交換することになります。

手順① ケアマネジャーに相談する

自分で買わないでください。 ここが最も多い失敗です。

介護保険を使うには、ケアプランに位置づけられている必要があります。 通販で先に買ってしまうと、保険の対象になりません。

相談すると、次のように進みます。

  • ケアマネジャーが福祉用具貸与事業所につなぐ
  • 福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、状態と住まいを確認
  • 候補を提案し、多くの場合は試用ができる

この相談員は資格を持った専門職です。「どこに何を置くか」まで含めて提案してくれます。 通販で選ぶより確実です。

手順② レンタルか購入かを確認する

選択制の4品目にあたる場合、相談員またはケアマネジャーから説明があるはずです。 これは制度上の義務になっています。

説明がなければ、こう聞いてください。

「これはレンタルと購入を選べる品目ですか。うちの場合、どちらが合いますか」

判断材料は、どれくらいの期間使いそうかです。医師や専門職の意見も踏まえて提案されます。

手順③ 複数の事業所で価格を比べる

ここは、あまり知られていません。

福祉用具に公定価格はありません。 介護保険のサービスの多くは全国一律の単位数で決まっていますが、福祉用具だけは「実際にかかった費用」で給付されます。

つまり、同じ商品でも、事業所によって値段が違います。

上限はあります

青天井ではありません。月平均100件以上貸与されている商品には、上限価格が設定されています。 全国平均の貸与価格に1標準偏差を加えた額で、これを超えると保険給付の対象外になります。

ただし、上限の範囲内であれば事業所が自由に価格を決められます。比べる意味はあります。

相談員は、全国平均貸与価格と、その商品の価格を提示することが義務づけられています。 説明がなければ聞いてください。

「この商品の全国平均の価格はいくらですか」

長く使うものほど、月々の差が積み上がります。

手順④ 購入は年10万円まで

購入の場合、同一年度で10万円が上限です。1割負担なら、9万円が保険から給付されます。

ここで注意点が2つあります。

いったん全額を払います

償還払いといって、まず全額を事業者に支払い、あとから9割(負担割合により8割・7割)が戻ってきます。

10万円のものを買うなら、その場で10万円が必要です。手元の資金を考えておいてください。

なお、市区町村によっては受領委任払いを使える場合があります。自己負担分だけ払えば済む方式です。使えるか確認する価値があります。

10万円は住宅改修とは別枠です

住宅改修の20万円、月々のサービスの区分支給限度基準額。これらとは別の枠です。 福祉用具を購入しても、他のサービスが減ることはありません。

住宅改修については、住宅改修20万円の使い方に書きました。こちらは着工前の申請が必須です。

中古品は原則として対象になりません

購入の対象品目は、新品の販売を想定しています。 2024年に加わったスロープ・歩行器・杖も同じです。

理由は、購入後のメンテナンスが義務づけられていないためです。中古品を安く買っても、保険の対象にならない可能性があります。

手順⑤ レンタルなら定期点検を受ける

レンタルの場合、6か月に一度、相談員が訪問して点検します。 これはレンタルの大きな利点です。

このとき、遠慮せずに伝えてください。

  • 使いにくいところ
  • 本人の状態が変わったこと
  • 音が出る、動きが悪いなどの不具合

状態が変われば、別の用具に交換できます。 追加費用はかかりません。

「せっかく借りたのに」と我慢する必要はありません。合わない用具を使い続けるほうが、転倒などの危険につながります。

手すりは3つの制度にまたがる

最後に、混乱しやすい点を1つ。

手すりは、設置方法によって使う制度が変わります。

手すりの種類使う制度
壁に固定する(工事あり)住宅改修(20万円の枠)
床置き型・突っ張り型(工事なし)福祉用具貸与(レンタル)
浴槽用手すり特定福祉用具販売(購入・年10万円の枠)

分かれ目は「工事を伴うかどうか」です。 工事をすれば住宅改修、しなければ福祉用具になります。

浴槽のふちに挟んで使う手すりだけは、入浴補助用具として購入の対象です。

まとめ|買う前にケアマネジャーへ

整理します。

  1. 先に買わない

    ケアプランに位置づけられていないと、保険の対象になりません。

  2. レンタルか購入かを確認

    スロープ・歩行器・単点杖・多点杖は2024年4月から選べます。

  3. 価格を比べる

    公定価格はありません。全国平均価格を聞いてください。

  4. 購入は年10万円まで

    いったん全額払う形。受領委任払いが使えるか確認を。

  5. 定期点検で状態を伝える

    合わなければ交換できます。追加費用はかかりません。

福祉用具は、制度の中では比較的使いやすい部類です。 住宅改修のように事前申請が必須というわけでもなく、レンタルなら合わなければ変えられます。

ただ、先に買ってしまうと保険が使えないという一点だけは動かせません。「これがあれば楽になりそう」と思ったら、まずケアマネジャーに一報を入れてください。

関連記事

出典・参考

  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」(福祉用具貸与・特定福祉用具販売の選択制の導入/2024年4月1日施行)
  • 厚生労働省告示(福祉用具貸与に係る福祉用具の種目/特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目)
  • 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(平成12年1月31日 老企第34号/2024年改正)
  • 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料(貸与価格の上限設定:全国平均貸与価格+1標準偏差/販売は年間10万円を支給限度基準額)
  • 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」特定福祉用具販売

この記事の情報は2026年8月時点のものです。軽度者への例外的な給付の可否、受領委任払いの取扱いは市区町村によって異なります。実際の利用は、担当のケアマネジャーまたは福祉用具専門相談員にご相談ください。

目次