高額介護サービス費と補足給付で、いくら戻るか

この記事の要点

  • 介護費用には月ごとの自己負担の上限があり、超えた分は申請すれば戻ってくる
  • 高額介護サービス費は、初回だけ申請すれば以後は自動で振り込まれる自治体が多い
  • 補足給付は施設に入る人の居住費・食費を軽くする制度。こちらは毎年の申請が必要
  • どちらも申請しないと1円も戻らない。時効は2年
  • 2026年8月1日に補足給付が改定。第3段階①②の方は負担増、第2段階の基準額は緩和
  • 貯蓄額や配偶者の課税状況が判定に関わる点に注意

最終更新:2026年8月6日

目次

「上限を超えた分は戻ってくる」という仕組み

介護保険のサービスを使うと、費用の1〜3割を自己負担します。ただし、この自己負担には月ごとの上限が決められています。

上限を超えて支払った分は、申請すれば払い戻される。これが高額介護サービス費です。

医療費の「高額療養費」の介護版だと考えるとわかりやすいと思います。

高額介護サービス費:月ごとの上限額

上限額は、世帯の所得によって段階が分かれています。

区分 月の上限額(世帯)
課税所得690万円以上 140,100円
課税所得380万円〜690万円未満 93,000円
市町村民税課税〜課税所得380万円未満 44,400円
市町村民税非課税世帯 24,600円
前年の合計所得金額+公的年金等収入が80万円以下 24,600円(世帯)/15,000円(個人)
生活保護を受けている方など 15,000円

一般的な収入の年金世帯であれば、月44,400円が上限になるケースが多くなります。

対象にならないもの

ここは誤解しやすいところです。次の費用は上限の計算に含まれません。

  • 施設での居住費(家賃)と食費
  • おむつ代、日用品費
  • 理美容代などの実費
  • 福祉用具の購入費、住宅改修費
  • 区分支給限度基準額を超えて使った、全額自己負担分

つまり「毎月20万円払っているのに、上限44,400円との差額が全部戻る」わけではありません。戻るのは介護サービスの自己負担分についてだけです。

申請の方法

該当した場合、市区町村から通知が届きます。

同封されている申請書に振込口座を書いて返送すれば、それで完了。多くの自治体では、一度申請すれば以後は自動的に振り込まれます。

  • 申請先:お住まいの市区町村の介護保険担当窓口
  • 時効:サービスを利用した月の翌月1日から2年
  • 振込まで:申請からおおむね3か月程度

通知が来ないまま2年が過ぎると、その分は受け取れなくなります。心当たりがあれば、窓口で確認してみてください。

補足給付:施設の居住費と食費が軽くなる

施設に入る場合、費用の大きな部分を占めるのが居住費と食費です。これは介護保険の対象外なので、原則として全額自己負担になります。

ここを軽くするのが特定入居者介護サービス費、通称補足給付です。

対象になる施設

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • ショートステイ(短期入所生活介護・療養介護)

有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームは対象外です。 ここは施設選びの判断に直結する重要な違いです。

誰が対象になるか

3つの条件をすべて満たす必要があります。

① 世帯全員が市町村民税非課税であること

② 配偶者も非課税であること

配偶者については、世帯が分かれていても、別居していても判定に含まれます。世帯分離をしても、この要件は回避できません。

③ 預貯金などが基準額以下であること

これが見落とされやすい条件です。所得段階に応じて、単身でおよそ650万円〜1,000万円以下、夫婦であればそれぞれ1,650万円〜2,000万円以下といった基準が設けられています(段階により異なります)。

申請時には通帳の写しの提出を求められます。有価証券や投資信託も対象に含まれます。

軽減される額

所得段階によって、居住費・食費の自己負担限度額が決まります。

たとえば特別養護老人ホームのユニット型個室に入居した場合、居住費は本来1日およそ2,000円台ですが、非課税世帯で年金収入が少ない段階に該当すれば、1日800円台まで下がることがあります。

月に換算すると、3万円から5万円程度の差が生まれます。

【重要】2026年8月1日から金額が変わりました

この制度は、2026年8月1日に改定されています。 該当する方は、負担額が上がっている可能性があります。

変わったのは3点です。

① 食費の基準費用額が引き上げ

施設が徴収できる食費の目安が、1日1,445円 → 1,545円(100円増)になりました。

② 第3段階①・②の食費と居住費が引き上げ

  • 食費の負担限度額:1日30〜60円の増
  • 居住費の負担限度額:1日100円の増(一部の居室区分を除く)

ユニット型個室に入所している第3段階②の方の場合、食費60円+居住費100円で、1日160円、月におよそ4,800円の負担増になります。年間ではおよそ5万8千円です。

ショートステイの食費も、第3段階①が1日1,000円→1,030円、第3段階②が1,300円→1,360円に変わりました。

③ 第2段階の所得基準額が引き上げ

段階を分ける基準額が、80.9万円 → 82.65万円に変わりました。

これは負担が軽くなる方向の変更です。収入が同じでも、これまで第3段階①だった方が第2段階に移る可能性があります。

食費の負担限度額は第2段階が1日390円、第3段階①が1日680円なので、段階が変われば1日290円、30日でおよそ8,700円の差になります。

親の年金収入が80万円台前半の方は、更新後に届く認定証の段階が変わっていないか確認してください。

なお、段階の判定には預貯金の要件も含まれるため、最終的な判定は市区町村が行います。

居住費が上がらない居室もあります

居住費の引き上げは、すべての居室が対象ではありません。「その他型」「療養型」の介護老人保健施設や「Ⅱ型」の介護医療院の多床室(床面積が1人あたり8㎡以上のもの)などが対象で、それ以外の多床室は据え置かれています。

有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームは、そもそも補足給付の対象外です。 これらの施設の食費や部屋代は施設との契約で決まるため、今回の改定がそのまま反映されるわけではありません。

申請の方法

こちらは自動ではありません。自分で申請する必要があります。

  1. 市区町村の窓口で「介護保険負担限度額認定申請書」を受け取る
  2. 通帳の写しなど、資産がわかる書類を添えて提出
  3. 認定されると「介護保険負担限度額認定証」が発行される
  4. 認定証を施設に提示すると、請求額が軽減される

有効期間は原則8月1日から翌年7月31日まで。毎年更新の申請が必要です。

更新を忘れると、その月から通常料金に戻ってしまいます。毎年6〜7月に自治体から更新案内が届くので、見落とさないようにしてください。

2つの制度の違いを整理する

高額介護サービス費 補足給付
対象 介護サービスの自己負担分 施設の居住費・食費
場所 在宅・施設どちらも 特養・老健・介護医療院など
申請 通知が届いてから(初回のみ) 自分から申請(毎年更新)
判定 世帯の所得 所得+配偶者の課税状況+預貯金
もらい方 後から払い戻し 請求時点で軽減

さらに、合算できる制度もあります

医療費と介護費の両方がかかっている場合、高額医療・高額介護合算療養費という制度があります。

1年間(8月1日〜翌年7月31日)に支払った医療保険と介護保険の自己負担を合算し、年間の上限額を超えた分が払い戻される仕組みです。

親が入退院を繰り返している時期は、医療費と介護費が同時にかさみます。この制度を知らずに済ませてしまうケースが多いので、該当しそうな場合は市区町村の窓口で相談してみてください。

まとめ:やることは3つ

  1. 高額介護サービス費 — 通知が届いたら申請書を返送する。以後は自動
  2. 補足給付 — 非課税世帯なら、預貯金の基準を確認して申請する。毎年7月に更新
  3. 合算療養費 — 医療費もかさんでいる年は、窓口で相談する

いずれも申請しなければ戻ってきません。そして時効は2年です。

制度の名前は難しいですが、やることは「窓口で聞いて、書類を出す」だけです。判断に迷ったら、地域包括支援センターかケアマネジャーに「うちは補足給付の対象になりますか」と聞いてみてください。それだけで話が進みます。

出典

  • 厚生労働省「介護保険の給付」
  • 厚生労働省「特定入居者介護サービス費(補足給付)について」
  • 介護保険最新情報 Vol.1481/Vol.1506(令和8年8月からの特定入所者介護サービス費の見直し)
  • 令和8年厚生労働省告示第88号
  • 各市区町村の介護保険課の案内

※ 本記事は2026年8月8日に、同年8月1日施行の補足給付の改定内容を反映して更新しました。制度は2026年8月時点のものです。上限額や資産要件は改定されることがあります。基準額や運用の細部は自治体によって異なる場合があるため、実際の申請にあたっては、お住まいの市区町村にご確認ください。

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