この記事の要点
- 誤嚥性肺炎は、2024年の人口動態統計(確定数)で日本人の死因の第6位。死亡数は63,667人でした
- むせることも、むせずに誤嚥すること(不顕性誤嚥)も、どちらも注意が必要です
- 食べ物や飲み物だけでなく、口の中の細菌を含む唾液などを誤嚥することも関係します
- 口腔ケアは予防に向けた大切な対策の一つです。本人に合った方法を、医師や歯科の専門職に相談してください
食事のたびに、親がむせる。お茶を飲むと咳き込む。「年だから仕方ない」と思っていた。
調べてみると、むせることも、むせずに誤嚥することも、どちらも注意が必要だと分かりました。むせがないからといって、誤嚥していないとは限りません。
誤嚥について、驚いた点を4つ書きます。
この記事は、誤嚥の診断や治療について判断するものではありません。気になる症状があれば、かかりつけ医や歯科などの専門職に相談してください。
驚いた事① 死因の第6位
誤嚥(ごえん)とは、食べ物や飲み物、唾液などが、本来の食道ではなく気管に入ってしまうことです。
そして誤嚥をきっかけに、口の中の細菌が肺に入って起こる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。
| 2024年 人口動態統計(確定数) | 数字 |
|---|---|
| 死因の順位 | 第6位 |
| 死亡数 | 63,667人 |
| 死亡総数に占める割合 | 4.0% |
そのすぐ上の第5位が「肺炎」(80,176人)です。
高齢者では、飲み込む機能や咳の反射が低下することなどにより、誤嚥性肺炎のリスクが高まることがあります。
高齢の親にとって、身近な病気だと言えます。
驚いた事② むせないから安全とは限らない
ここが、いちばん意外でした。
むせるのは、気管に入りかけたものを外に出そうとする体の反応です。むせることで、誤嚥を防いでいる面があります。
ところが、むせたり咳き込んだりせずに誤嚥が起きることがあります。これを不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)といいます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| むせる誤嚥 | 食事中にむせたり咳き込んだりする。周りが気づきやすい |
| 不顕性誤嚥 | むせや咳がない。眠っている間に唾液が少しずつ気管に入ることもある。気づきにくい |
むせのない誤嚥が、高齢者の誤嚥性肺炎の主な原因の一つとされています。
むせることも、むせないことも、どちらも注意が必要です
むせるのは大切なサインです。そして、むせがないからといって、誤嚥していないとは限りません。
以前と比べて食べ方や飲み込み方が変わった、食後に声が変わる、肺炎を繰り返すなどの変化があれば、医療機関に相談してください。
驚いた事③ 食事のとき以外にも誤嚥は起きる
誤嚥というと、食事中のことだと思いがちです。
誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物だけでなく、口の中の細菌を含む唾液などを誤嚥することも関係します。
- 眠っている間に、唾液が少しずつ気管に入る
- 胃の内容物が逆流して、気管に入る
- 口の中が汚れていると、細菌の量が多くなる
だから、食事中の注意に加えて、口の中を清潔に保つことも大切です。
驚いた事④ 予防の基本は口の中のケア
口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防に向けた大切な対策の一つで、成人肺炎の診療ガイドラインでも予防策として挙げられています。
ただし、口腔ケアだけで誤嚥性肺炎を防げるわけではありません。飲み込む機能や全身の状態、栄養状態なども関係するため、必要に応じて医療・歯科の専門職と連携してください。
家族ができる口腔ケア
- 毎食後と寝る前の歯みがき(できる範囲で)
- 入れ歯を外して洗う。入れ歯の下の歯ぐきや舌も清潔に
- 口の中が乾いていないか見る
- 歯科を定期的に受診する
口腔ケアは、本人の状態に合った方法で行うことが大切です。飲み込む力が落ちている方は、ケア中の水分や汚れを誤嚥することもあります。
むせやすい方、口を開けるのが難しい方、口腔ケアを嫌がる方は、無理に行わず、歯科医師・歯科衛生士などに安全な方法を相談してください。
歯科医師や歯科衛生士が家に来てくれる場合も
通院が難しい方は、訪問歯科診療を受けられることがあります。
また、要介護認定を受けている方は、介護保険の居宅療養管理指導として、歯科医師や歯科衛生士から口腔ケアの指導を受けられる場合があります。利用できるかは、ケアマネジャーや歯科医院に確認してください。
家族が気づけるサイン
次のような様子があれば、かかりつけ医や歯科に伝えてください。
- 食事中や食後にむせる、咳き込む
- 食後に声がガラガラする、かすれる
- 食事に時間がかかるようになった
- 口の中に食べ物が残っている
- 痰が増えた
- 微熱が続く、なんとなく元気がない
- 体重が減ってきた、食べる量が減った
これらの症状だけで誤嚥性肺炎と判断することはできません。 ほかの病気でも起こる症状です。ただし、普段と違う変化が続く場合は、早めに医療機関へ相談してください。
高齢者の肺炎は、典型的な症状が出にくいことがあります
高齢者では、高い熱や激しい咳が出ないまま肺炎が進むこともあるとされています。「なんとなく元気がない」「食欲が落ちた」という変化が手がかりになることがあります。
呼吸が苦しそう、意識がはっきりしないなど、様子がおかしいときは、すぐに医療機関に連絡してください。 緊急性が高い場合は119番です。
食事のときに気をつけたいこと
一般的に、次のような点が勧められています。本人の状態によって合う方法が違うので、気になる場合は専門職に相談してください。
- 座って食べる(ベッドなら、医療職などに相談して体を起こす角度を決める)
- ゆっくり、少しずつ口に入れる
- 食事中はテレビを消すなど、食べることに集中できる環境にする
- 話しかけるのは、口の中のものを飲み込んでから
- 食後の姿勢(横になるまでの時間などは、逆流の有無や飲み込む機能によって異なるので、むせやすい方や逆流がある方は医師や言語聴覚士に相談)
お餅のように、窒息につながりやすい食べ物もあります。年末年始の注意点は年末年始の介護に備えるにまとめています。
食事の形やとろみは自己判断しない
飲み込む力が落ちてきたとき、食事を細かく刻む、とろみをつけるといった工夫があります。
ただし、どんな形がよいかは、飲み込む力の状態によって違います。 細かく刻んだ食べ物が、かえって口の中でまとまりにくくなることもあるとされています。
医師、歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などに、本人に合った形を相談してください。
食事が進まない場合の考え方は、親が食事を作らなくなったらにもまとめています。管理栄養士が自宅を訪問する制度にも触れています。
肺炎球菌ワクチンについて
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による感染症の予防を目的としています。すべての肺炎や誤嚥性肺炎を防げるわけではありません。 65歳の方などは定期接種の対象です。
2026年度からは定期接種で使うワクチンが変わりました。詳しくは親の予防接種で確認したいことにまとめています。受けるかどうかは、かかりつけ医に相談してください。
まとめ|むせることにも気づきにくい誤嚥にも注意
- 誤嚥性肺炎は死因の第6位、死亡数63,667人(2024年確定数)
- むせることも、むせない誤嚥(不顕性誤嚥)も、どちらも注意が必要
- 食べ物や飲み物だけでなく、口の中の細菌を含む唾液などの誤嚥も関係する
- 口腔ケアは大切な対策の一つ。本人に合った方法を歯科の専門職に相談
- 食後の声の変化、痰の増加、元気がないなど普段と違う変化が続くときは医療職に相談
- 食事の形やとろみは自己判断せず専門職に相談
「むせるから心配」は、家族が気づきやすい大切なサインです。そして、むせない誤嚥もあることを知っておくと、ほかの変化にも目が向きます。
次に親と食事をするとき、食後の声と、口の中の様子に目を向けてみてください。それだけでも、相談のきっかけになります。
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出典・参考
- 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」(第8表 死因順位:誤嚥性肺炎 第6位 63,667人、肺炎 第5位 80,176人)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/
- 和歌山県「令和6年人口動態統計(確定数)の概況」第3表 死因順位(全国)(誤嚥性肺炎 63,667人、死亡率52.9、死亡総数に占める割合4.0%)
- 日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」(口腔ケアを誤嚥性肺炎の予防策として挙げている)
- 国立長寿医療研究センター「物を食べた時にむせる原因は?」(不顕性誤嚥の解説)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。当サイトは医療機関ではなく、記載内容は診断や治療の判断に用いることを目的としていません。誤嚥の有無や食事の形態、口腔ケアの方法は、本人の状態によって異なります。気になる症状がある場合は、かかりつけ医、歯科医師、言語聴覚士などの専門職にご相談ください。

